実用化技術等(平成8年)
【平成8年度】
1.湛水散播栽培におけるハナエチゼン、キヌヒカリの適正苗立範囲
2.重粘土転換畑における高温乾燥年の大豆の潅水効果
3.発酵鶏ふんを用いた夏播きブロッコリーの無化学肥料栽培
4.発酵鶏ふん、籾がら牛ふん堆肥など有機物を用いた施設メロンの減化学肥料栽培
5.ピーマンの白絹病抵抗性台木品種の選定
6.アジュガ(Ajuga reptans L.)の葉挿し増殖法
7.トルコギキョウの10月出し栽培
8.景観形成に利用可能なヒマワリの品種とは種期
9.ニホンナシにおける根の年間生長活動の特徴
10.ネット収穫をした完熟ウメによる高品質梅干し加工
11.早生水稲「ハナエチゼン」の一括施肥法
12.大区画乾田直播栽培におけるコシヒカリの一括施肥法
13.セジロウンカによる水稲の被害と生息育数調査法の捕捉効率
14.ラッキョウ甘酢漬下漬け発酵の安定化
15.セスバニアとトウモロコシの混作栽培
16.市販の消臭剤が鶏糞の臭気発生に及ぼす影響
平成8年度
湛水栽散播培におけるハナエチゼン、キヌヒカリの適正苗立範囲 |
|||||||
[要約]湛水散播栽培における苗立数の範囲が早生穂数型ハナエチゼンでは30~140本/㎡、中生中間型のキヌヒカリでは50~160本/㎡であれば、基肥N4kg/10a+4~5葉期追肥2kg/10a+穂肥2kg/10a×2の施肥体系下で安定収量が期待できる。 |
|||||||
福井県農業試験場・作物経営部・直播栽培チーム |
連絡先 |
0776-54-5100 |
|||||
部会名 |
作物生産 |
専門 |
栽培 |
対象 |
稲類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
近年、水稲栽培において生産費低減のため湛水直播栽培面積は増加している。本県では無人ヘリ等による表面散播栽培が主流となりつつあり、品種も従来のコシヒカリに変わり、短稈、良食味品種のハナエチゼン(早生)、キヌヒカリ(中生)が用いられるようになった。しかし、栽培上の目標苗立ち範囲は従来のコシヒカリ栽培で適正とされた70~100本/㎡としているのが現状で、ハナエチゼン、キヌヒカリでは明らかではない。そこで、両品種において、苗立数と生育収量性の関係を検討し、湛水表面散播において安定収量を得る苗立ち範囲を明らかにした。
[成果の内容・特徴]
(1) 平年に比べ1994年は生育期間全般にわたって高温多照に推移し、1995年は7月中旬まで著しい低温寡照に推移したが8月に入り回復した。このため、両品種共1995年は出穂、成熟期が2週間以上遅れ、ハナエチゼンでは幼穂形成期以後十分な日射量が得られたが、キヌヒカリでは出穂期が8月下旬に遅れたため登熟期間中の乾物増加量は少なかった。
(2) 両品種とも、苗立数が10~20本/㎡の場合は、苗立数30本/㎡以上の場合に比べ茎数や乾物重の増加がおいつかない(第1図)。
(3) ハナエチゼンでは最高分げつ数が1035本/㎡で、倒状が2.8、キヌヒカリでは最高分げつ数が989本/㎡で倒状2.2程度となる(第1表)。
(4) 基肥N4kg/10a、4~5葉期追肥N2kg/10a、穂肥N2kg/10a×2回の施肥体系下ではハナエチゼンで30本/㎡以上、キヌヒカリでは50本/㎡以上の苗立数で、適正な総籾数3万粒/㎡前後、乾物重1300kg/㎡以上が確保でき、また、外観品質も安定する(第1表、第1図)。
(5) 2か年の結果、平年の気象条件下であればハナエチゼンで一筆内の苗立数が30~140本/㎡、キヌヒカリで50~160本/㎡の間で目安とする最高茎数はいずれも600~800本/㎡、穂数ではハナエチゼンが450本/㎡、キヌヒカリは400本/㎡前後と推定され、この範囲ではムラのない安定した生育・収量が期待できる。
[成果の活用面・留意点]
1.苗立数がハナエチゼンでは30本/㎡未満、キヌヒカリでは50本/㎡未満の個所では、追う播きが必要となる。
2.苗立数が200本/㎡を超した場合は、倒状の恐れがあるので肥培管理に注意する。
3.ハナエチゼンはキヌヒカリに比べて苗立数による成熟期のズレがやや大きいので刈取適期に留意する。
[具体的データ]
第1表 出穂期、成熟期、収量、収量構成要素、倒状および品質
品 種 名 |
年 次 |
苗立 ち数 (本/㎡) |
出穂期
(月日) |
成熟期
(月日) |
稈長
(cm) |
倒状 (0-4) |
収量
(kg/10a) |
穂数
(本/㎡) |
1穂 籾数
|
総 籾数 (万粒/㎡) |
登熟 歩合 (%) |
千粒重
(g) |
完全粒 歩合 (%) |
ハ ナ エ チ ゼ ン |
‘94 |
35 |
8.01 |
9.04 |
85 |
1.0 |
632 |
419 |
79.1 |
3.3 |
84 |
22.7 |
86 |
90 |
7.30 |
9.03 |
82 |
0 |
625 |
477 |
66.1 |
3.2 |
86 |
23.0 |
84 |
||
170 |
7.28 |
8.31 |
78 |
0 |
612 |
557 |
53.4 |
3.0 |
90 |
22.9 |
82 |
||
285 |
7.27 |
8.30 |
78 |
2.8 |
601 |
646 |
46.9 |
3.0 |
87 |
22.9 |
85 |
||
‘95 |
10 |
8.15 |
9.29 |
77 |
0.3 |
464 |
269 |
92.9 |
2.5 |
81 |
23.0 |
83 |
|
30 |
8.14 |
9.28 |
82 |
0.3 |
655 |
390 |
91.8 |
3.6 |
80 |
22.9 |
82 |
||
60 |
8.14 |
9.27 |
82 |
1.8 |
712 |
414 |
89.2 |
3.7 |
84 |
23.0 |
83 |
||
80 |
8.13 |
9.25 |
84 |
1.1 |
701 |
420 |
86.6 |
3.6 |
83 |
23.2 |
81 |
||
140 |
8.12 |
9.24 |
84 |
2.5 |
727 |
516 |
70.2 |
3.6 |
87 |
23.2 |
83 |
||
キ ヌ ヒ カ リ |
‘94 |
30 |
8.05 |
9.14 |
80 |
0 |
588 |
306 |
91.4 |
2.8 |
93 |
22.8 |
89 |
100 |
8.04 |
9.13 |
81 |
0.3 |
636 |
428 |
68.9 |
2.9 |
94 |
22.9 |
87 |
||
160 |
8.03 |
9.13 |
77 |
0.7 |
603 |
404 |
68.6 |
2.8 |
95 |
23.0 |
84 |
||
280 |
8.02 |
9.12 |
75 |
2.2 |
583 |
527 |
50.2 |
2.6 |
95 |
23.3 |
78 |
||
‘95 |
10 |
8.19 |
10.06 |
78 |
0 |
388 |
222 |
100.3 |
2.2 |
79 |
22.1 |
82 |
|
20 |
8.19 |
10.06 |
80 |
0.2 |
510 |
313 |
87.2 |
2.7 |
82 |
22.6 |
82 |
||
50 |
8.18 |
10.06 |
86 |
0.5 |
560 |
323 |
96.5 |
3.1 |
81 |
22.0 |
84 |
||
80 |
8.17 |
10.05 |
85 |
0.6 |
615 |
382 |
81.3 |
3.1 |
86 |
23.0 |
83 |
・ 完全粒歩合は品質判定機(RS-100静岡精機)で調査した。
[その他]
研究課題名 :安定した地帯における良食味低コスト栽培技術の確立
予算区分 :国補(地域基幹農業技術体系実用化研究)
研究期間 :平成6~7年度(平成6~10年)
研究担当者 :酒井 究、佐藤 勉
発表論文等 :なし
重粘土転換畑における高温乾燥年の大豆の潅水効果 |
|||||||
[要約]高温乾燥年では、重粘土転換畑で高畦栽培された大豆においても登熟期間の潅水によりLAIが高く維持され、莢数増加により収量が向上するとともに、虫害粒未熟粒等の減少により品質が高まる。 |
|||||||
福井県農業試験場・作物経営部・作物経営チーム |
契機 |
普 |
|||||
部会名 |
