職場のトラブルQ&A ~倒産不安、未払い賃金等の確保~
問
私の会社では、昨年から希望退職者の募集があり、最近では給与の遅配もあります。本日、会社の手形が不渡りとなったとの情報が入り、いよいよ会社が倒産するのではと不安に思っています。労働組合はありません。今後、私たち社員は、賃金や退職金などを確保するためどうすればよいでしょうか。
答
倒産とは、一般的に、会社が資金不足に陥り、経済活動をそのまま続行できなくなった状態のことをいいます。しかし、倒産は必ずしも会社消滅とは限らず、再建もありえます。会社再建の場合には、賃金や退職金などの労働条件が変更になることが考えられます。また、会社が消滅する場合には、賃金や退職金を確保する必要があります。
どちらにしても、会社と交渉する際に、個人で対応するのは困難です。労働組合を結成するなど労働者全員が一体となり、未払賃金、退職金および労働条件などについて会社と交渉することが重要です。また、法的な手続きを迅速かつ的確に行うためには、弁護士に相談するとよいでしょう。
なお、会社が倒産した場合には、残された財産が乏しい場合も多く、実際に賃金や退職金を支払ってもらえるとは限りません。そこで、会社が倒産したために、賃金や退職金が支払われないまま退職した労働者に対して、国が一定の範囲で立替払いをする制度があります。この制度の詳細については労働基準監督署にお尋ねください。
解説
会社が倒産しそうな状況のとき、大切なことは、労働者全員で団結して使用者と話し合いの場を持つことや、倒産した場合に備えて早めの対応をとることです。
会社との話し合いの場においては、次のことについて確認や要求をしましょう。
- 賃金・退職金などの労働債権の額の裏付けとなる資料(給料明細書、賃金台帳、賃金規程・退職金規程の書かれた就業規則、労働協約、労働契約書、労働時間管理記録など)の収集や確認をすること。
- 関係資料により把握した労働債権について、労働者ごとに労働債権の内容(賃金、退職金)と金額を記載した証明書(あるいは確認書で代表者印押印のもの)を会社に作成してもらうこと。
- 財務諸表(貸借対照表や財産目録など)を入手するなどして、退職金の積立の状況や労働・社会保険料の納付状況を把握すること。中小企業退職金共済に加入している場合はその相談コーナーに問い合せてみること。
また、法律上の倒産手続においては、賃金等の労働債権について一定の範囲について優先権が与えられています。しかし、会社の財産に抵当権等がついている場合はそれが優先するので、残された財産が乏しくなる場合も多く、実際に労働債権を回収できるとは限りません。
そこで、会社が倒産または事実上の倒産状態に陥り、労働者の賃金が未払いになったときには、賃金の支払の確保等に関する法律に基づいて、国が未払い賃金のうちの一定額を会社に代わって賃金等を立替払いしてくれる制度があります。
立替払いを受けられる要件は、次のとおりです。
- 労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行ってきた会社が倒産した場合。ここでいう「倒産」とは、法律上の倒産手続が取られている場合と、事実上倒産の状態にあることを労働基準監督署長が認定した場合の2つがあります。
- 倒産について、裁判所への申立て(法律上の倒産の場合)や労働基準監督署への申請(事実上の倒産の場合)がなされた日の6か月前の日から2年間の期間内に退職した労働者であること。
立替払いの対象となる未払い賃金は、退職日の6か月前の日から立替払いの請求の日の前日までの間に支払期日が到来している賃金および退職手当であって、未払いとなっているものをいいます。なお、ボーナスは立替払いの対象とはなりません。
立替払いの額は、未払い賃金総額の100分の80に相当する額ですが、下表のように一定の上限額が設定されています。
退職日における年齢 | 未払い賃金の総額 の限度額(A) |
立替払いの上限額 (A)×80/100 |
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
30歳~45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
参考
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