作物生産 |
専門 |
栽培 |
対象 |
豆類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
重粘土転換畑に栽培される大豆は、開花期までは湿潤な土壌条件で、それ以降は乾燥した土壌条件で生育する。このため、排水不良な重粘土壤では根圏域が浅く、排水徹底のために高畦とした場合には土壌の乾燥による亀裂発生により断根し、水分ストレスが生じやすい。これが本県の近年の作柄低下と夏期高温年次の上位等級比率の低下につながっていると考えられる。したがって、地下水位の比較的高い重粘土転換畑においても、夏期の高温無降雨条件では土壌水分を維持する必要があるが、詳細なデータは少ない。ここでは、平均気温が平年より2℃前後高く、降水量が平年比6~7%しかなかった1994、95年の夏期の高畦栽培大豆の潅水効果を、物質生産および収量品質から明らかにした。
[成果の内容・特徴]
(1) 1994年は7月上旬より、1995年は7月下旬より高温・無降雨が続き、94年は7月8日から9月1日の56日間の平均気温28.5℃、降水量20mm、95年は7月23日から8月27日の36日間の平均気温28.6℃降水量は9mmしかなかった。エンレイとタチナガハを用い、この期間に94年は6回(7.20、7.29、8.6、8.12、8.28、8.31)、95年は4回(7.31、8.8、8.15、8.23)潅水した試験区と無潅水区を比較した。
(2) 潅水処理によって最頂葉展開期以降の生育が促進され、1994年でその傾向が顕著であった。潅水処理区では子実肥大始期(9月上旬)のSLA(葉面積/葉重)が高く、LAI(葉面積指数)も明らかに大きくなる。また、莢重の増加も大きい(図1)。成熟期の地上部乾物重も潅水処理により高まり、粒茎比も改善される(表1)。
(3) 潅水処理によって子実重は4~58%高まった。特に1994年のタチナガハで潅水効果が大きかった。収量増加は基本的に莢数の増加と百粒重の向上によってもたらされていたが、乾燥程度が大きかった1994年では稔実莢率、一莢粒数にも影響が及んだ(表1)。
(4) 潅水処理により虫害粒や未熟粒、腐敗粒等の発生が明らかに減少するとともに、品種や年次によってはしわ粒や裂皮粒の発生率も低下し、整粒率が高まる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
(1) 重粘土転換畑における大豆の生産安定と品質向上に寄与できる。
(2) 潅水の際には、潅水させずに土壌表面が湿潤状態になったら落水する。
[具体的データ]
第1図 小実肥大期(9月上旬)における部位別乾物重とLAI
表1 収量および収量構成要素の比較
年次 |
品種 |
潅水 |
総莢数 (莢/㎡) |
稔実莢率 (%) |
一莢粒数 (粒/莢) |
総粒数 (粒/㎡) |
百粒重 (g) |
子実重 (g/㎡) |
無潅水 比(%) |
粒茎 比 |
1994 |
エンレイ |
有 |
813 |
94.2 |
1.82 |
1393 |
31.6 |
439 |
112 |
2.2 |
|
無 |
812 |
90.2 |
1.75 |
1281 |
30.5 |
392 |
100 |
2.2 |
|
タチナガハ |
有 |
694 |
73.8 |
1.70 |
871 |
39.0 |
340 |
158 |
1.4 |
|
|
無 |
529 |
68.8 |
1.65 |
601 |
35.5 |
215 |
100 |
1.0 |
|
1995 |
エンレイ |
有 |
853 |
92.7 |
1.89 |
1490 |
30.5 |
454 |
109 |
3.2 |
|
無 |
791 |
94.6 |
1.88 |
1405 |
29.7 |
416 |
100 |
2.8 |
|
タチナガハ |
有 |
780 |
82.4 |
1.96 |
1258 |
35.5 |
447 |
104 |
2.3 |
|
|
無 |
740 |
82.4 |
2.02 |
1230 |
34.9 |
429 |
100 |
2.2 |
表2 品質の比較
年次 |
品種 |
潅水 |
整粒 (%) |
しわ粒 (%) |
裂皮粒 (%) |
虫害粒 (%) |
未熟粒 (%) |
その他 (%) |
1994 |
エンレイ |
有 |
68.3 |
7.0 |
8.1 |
11.6 |
2.4 |
2.6 |
|
無 |
62.1 |
5.8 |
8.3 |
15.0 |
5.0 |
3.8 |
|
タチナガハ |
有 |
53.5 |
3.4 |
18.8 |
14.0 |
2.5 |
7.8 |
|
|
無 |
49.4 |
4.7 |
10.4 |
20.5 |
5.0 |
10.0 |
|
1995 |
エンレイ |
有 |
87.4 |
6.4 |
4.3 |
0.6 |
0.3 |
1.0 |
|
無 |
77.1 |
10.8 |
5.9 |
1.6 |
0.4 |
4.2 |
|
タチナガハ |
有 |
85.4 |
6.8 |
3.8 |
1.7 |
0 |
2.3 |
|
|
無 |
80.4 |
7.0 |
5.9 |
3.0 |
0.3 |
3.4 |
[その他]
研究課題名 :リモートセンシング技術等による作物環境情報の効果的把握と情報理手法の高度化
予算区分 :国補(地域重要新技術)
研究期間 :平成7年度(平成5~7年)
研究担当者 :井上健一、尾嶋 勉
発表論文等 :重粘土転換畑における大豆の物質生産に及ぼす気象要因の解折、
北陸作物学会報30号、1995。
発酵鶏ふんを用いた夏播きブロッコリーの無化学肥料栽培 |
|||||||
[要約]発酵鶏ふんだけを基肥として施用するブロッコリーの夏播き栽培は、慣行の化学肥料だけの栽培と同等か、それ以上の収量・品質が得られる。この栽培法は窒素成分の全量を有機物で代替でき、無化学肥料栽培が可能である。 |
|||||||
福井県農業試験場 園芸・バイテク部 野菜研究チーム 生産環境部 土壌環境研究チーム |
連絡先 |
0776-54-5100 |
|||||
部会名 |
野菜・花き |
専門 |
栽培 |
対象 |
葉茎菜類 |
分類 |
普及 |
[背景・ねらい]
野菜栽培は化学肥料の多量投入に依存している部分が多く、環境に与える負荷が大きいことから、化学肥料の使用量を削減した技術の開発が望まれている。さらに、地域内で入手できる有機物を化学肥料代替として、有効に活用する技術が必要と考えられる。そこで、夏播きブロッコリー栽培の作型において、発酵鶏ふんを利用した無化学肥料栽培の施肥法を明らかにした。
[成果の内容・特徴]
(1) 夏播きブロッコリー栽培において、基肥として発酵鶏ふんを窒素成分量で3.5kg/a施用すると、慣行栽培の化学肥料単用施用よりも窒素吸収量が3ヶ月平均で20%以上増加し、花蕾重、上物収量は約10%増加するなど、化学肥量の窒素施用量の全量を代替することができる(表)。
(2) 発酵鶏ふんを30℃4週間培養処理した場合、栽培期間中に無機化される窒素の約80%が有効化され、暖効化され、暖効性窒素肥料に類似したパターンを示すことから、発酵鶏ふんの使用方法は暖効性窒素肥料と同様に扱うことができる(図1)。
(3) 発酵鶏ふんは、化学肥料の代替として追肥にも利用することができ、化学肥料を追肥した場合と同程度の窒素吸収量、上物収量が得られる(図2)。
(4) 発酵鶏ふんを施用した跡地土壌は、全炭素、全窒素等が化学肥料施用より増加し、土壌の肥沃度が増加した(図3)。
[成果の活用面・留意点]
(1)発酵鶏ふんの窒素無機化パターンから、夏播きの作物の早~晩生品種へ適用することが可能である。
(2)発酵鶏ふんだけを用いる本施肥法で栽培されたブロッコリーは、国が示した有機農産物ガイドラインの無化学肥料栽培農産物として表示できる。
[具体的データ]
表 ブロッコリーのN吸収量と収量・品質
有機物の種類 |
試験年次 |
N施肥量 (kg/a) |
乾物重 (g/株) |
N吸収量 (g/株) |
花蕾重 (g) |
花蕾径 (mm) |
上物収量 (kg/a) |
発酵鶏ふん |
1993年 |
7.7 |
95 |
3.37 |
195 |
108 |
55 |
1994年 |
3.5 |
44 |
1.00 |
91 |
81 |
37 |
|
1995年 |
3.5 |
103 |
3.58 |
282 |
106 |
104 |
|
平均 |
- |
81 |
2.74 |
189 |
98 |
65 |
|
化学肥料(慣行) |
1993年 |
3.5 |
67 |
1.99 |
153 |
72 |
34 |
1994年 |
3.5 |
48 |
1.36 |
102 |
84 |
41 |
|
1995年 |
3.5 |
106 |
3.46 |
271 |
95 |
100 |
|
平均 |
- |
74 |
2.27 |
175 |
84 |
58 |
注)発酵鶏ふんの窒素成分:1993年;乾物率84%.N2.60%。1994年;乾物率80%.N2.49%。1995年;乾物率71%、N2.26%。
発酵鶏ふん施用量:初年度のみ発酵鶏ふんの年分解率を0.7と仮定し、推定無機化Nを3.5kg/aとした。
作付体系等:夏播きブロッコリ1年1作、品種は「ハイツ」、花蕾は、花蕾頂部から15cmで調整。
播種期-基肥施用時期-定殖期-調査・収穫日:1993年:7月28日-7月30日-8月13日-10月20日
1994年:7月21日-8月8日-8月12日-10月13日
1995年:7月26日-8月4日-8月18日-10月26日
図1 発酵鶏ふんの窒素無機化パターン (1993年) (30℃恒温、畑インキュベート) |
図2 発酵鶏ふん追肥効果(1995年) 施肥量:基肥として化学肥料を3.5kg/a施用し、9月22日に化学肥料及び発酵鶏ふんを窒素成分量で0.5kg/a施用した。 使用した発酵鶏ふんの成分及び耕種概要等は表1と同様。 |
図3 発酵鶏ふん施用跡地土壌の化学性
(発酵鶏ふんの成分、耕種概要等は表1と同様)
[その他]
研究課題名 :北陸地域における生態系を活用した野菜の持続的安定生産技術の確立
予算区分 :国補(地域重要)
研究期間 :平成7年度(平成5~7年)
研究担当者 :三谷和弘、伊森博志、勝田英郎、板東義仁、奥田俊夫、松山松夫
発表論文等 :なし
発酵鶏ふん、籾がら牛ふん堆肥など有機物を用いた施設メロンの減化学肥料栽培 |
|||||||
[要約]施設メロン栽培において、発酵鶏ふん、又は籾がら牛ふん堆肥と化学肥料を組合せた基肥を施用することにより、化学肥料だけを用いた慣行栽培と同等の収量・品質が得られる。この施肥法は、窒素成分の全量或いは50%を有機物で代替できる。 |
|||||||
福井県農業試験場 園芸・バイテク部 野菜研究チーム 生産環境部 土壌環境研究チーム |
連絡先 |
0776-54-5100 |
|||||
部会名 |
野菜・花き |
専門 |
栽培 |
対象 |
果菜類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
野菜栽培は化学肥料の多量投入に依存し、環境に与える負荷が大きいことから、化学肥料の使用量を削減した持続的安定生産技術の開発が望まれている。そこで、水田地帯に導入が増加している施設を対象に全農式隔離ベットを用い、地域内で得られる発酵鶏ふんや籾がら牛ふん堆肥を連用して検討した結果、施設メロンで化学肥料を削減した栽培ができることを明らかにした。
[成果の内容・特徴]
(1) 発酵鶏ふん単用、又は籾がら牛ふん堆肥と化学肥料(窒素量1:1)を、毎作一定量を基肥施用することにより、慣行栽培の化学肥料とほぼ同等の収量・品質が得られる。発酵鶏ふん単用では無化学肥料栽培が、籾がら牛ふん堆肥と化学肥料の併用では50%の減化学肥料栽培ができる。
(2) 籾がら牛ふん堆肥単用では、土壌中の窒素の取り込みによる窒素飢餓から、化学肥料より20~30%減収する(表、図1)。
(3) 有機物の施用は、有機物の分解率を既存のデータから想定し、残存窒素が次作に有効化する量を考慮して減量施用した。その結果、減量施用した場合、慣行栽培の化学肥料より20~30%減収し品質も低下した。したがって、想定した分解率は、本栽培法で適合しないことから、有機物投入量を増やすことが必要であった(表1、図3)。
(4) メロンの6作を平均した養分吸収量は、一部の成分を除き、いずれの有機物施用でも化学肥料より少なくなる(図2)。
(5) 跡地土壌の全窒素含量は、有機物の連用区で高くなり、地力窒素の蓄積が認められた(図3)。また、置換性塩基(Ca、Mg、K)やpH、及びトルオーグP2O5含量も増加し、土壌の肥沃度が増加した。
[成果の活用面・留意点]
(1) 本施肥法で栽培されたメロンは、国が示した有機農産物ガイドラインの、無化学肥料栽培農産物、又は減化学肥料栽培農産物として表示できる。
(2) 籾がら牛ふん堆肥は、堆積期間6ヶ月程度の未熟なものを使用すると窒素飢餓が発生するので、化学肥料を併用する。
[具体的データ]
表 有機物の種類および施用方法とメロンの収量、品質
処理 番号 |
有機物の種類 |
施用 方法 |
果重(kg) |
糖度(Brix) |
||||||||||
1993年 |
1994年 |
1995年 |
3ヵ年 平均 |
標準 対比 |
1994年 |
1995年 |
||||||||
1作 |
2作 |
3作 |
4作 |
5作 |
6作 |
3作 |
4作 |
5作 |
6作 |
|||||
1 |
発酵鶏ふん |
一定量 |
1.71 |
1.13 |
1.46 |
1.33 |
1.49 |
1.19 |
1.83 |
94 |
10.6 |
13.9 |
11.4 |
10.9 |
2 |
減量 |
- |
1.14 |
1.24 |
1.24 |
1.44 |
0.98 |
1.22 |
83 |
11.9 |
13.8 |
10.7 |
9.2 |
|
3 |
牛ふん堆肥 |
一定量 |
1.53 |
0.84 |
1.42 |
1.30 |
1.26 |
1.05 |
1.24 |
84 |
11.0 |
13.2 |
11.3 |
10.5 |
4 |
減量 |
- |
0.76 |
1.42 |
1.22 |
1.09 |
0.98 |
1.09 |
74 |
11.3 |
12.0 |
11.5 |
8.4 |
|
5 |
牛ふん |
一定量 |
1.78 |
1.16 |
1.57 |
1.34 |
1.20 |
1.40 |
1.41 |
96 |
10.6 |
13.2 |
10.4 |
11.0 |
6 |
+化学肥料 |
減量 |
- |
1.05 |
1.29 |
1.31 |
1.38 |
1.04 |
1.21 |
82 |
11.2 |
10.5 |
12.6 |
10.6 |
7 |
化学肥料 |
一定量 |
1.75 |
1.13 |
1.76 |
1.42 |
1.21 |
1.54 |
1.47 |
100 |
11.0 |
14.2 |
10.9 |
12.9 |
注1)有機物施用量: 牛ふん堆肥=籾がら牛ふん堆肥。化学肥料の窒素施用量(1.5kg/a)と同量を施用することを前提とした。
(1) -定量:籾がら牛ふん堆肥の含有窒素成分の年分解率を0.3、発酵鶏ふんの含有窒素成分の年分解率を
0.7と仮定して施用量を算出し、毎作、窒素施用量で1.5kg/aの有機物を施用した。
(2) 減量:籾がら牛ふん堆肥の含有窒素成分の年分解率(r)を0.3、発酵鶏ふんの含有窒素成分の年分解
率を0.7と仮定して、下式により有機物の投入窒素(N)の有効化する窒素量(Y)を決定し、有機物連用による残存窒素が次作で有効化する量を減量して施用した。 Y=N{1-(1-r)n} n:連用年数
2)品種は「ハープレディー」。糖度は、可食部分をホモジナイズし、上澄み液を測定。
3)定殖期:1作:4月15日、2作:8月9日、3作:3月29日、4作:8月2日、5作:3月30日、6作:8月3日
4)調査日(収穫日):1作:7月20日、2作:10月28日、3作:7月1日、4作:10月7日、5作:7月7日、6作:10月23日
図1 籾がら牛ふん堆肥の培養温度別窒素無機化パターン(1993年)
(堆積6ヶ月後の籾がら牛ふん堆肥を恒温、畑インキュベート)
図2 メロンの養分吸収量(6作平均) 図3 跡地土壌の全窒素含量の年次変化
(処理番号、処理内容等は表1と同じ) (処理番号、処理内容等は表1と同じ)
[その他]
研究課題名 :北陸地域における生態系を活用した野菜の持続的安定生産技術の確立
予算区分 :国補(地域重要)
研究期間 :平成7年度(平成5~7年)
研究担当者 :三谷和弘、伊森博志、板東義仁、奥田俊夫、松山松夫
発表論文等 :もみがら牛ふん堆肥によるネットメロンの減化学肥料栽培法、農耕と園芸、1995年3月
[平成8年度 普及に移す技術]
ピーマンの白絹病抵抗性台木品種の選定 |
|||||||
[要約]夏秋ピーマンの白絹病を防ぐための抵抗性台木品種として「スケットS」を選定した。また、「スケットS」は現在台木として用いられている「ベルホマレ」と比べて収量性が高い。 |
|||||||
福井県園芸試験場 野菜研究チーム |
契機 |
普 |
|||||
部会名 |
野菜・花き、生産環境 |
専門 |
作物病害 |
対象 |
果菜類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
福井県内の夏秋ピーマンは、疫病抵抗性を持つ「ベルホマレ」に接ぎ木して栽培されているが、収穫の始まる7月下旬頃になると茎数が青枯症状を示し、次第に枯死する病害が多発して問題となっている。そこで、接木栽培による病害回避を図るため、台木品種の選定を行った。
[成果の内容・特徴]
(1) 園芸試験場内圃場で枯死した株からRhizoctonia solani (苗立枯病菌)、Corticium rolfsii(白絹病菌)が分離された。
(2) PDA培地で培養したR.solani 菌叢をピーマン苗に接種すると病斑は形成されるが病斑の進展はみられなかった(図1)。また、R.solaniを土壌に接種しても発病がみられなかった(データ略)。
(3) PDA培地で培養したC.rolfsii菌叢をピーマン苗に接種すると病斑は進展し(図2)、土壌に接種すると枯死する場合もあった(表)。このことから、青枯症状を呈する病害はピーマン白絹病と同定した。
(4) 6品種のピーマン苗にC.rolfsii菌叢を接種すると、病斑の進展に品種間差が認められ、「スケットC」、「スケットS」、「グリーン300」では病斑が進展しなかった(図2)。C.rolfsiiを土壌に接種すると、「スケットS」、「ベルホマレ」で発病がみられなかった(表)。
(5) 収量はスケットSで最も高い(図3)。
(6) いずれの接種法においても抵抗性を示し、かつ多収であったスケットSを白絹病に対する抵抗性台木として選定した。
[成果の活用面・留意点]
(1) 施肥・灌排水管理等、健全な作物体の育成に努める。
(2) 収量比較では、穂木にグリーン300を用いた。
[具体的データ]
表 C.rolfsiiを接種したときの発病株数の品種間差(土壌接種:9月1日)
菌量2) |
5g |
20g |
||||
品種 |
9月8日 |
9月11日 |
9月14日 |
9月8日 |
9月11日 |
9月14日 |
スケットS |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
スケットC |
0 |
0 |
0 |
2 |
2 |
2 |
スケットK |
1 |
1 |
1 |
2 |
2 |
(2)3) |
ベルホマレ |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
ベルマサリ |
0 |
0 |
0 |
1 |
1 |
(1) |
グリーン300 |
0 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
1) 表中の数値は供試3株中の発病した株数。
2) 菌量:15cmポリポットに接種した土壌ふすま培地の量。
3) (1)、(2)は枯死したことを示す。
図3 台木品種の違いが収量に及ぼす影響
1) 10株調査の平均。
[その他]
研究課題名 :環境調和型特産野菜の栽培技術確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成4~7年)
研究担当者 :佐藤信仁、川久保幸雄(現 農業試験場)
発表論文等 :夏秋ピーマンの耐病性台木の選定、園学北陸支部要旨29,1995
[平成8年度 普及に移す技術]
アジュガ(Ajuga reptansL.)の葉挿し増殖法 |
|||||||
[要約]アジュガは葉挿しによる大量増殖が可能であり、発根適温は20~25℃、発根に必要な照度は2,500lx以上である。1枚の葉を切断した上半葉、下半葉からも発根する。葉挿しに用いる葉は0~5℃で4週間貯蔵できる。葉挿し後3ヶ月で成苗になる。 |
|||||||
福井県農業試験場・園芸バイテク部・花きチーム |
|
研 |
|||||
部会名 |
野菜・花き |
専門 |
栽培 |
対象 |
緑化植物 |
分類 |
普及 |
[背景・ねらい]
農村地域の景観の向上と畦畔の雑草管理の省力化を目的として、草丈が低く地表面を密に覆いながら生長する地被植物が畦畔に導入されはじめている。そのための地被植物としてアジュガが多く用いられている。アジュガは種子繁殖が極めて困難であるため、その増殖は一般に伸長したランナーの先端に形成される子株を採取して行われるが、増殖率が低い。そこで、栄養繁殖法のひとつである葉挿しによる大量増殖方法を明らかにした。
[成果の内容・特徴]
(1) 発根のための適温は20~25℃で、葉挿ししてから3週間後には、移植するに十分な根の量が得られる。15℃以下では、発根率が低く根の量も少なくなり、30℃でも根の量が少なくなる(図1)。
(2) 発根に必要な照度は2,500lx以上で、500lxの照度では枯死するものが現れ、発根率は低下し、根の量は減少する(図2)。
(3) 1枚の葉を上下に切断した上半期からも発根する。根の量は挿し穂重が重くなるほど増加する(表1)。
(4) 挿し穂用の葉は、採取後室内で半日風乾し、ビニール袋に入れ、0~5℃で貯蔵しておくと、4週間以内ならば、出庫後の葉挿しで全て発根し、移植に十分な発根量が得られる。しかし、5週間貯蔵後では、発根率が低下し、根の量も少なくなる。10℃で4週間貯蔵すると、葉挿し後40%が褐変する(表2)。
[成果の活用面・留意点]
(1) 15℃以上の温度と、2500lx以上の照度を確保できる施設を用いれば苗の周年生産も可能である。
(2) 戸外でビニールポットやセルトレイに直接葉挿しを行う場合、山砂:ピートモス=1:1の土1にシグモナイド型被覆複合肥料(14-12-14)180日タイプを8g施用したものを培土とし、5~7月に葉挿しすると3か月後には直径10cm程度の株に生長する。
(3) 葉を挿す深さは、全葉、上半葉を用いる場合は2cm、下半葉を用いる場合は1cmが適当である。
(4) 葉挿しに用いる葉は、栄養条件の良い充実した葉を用いる。
[具体的データ]
表1 葉挿し部位が発根に及ぼす影響 |
|
表2 挿し穂の貯蔵条件が発根に及ぼす影響 |
|||||||||
葉挿し日 |
部位 |
挿し穂の 初期乾重 (mg) |
葉挿し3週間後の |
|
貯蔵条件 |
貯蔵後の 生存率 (%) |
葉挿し3週間後の |
||||
発根率 (%) |
根乾重 (mg) |
|
期間 (週間) |
温度 (℃) |
発根率 (%) |
褐変率 (%) |
根乾重 (mg) |
||||
6月 16日 |
全葉 |
91 |
89 |
7 |
|
4 |
0 |
100 |
100 |
0 |
14 |
上半葉 |
46 |
71 |
4 |
|
5 |
100 |
100 |
0 |
14 |
||
下半葉 |
39 |
63 |
2 |
|
10 |
92 |
100 |
40 |
9 |
||
8月2日 |
全葉 |
121 |
89 |
17 |
|
5 |
0 |
100 |
73 |
7 |
9 |
上半葉 |
66 |
71 |
5 |
|
5 |
92 |
80 |
27 |
8 |
||
下半葉 |
58 |
100 |
5 |
|
10 |
0 |
---- |
---- |
---- |
||
注) 1日12時間白色蛍光灯の光を照射、 葉の上面の照度2500lx、温度25℃ |
注1)----:測定せず。 注2)褐変率:発根したが、葉が褐変した率。 注3)1日12時間白色蛍光灯の光を照射、 葉の上面の照度3000lx、温度25℃。 |
[その他]
研究課題名 :福井型花き産地育成技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成5~10年)
研究担当者 :近藤哲也、勝田英郎
発表論文等 :1.葉挿しアジュガ(Ajuga reptans L.)の発根に及ぼす温度と照度そして葉挿し部位の影響、平成7年度園芸学会北陸支部研究発表要旨、1995年。
2.葉挿しアジュガ(Ajuga reptans L.)の葉挿しにおける挿し穂の貯蔵方法と野外での生育、平成7年度園芸学会北陸支部研究発表要旨、1995年
[平成8年度 普及に移す技術]
トルコキキョウの10月出し栽培 |
|||||||
[要約]トルコキキョウはロゼット化が少なく、切り花長などの出荷規格を満たす品種を用いることによって、5月中旬は種、7月中旬定植で10月の採花が可能である。 |
|||||||
福井県園芸試験場 花き研究チーム |
契機 |
研普 |
|||||
部会名 |
野菜・花き |
専門 |
栽培 |
対象 |
花き類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
トルコギキョウは7月に収穫する栽培が慣行作型となっているが、それに加え、現在までに6月出しおよび8月出しの作型が開発されている。そこで作期幅を更に拡大するため、定植を夏期に行っても、高温による苗のロゼット化が起こらず、出荷規格を満たす品種を選定することで、10月出し作型の確立をする。
[成果の内容・特徴]
(1) 10月に出荷するには、5月中旬には種し、7月中旬に定植する。
(2) ロゼット化がほとんど起こらず、出荷規格を満たす以下の品種を用いる。
出荷したい時期 |
適する品種 |
|
10月 |
上旬 |
F1あすかの朝、F1あすかの粧、F1あすかの桜 F1ハイセンスパープル、F1サンホワイト、マイテレディ |
中旬 |
F1サンピンク、F1ベガバイドリーム、F1つくしの霧 |
|
下旬 |
マイテピンク、ホーリーホワイト3号 |
[成果の活用面・留意点]
(1) 梅雨明けから晩夏まで寒冷紗を被覆するが、とくに西日を防ぐよう注意する。
(2) 寒冷紗は、光線を通し、熱線は遮る遮熱寒冷紗が望ましい。
(3) 寒冷紗は、内側に張ると空気の層ができ、熱がこもりやすいので、なるべくハウスを包むよう外側に張る。
(4) 発蕾後も地温を下げるため灌水量は徐々に減らしていく。
(5) 灌水と寒冷紗の被覆の期間が長いので、軟弱になりやすい茎を風通しをよくすることで硬く締める。
(6) 夏場はハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、タバコガといった害虫の発生が多いので、これらに対し徹底した防除を行う。
(7) 試験を行った平成7年は、育苗期間(5月中旬~7月中旬)の気温が平年と比べ低く、ロゼット化を少なくした一因であると考えられるので、育苗中も温度が高くならないよう十分注意する。
[具体的データ]
表1 夏期定植によるトルコギキョウ各品種のロゼット発生率
ロゼット率 |
0~5% |
5~10% |
10~30% |
30~50% |
50%以上 |
品種名 |
F1あすかの朝 天竜ホワイト F1サンホワイト マイテピンク ホーリーホワイト3号 F1ロイヤルライトパープル F1ハイセンスパープル F1エクセルダークマリン F1つくしの霧 F1サンピンク マイテレディー F1クイーンオブピンクピコティー F1あすかの桜 F1ベガバイドリーム F1あすかの粧 |
F1クイーンオブローズ マイテスカイ F1さとの藤 F1サンコーラル ニュースモールレディ F1サンニューパープル F1あすかの紫 F1さとの粧 F1サンパープル F1つくしの波 |
ホーリーバイオレット バイクロ F1スーパープリマドンナ F1エクセルライトピンク F1つくしの雪 |
F1あすかの波 F1サンセレナーデ F1ベガパープル F1サンマリーン F1サンニューレッド F1プラチナバイオレット |
F1ベガセレナーデ サイゴン |
は種日 1995年5月18日 定植日 1995年7月19日 パイプハウス栽培
表2 10月出し作型適品種の開花調査z
品種名 |
収穫日 (月/日) |
ロゼッ ト率(%) |
切り花 長(cm) |
切り花 重(g) |
花蕾数y (個) |
品種特性x |
|||
早晩性 |
花の特徴 |
||||||||
F1あすかの朝 |
9/26 |
0.0 |
68Bw |
33Cw |
8AW |
中生 |
大輪 |
淡紫 |
|
F1あすかの粧 |
10/1 |
4.7 |
69B |
30C |
6A |
中生 |
大輪 |
淡桃 |
覆輪 |
F1あすかの桜 |
10/3 |
3.4 |
64B |
35C |
10A |
中生 |
大輪 |
淡桃 |
|
F1ハイセンスパープル |
10/3 |
1.1 |
75A |
29C |
7A |
中晩生 |
中輪 |
紫 |
|
マイテレディー |
10/3 |
2.5 |
72A |
34C |
6A |
晩生 |
小輪 |
淡赤 |
覆輪 |
F1サンホワイト |
10/10 |
0.0 |
86A |
58A |
7A |
中晩生 |
中輪 |
クリーム |
|
F1サンピンク |
10/16 |
2.2 |
64B |
37B |
10A |
中晩生 |
中輪 |
淡桃 |
|
F1ベガバイドリーム |
10/17 |
4.2 |
78A |
59A |
8A |
晩生 |
中輪 |
青紫カスリ |
覆輪 |
F1つくしの霧 |
10/19 |
2.2 |
88A |
35C |
6A |
晩生 |
大輪 |
クリーム |
|
マイテピンク |
10/26 |
1.1 |
68B |
39B |
6A |
晩生 |
小輪 |
淡桃 |
|
ホーリーホワイト3号 |
10/31 |
1.1 |
62B |
30C |
5B |
晩生 |
小輪 |
クリーム |
|
は種日 1995年5月18日、定植日 1995年7月19日、パイプハウス栽培
zロゼット率が5%未満で出荷規格を満たすものを適品種とする。
y切り花時に開花が期待できる花叢数。
Xカタログ表記データより作成
w数値右横の英大文字は出荷規格の等級を表す。A=特級、B=1級、C=2級
[その他]
研究課題名 :トルコギキョウの新作型の開発
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成6~7年)
研究担当者 :野上雅弘、永井輝行
発表論文等 :なし
[平成8年度 普及に移す技術]
景観形成に利用可能なヒマワリの品種とは種期 |
|||||||
[要約]大規模な景観形成には、黒竜、太陽、サンリッチレモンが適しており、これらの品種の組み合わせにより、夏~秋にかけて連続して景観美化することができる。 また、7月中旬から10月下旬であれば、目的の時期に利用することも可能である。 |
|||||||
福井県園芸試験場 花き研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
野菜・花き |
専門 |
栽培 |
対象 |
花き類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
近年、本県では休耕田等の環境美化と、雑草防止を目的に、景観形成植物を導入する動きが活発化し、農村のイメージアップにも効果を上げている。そこで、比較的栽培が要易なヒマワリの景観形成に適した品種選定と、有望品種のは種時期を検討した。
[成果の内容・特徴]
(1) 大輪の‘太陽’、‘黒竜’、‘サンリッチレモン’が大規模な景観形成に適する品種として有望である。また、中輪の‘ジャンボリー’と‘月光’も利用可能である(第1表)。
(2) 花壇などの小規模は景観形成には、草丈の低い‘サンコーラス’、‘サンスポット’、‘ビックスマイル’が有望である(第1表)。
(3) ‘太陽’、‘黒竜’、‘サンリッチレモン’を組み合わせれば、4月中旬から8月中旬まで1ヶ月に1度は種することによって、7月中旬から10月下旬まで連続して開花させることができる。また、この期間内であれば目的の時期に開花させることも可能である(第1図)。
(4) 盛夏における1花の開花期間は、ほぼ1週間程度であり、開花が遅くなるにつれて開花期間は長くなり、秋期開花では2週間程度である。開花始めが1週間程度ばらつくため、1回のは種で景観形成に利用できる開花期間は、7、8月開花では2週間程度、10月開花では3週間程度である(第1図)。
(5) 8月までには種すれば、草丈100cm以上、花径10cm以上を確保することができる(第2、3図)。
[成果の活用面・留意点]
(1)‘太陽’と‘サンリッチレモン’は9月は種でも12月に開花が見られるが、低温の影響で草丈低く、花径が小さく、花も完全に開ききらない縮んだような花形となるため、露地での景観形成には利用できない。
(2)‘黒竜’は、9月は種では開花がみられず、他品種と比べ低温の影響を受けやすい。
(3)発芽率を上げるため、播種時および播種後の水管理および根切り虫対策が必要である。
(4)切り花として用いるためには、ハウスでの栽培により下葉枯れを減らすなどの高品質化を図り、裁植密度を高めるなどして茎径を細くする必要がある。
[具体的データ]
第1表 ヒマワリ有望品種の開花時の生育と花の特性(1993年)
品種名 |
開 花 日 |
草 丈 |
茎 径 |
花の大きさ |
|
花色 |
その他 の特性 |
||
花径 |
管状花 の直径 |
|
舌状 花 |
管状 花 |
|||||
|
月/日 |
cm |
mm |
cm |
cm |
|
|
|
|
黒竜 |
8/8 |
201 |
25 |
23.3 |
16.2 |
|
黄色 |
黒色 |
|
ジャンボリー |
7/22 |
134 |
21 |
16.0 |
14.0 |
|
明るい黄色 |
褐色 |
|
サンリッチレモン |
8/3 |
132 |
20 |
20.3 |
14.4 |
|
明るい黄色 |
黒色 |
|
太陽 |
8/12 |
154 |
20 |
19.7 |
13.6 |
|
明るい黄色 |
黒色 |
|
月光 |
8/10 |
121 |
19 |
16.3 |
13.8 |
|
明るい黄色 |
緑~褐色 |
|
サンコーラス |
7/31 |
95 |
21 |
26.8 |
18.2 |
|
黄色 |
褐色 |
分技する |
サンスポット |
8/6 |
62 |
19 |
18.5 |
13.2 |
|
明るい黄色 |
褐色 |
|
ビックスマイル |
7/21 |
40 |
13 |
13.0 |
7.0 |
|
赤っぽい黄色 |
黒色 |
分技する |
は種日5月20日、条間50cm×株間40cm、直播、施肥(成分量kg/a)N:P2O5:K20=0.8:0.8:0.8
[その他]
研究課題名 :特産花きの附加価値向上技術開発
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(5年~7年)
研究担当者 :池田郁美・滝修三・永井輝行
発表論文等 :なし
[平成8年度 普及に移す技術]
ニホンナシにおける根の年間生長活動の特徴 |
|||||||
[要約]ニホンナシの根は、5~6月を境に春及び夏秋期に頂点に逹する伸長周期を示し、その伸長は生育に対するストレスの影響を受け易かった。伸長量は主に伸長する根の本数によって変動し、また根の太さが異なると伸長の活発な時期が異なった。 |
|||||||
福井県農業試験場・園芸・バイテク部・果樹研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
果樹 |
専門 |
生態 |
対象 |
果樹類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
福井県におけるナシの基肥施用は、11月下旬から12月上旬に行われているが、近年、その量を減らして、10月に施肥する例もみられる。また品種が幸水、豊水に転換されるに伴い、果実発育期の施肥を増やす動きもあり、施肥基準の再検討が迫られている。
施肥の量、時期などの決定に重要な要素となる根の活動については調査例が少ないため、日本海側における年間の根の生長過程を明らかにしようとした。
[成果の内容・特徴]
根箱に植えた1年生ニホンヤマナシ実生を台木に1982年、幸水を接ぎ木し、着果させずに根の伸長量を測定した。
(1) 根は1~2月にも若干伸長し、3月に入ると活発化して、4~5月に春期では最高に達した。5~6月にいったん弱まる時期があり、この後再び活発化して、10月まで連続して伸長した。10月からは急激に低下したが、12月に入ってからも、暖慢な伸長活動が続いた。
このように年間の伸長活動は、5~6月を境に、その前後で頂点に達する伸長周期を示し、春期の伸長に比べて。夏秋期の伸長量が大きかった(図1)。
(2) 平年に比べて、生育期の降水量が著しく多く、日照時間が極めて少なかった1993年及び降水量と日照時間が1993年とは対照的に変動した1994年は、根の伸長が極めて少なく、生育に対するストレスの大きい場合には根の伸長が抑えられることが明らかであった(図1)。
(3) 1本当たり根の伸長量は、年間を通して大きな違いがなかったが、伸長根の数は著しく変動し、伸長量は主として伸長根数によって決定された(図2)。
(4) 根の太さ別伸長割合では、1992年および1993年は1mm未満の根が、7月頃まで活発に伸長したのに対して、1mm以上の根は8月以後に高まった。1994年は、1mm未満が8月以降に高まり、同年の乾燥気候が影響していることが示唆された(図4)。
[成果の活用面・留意点]
(1) 根の生長活動は、秋期の活動で、期間も長いことが明らかになった。このことは秋期の施肥効果も高いことを示唆するものであり、施肥時期の決定に活用される。
(2) 根の活性化方策を検討する上の基礎資料となる。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名 :造成園におけるニホンナシ生産力増強技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成元~6年)
研究担当者 :杉本明夫
発表論文等 :ニホンナシの根の年間生長活動、園芸学会北陸支部平成7年度研究発表・
シンポジュウム講演要旨、1995
普及に移す技術
ネット収穫をした完熟ウメによる高品質梅干し加工 |
|||||||
[要約]成熟して落果する果実(完熟ウメ)をネット上で収穫することにより、収穫の省力化が図られるとともに、高品質の梅干し生産が可能になる。 |
|||||||
福井県農業試験場・園芸・バイテク部・果樹研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
果樹 |
専門 |
栽培 |
対象 |
果樹類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
ウメの全作業時間に占める収穫・選別時間の割合が60%以上と高くなっている中で、近年、収穫の人手不足、高い労賃、従事者の高齢化等の問題が深刻になっている。
一方、ウメは価格の年次変動の大きい代表的な果樹であり、今後、ウメ経営の安定を図るためには、これまでの青ウメ中心の出荷から一次加工品(塩漬け)の比率を高めていく必要がある。
そこで、関係機関と協力しながら、ウメの収穫の省力を図りながら、高品質の梅干しを生産する目的で、樹冠下に防風ネットを敷き、成熟して落果した果実(完熟ウメ)を一次加工し、その品質を調査した。
[成果の内容・特徴]
1.平成7年の累積落果率をみると、60%に達した日は前年より約1週間遅れの7月8日であった(第1図)。
2.落果の際の果実間や果実と技との衝突傷の割合は、収穫初期ではかなり高かったが、本格的に落果する6月末以降はほとんどみられなかった。また急傾斜地では果皮にネットのすり傷が7~10%みられたが、これらを塩漬けした場合、無傷果と外観上差はみられなかった(第1表)。
3.ネット上で果実を長期間放置すると、生果の果肉崩壊を著しく助長した(第2表)。
4.ネット収穫果の1樹当たりの収量を手もぎした場合と比較すると、ネット収穫は手もぎの1.3~1.7倍になるものと試算された(第3表)。
5.ネット収穫果の梅干し歩留まりは収穫時期によって異なり、累積落果率で5~70%の時期に漬け込んだ果実は50~53%と比較的高かった。しかし、落果初期のものは未熟果が混入し、また収穫末期のものは皮やぶれ等により不良品率が高まった(第2図)。
6.漬け込み時の塩添加量を多くするにしたがい、梅干しの歩留まりは低下し、果肉の不良品率が高まって、クエン酸含量は逆に低下した。また重石が重くなるにしたがい、不良品率が高まる傾向であり、果肉の塩分濃度が高まった(第3図、第4図)。
7.以上のように、ネット収穫果から、歩留まりの高い高品質の一次加工品を生産するためには、約70%落果した時期(平成7年は7月10日前後)に残果を一斉に収穫していまうことが重要であり、また漬け込み時の塩添加量は果実重の18~20%、重石は青梅漬け込みよりも軽目の方が適当である。
[生果の活用面・留意点]
1.‘紅サシ’の植栽されている傾斜圏での省力収穫に極めて有効である。
なお、剣先が混植されている圏では剣先を収穫した後にネットを敷く。
2.ネット上に落果した果実は1日以内に回収し、漬け込む。
[具体的データ]
第1表 落果果実の傷果割合(%)
調査日 |
衝突傷 |
すり傷 |
6月19日 |
5.9 |
7.8 |
27日 |
3.3 |
7.6 |
7月2日 |
0.1 |
9.0 |
平成7年実施 三方町向笠 急傾斜地
第2表 ネット上の放置日数
と果肉崩壊率(%)
放置日数 |
重量 |
個数 |
1日 |
12 |
12 |
2日 |
52 |
54 |
3日 |
77 |
82 |
平成6年実績 三方町向笠 急傾斜地
第1図 時期別累積落果率
第3表 ネット収穫果と手もぎの収量の比較(試算)
収穫法 |
収穫時期 |
1果重 (g) |
着果重 (kg/樹) |
落果重 (kg/樹) |
収量 (kg/樹) |
同左比 (%) |
|
ネット |
6月19日 |
15.1 |
|
|
|
|
|
~7月15日 |
~43.2 |
|
|
97.5 |
176 |
127 |
|
手もぎ |
6月20日 |
18.6 |
55.8 |
0.5 |
55.3 |
(100) |
72 |
25日 |
23.7 |
71.1 |
2.4 |
68.7 |
124 |
90 |
|
30日 |
28.5 |
85.0 |
8.6 |
76.4 |
138 |
(100) |
|
7月5日 |
30.2 |
96.0 |
38.4 |
57.6 |
104 |
75 |
第3図 ネット収穫果の塩添加量と加工特性
第4図 ネット収穫果の重石と加工特性
重石(果実5kgに対して):軽3kg 中5kg 重7kg
[その他]
研究課題名 :ネット収穫における完熟ウメの加工特性
予算区分 :県単
研究期間 :平成6~7年
研究担当者 :渡辺毅・山本仁・中川文雄
発表論文等 :ネット収穫における完熟ウメの加工特性、研究速報 NO.1
[平成8年度 普及に移す技術]
早生水稲「ハナエチゼン」の一括施肥法 |
|||||||
[要約] 速報性肥料と幼穂形成期前後に溶出を開始する遅効性肥料を組み合わせた一括施肥法は、気象条件の大幅に異なる年においても、ほぼ慣行施肥並の収量と慣行施肥を上回る玄米品質が得られ、ハナエチゼンの施肥作業を省力化することができる。 |
|||||||
福井県農業試験場・生産環境部・土壌環境研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
生産環境 |
専門 |
肥料 |
対象 |
稲類 |
分類 |
普及 |
[背景・ねらい]
大規模農家にとって穂肥時の作業集中はかなりの重労働となり、きめ細かい分施が困難である。一方、兼業農家の多くは、施肥作業が休日の天候に左右され、穂肥の適期を逃がすことが多い。
短稈の早生品種ハナエチゼンは倒状に対する穂肥の適期幅が大きく、コシヒカリ以上に一括施肥への適応性は高いと思われる。そこで、施肥作業の省力化と遅効性肥料の穏やかな肥効による食味値の向上を図る。
[成果の内容・特徴]
幼穂形成期前後に溶出する遅効性肥料(慣行の穂肥窒素相当量)と基肥の速効性肥料(同じく基肥相当量)を組み合わせると、ハナエチゼンの一括施肥が可能である。
(1) 遅効性肥料は、ほぼ幼穂形成期前後から開始したが、生育前期が低温年(平成7年)では、溶出のピークが遅れる傾向にある(図1)。
(2) 遅効性肥料の窒素溶出パターンは年次でかなり変化したが、品質特性から倒状への影響は見られず、玄米収量は慣行施肥と同等~若干低い程度である(表1)。
(3) 一括施肥は、慣行穂肥に比べ玄米窒素濃度が低めとなり、食味関連指数や食味計値が向上する(表2)。
[成果の活用面・留意点]
(1) 一括施肥は、平均的肥沃度を持つ土壌に適用する。
(2) 遅効性肥料の被覆尿素は、損傷すると窒素の溶出パターンが変化するので、特に、動力散布機を使用時に、専用の噴筒を用い、フルスロットルを避けて施肥作業を行う。
(3) 現場では、後期の土壌水分が不足すると、遅効性肥料の肥効低下が認められるので、幼穂形成期~刈り取り前落水迄の間断潅漑を持続する。
[成果の具体的データ]
図1 遅効性肥料(LPS)のN溶出曲線 図2 施肥法別N供給パターン
表1 一括施肥の施肥配分と収量・倒状等
年 |
区名 |
施肥配分(NKg/a) |
収量 |
収量構成要素 |
倒状 程度 * |
窒素 吸収 量 g/㎡ |
|||||||
基肥 |
穂肥 |
精玄 米重 kg/a |
同左 比 % |
穂数 本/㎡ |
一穂 籾数 粒 |
登熟 歩合 % |
千粒 重 g |
||||||
速効性 |
遅効性 |
1 |
2 |
||||||||||
H6 |
慣行 |
0.6 |
- |
0.2 |
0.2 |
67.4 |
100 |
543 |
61 |
93 |
22.2 |
1.1 |
13.6 |
一括 |
0.6 |
0.4 |
- |
- |
65.1 |
97 |
535 |
61 |
93 |
21.8 |
0.2 |
12.2 |
|
無窒素 |
- |
- |
- |
- |
45.3 |
67 |
420 |
52 |
95 |
22.3 |
0.0 |
7.3 |
|
H7 |
慣行 |
0.6 |
- |
0.2 |
0.2 |
63.8 |
100 |
537 |
58 |
94 |
22.3 |
0.1 |
11.3 |
一括 |
0.6 |
0.4 |
- |
- |
63.4 |
99 |
535 |
58 |
94 |
22.0 |
0.1 |
12.2 |
|
無窒素 |
- |
- |
- |
- |
47.7 |
75 |
467 |
49 |
96 |
22.2 |
0.0 |
7.9 |
(注) 慣行 基肥:塩加燐安402号(14-20-12) 穂肥:燐加安V555号(15-5-15)
穂肥1:幼穂形成期 穂肥2:減数分裂期
一括:LPS複合775(17-17-15、速効性N:遅効性N=6:4)
* :無(0)~甚(5)の6段階評価
表2 一括施肥と玄米品質
年 |
区名 |
外観品質* |
食味関連成分(無機分析) |
参考** |
||||||
良質粒 % |
乳白粒 % |
未熟粒 % |
Mg mg/100g |
K mg/100g |
Mg/K eq/eq |
T-N % |
Mg/K.N eq/eq・% |
食味値 |
||
H6 |
慣行 |
70 |
21 |
9 |
136 |
284 |
1.56 |
1.23 |
127 |
94 |
一括 |
78 |
15 |
7 |
138 |
286 |
1.57 |
1.22 |
129 |
96 |
|
無窒素 |
73 |
24 |
3 |
130 |
287 |
1.47 |
1.04 |
142 |
113 |
|
H7 |
慣行 |
91 |
3 |
6 |
136 |
284 |
1.54 |
1.45 |
106 |
83 |
一括 |
91 |
3 |
6 |
138 |
274 |
1.62 |
1.35 |
120 |
89 |
|
無窒素 |
94 |
2 |
4 |
138 |
286 |
1.55 |
1.25 |
125 |
- |
*:品種判定機RS-1000による値 **:近赤外法による食味値(N社)
[その他]
研究課題名 :遅効性肥料を利用したハナエチゼンの全量期肥施肥法
予算区分 :県単
研究期間 :平成6~7年
研究担当者 :中島健一・伊森博志・板東義仁
発表論文等 :なし
[平成8年度 普及に移す技術]
大区画乾田直播栽培におけるコシヒカリの一括施肥法 |
|||||||
[要約] 2種類の肥効調節型肥料(暖効性+遅効性肥料)に速効性肥料を組み合わせた基肥一括施肥法は、慣行の速効性肥料分施体系と収量・品質が同等で、コシヒカリの乾田直播栽培における施肥作業を省力化することができる。 |
|||||||
福井県農業試験場・生産環境部・土壌環境・地力保全研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
生産環境 |
専門 |
肥料 |
対象 |
稲類 |
分類 |
普及 |
[背景・ねらい]
近年、水稲栽培における省力化や作業の快適性を目指した乾田直播栽培が注目されている。乾田直播栽培では、脱窒や流亡により施肥窒素の利用率が低下しやすいため、施肥は、一般に、生育ステージに合わせたきめ細かな分施が行われている。これに対し、暖効性肥料による省力施肥体系が開発されているが、本田期間中の追肥作業が必要で、大区画圃場ではかなりの負担となる。
そこで、窒素溶出パターンの異なる肥効調節型肥料を組み合わせた一括施肥により、コシヒカリを対象とした大区画乾田直播栽培における施肥の省力化を図る。
[成果の内容・特徴]
速効性に肥効調節型肥料(溶出時期の異なる暖効性肥料と遅効性肥料)を組み合わせると、乾田直播におけるコシヒカリの一括施肥が可能である。
(1) 肥効調節型肥料の窒素は、肥料Aが苗立ち時期頃から急激に溶出を初め、穂肥時期にかけて徐々に溶出する。肥料Bは、ほぼ4葉期頃から急激に溶出を始め、穂肥時期にかけて除々に溶出する。肥料Cは、幼穂形成時期頃から溶出を始め、以後出穂10日目前後にかけて急激に溶出する(図1)。したがって、肥料A・Bは、おおむね慣行施肥(速効性肥料の6回分施体系)の中間追肥2回分に、肥料Cはおおむね慣行施肥の穂肥3回分に相当する(表1、図2)。
(2) 初期の生育や稲体窒素濃度は、窒素溶出の早い一括施肥A区でやや優れるが、中期以降は区間差が小さい(表2)。
(3) 一括施肥の収量・品質は、慣行施肥とほぼ同程度である(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1. 大区画の乾田直播圃場において、生育期間中の追肥作業を省く場合や、圃場内の機械走行が困難な場合に適する。
2. 施肥作業時には肥効調節型肥料の被覆材を傷つけないように注意する。
[成果の具体的データ]
表1 施肥設計 (Nkg/a)
区名 |
基肥 |
|
中間追肥 |
|
穂肥(出穂期) |
|||||
速効性 |
暖効性 |
遅効性 |
|
3葉期 |
5葉期 |
|
17日 |
10日 |
6日 |
|
無窒素 |
- |
- |
- |
|
- |
- |
|
- |
- |
- |
6回分施(慣行) |
0.15 |
- |
- |
|
0.2 |
0.15 |
|
0.2 |
0.2 |
0.1 |
一括施肥A |
0.15 |
0.35A |
0.5C |
|
- |
- |
|
- |
- |
- |
一括施肥B |
0.15 |
0.35B |
0.5C |
|
- |
- |
|
- |
- |
- |
基肥 速効性:塩加燐安402号 中間追肥・燐加安V555号
肥料A:セラコートU-S 肥料B:セラコートU-L 肥料C:LPSS100
図1 肥効調節型肥料のN溶出曲線 図2 施肥法別のN溶出曲線
(注)平7年度 現地圃場 (注)平7年度 表1参照
表2 茎数と稲体N含有率の推移 (平成7年)
区名 |
茎数(本/㎡) |
N含有率(%) |
成熟期N吸収量(g/㎡) |
|||||||||||
6/29 |
7/19 |
8/2 |
成熟期 |
6/29 |
7/10 |
7/19 |
8/2 |
8/24 |
わら |
穂 |
わら |
穂 |
合計 |
|
無窒素 |
193 |
309 |
407 |
362 |
2.8 |
3.1 |
2.6 |
1.5 |
0.9 |
0.49 |
0.9 |
2.1 |
4.2 |
6.3 |
6回分施(慣行) |
198 |
338 |
512 |
426 |
3.5 |
3.3 |
2.9 |
1.6 |
1.2 |
0.66 |
1.2 |
3.5 |
6.2 |
9.7 |
一括施肥A |
229 |
408 |
520 |
452 |
3.6 |
3.6 |
2.9 |
1.7 |
1.0 |
0.72 |
1.0 |
4.3 |
6.1 |
10.4 |
一括施肥B |
212 |
358 |
519 |
457 |
3.2 |
3.5 |
2.9 |
1.8 |
1.1 |
0.73 |
1.1 |
4.0 |
6.2 |
10.2 |
表3 収量と玄米品質
区名 |
わら重 (kg/a) |
籾重 (kg/a) |
精玄米重 (kg/a) |
同左比 |
倒状程度 * |
食味指標値 ** |
||||||
|
H6 |
H7 |
H6 |
H7 |
H6 |
H7 |
H6 |
H7 |
H6 |
H7 |
H6 |
H7 |
無窒素 |
50 |
51 |
54 |
53 |
42 |
39 |
75 |
80 |
0 |
2.1 |
155 |
144 |
6回分施(慣行) |
61 |
63 |
71 |
64 |
56 |
49 |
100 |
100 |
1.5 |
2.6 |
128 |
130 |
一括施肥A |
- |
70 |
- |
64 |
- |
49 |
- |
101 |
2.3 |
2.6 |
129 |
128 |
一括施肥B |
67 |
65 |
72 |
62 |
57 |
47 |
101 |
96 |
2.3 |
2.9 |
133 |
128 |
*:無(0)~甚(5)の6段階評価 **:Mg/K・N
[その他]
研究課題名 :水稲の乾田直播栽培における施肥の省力化
予算区分 :国庫補助(大区画水田圃場営農推進対策調査)
: 〃 (先進的水田基盤営農対策実証調査)
研究期間 :平成4年~7年
研究担当者 :中島健一・伊森博志・板東義仁・森永一・栗波哲・(田中英典:高志農改)
発表論文等 :
[平成8年度普及に移す技術]
セジロウンカによる水稲の被害と生息数調査法の捕捉効率 |
|||||||
[要約]5月期移植水稲においてセジロウンカの加害によって草丈、稈長、穂長、1穂籾数、精玄米重が減少した。圃場での被害実態と生息数調査法としての払い落とし法とすくいとり法の生息数捕捉効率も明らかにした。 |
|||||||
福井県農業試験場・生産環境部・昆虫研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
生産環境 |
専門 |
作物害虫 |
対象 |
稲類 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
セジロウンカは5~7月に飛来して稲に産卵し、急激に増加する。4月末~5月初めの移植が一般的な北陸地域において、本種の加害の影響を明らかにして効率的な防除を図る。また、簡便な生息密度調査法である払い落とし法、すくいとり法の効率を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1)放飼試験による被害解析
(1)成虫放飼試験では雌成虫放飼数が増加すると草丈、稈長、1穂籾数(図1)は抑制された。茎数、穂数はほとんど影響しなかった。また、出穂期は遅れた(表1)。
(2)放飼数が増加すると精玄米重が減少した(図2)。雌成虫の1株2頭放飼で93年は減収率5%を超えたが、94年は5%以下であった。減少の要因は1穂籾数の減少と精玄米重歩合の低下によるものであった。
(3)加害による稲の生育および収量への影響は5月上旬植より5月下旬植の方が大きかった。
(4)1993年と1994年では収量水準が異なったが、次世代の生息数が多くなると精玄米重が低下した(図3)。回帰式から求めた減収率5%となる加害盛期の株あたり成幼虫数は5月6日植で15~30頭、5月26日植で15~20頭となり、減収率10%となる株あたり成幼虫数5月6日植で30~50頭、5月26日植で30頭前後とみられた。
2)圃場における被害実態と生息密度調査法
(1)圃場試験では幼虫加害盛期である8月初めに払い落とし法(後述)で株あたり30~40頭認められると収量は約10%減少し、減収率5%を測定した要防除水準を越えた(表2)。
(2)稲株を2回たたいて虫見板(20×27cm)に払い落とす方法の捕捉率は幼虫では約20%でほぼ安定していたが、成虫ではばらついた。捕虫網によるすくいとり法の捕捉率は成虫では約10%と思われ、幼虫は1%台と低かった(表3)。
[成果の活用面・留意点]
成虫の飛来時期での防除の目安として利用できる。払い落とし調査は幼虫数調査に用い、1圃場3ヵ所以上で行うのが望ましい。すくいとり調査は成虫数調査に用いる。
[具体的データ]
表1放飼雌成虫と次世代成幼虫数、出穂期との関係
年 |
放飼 期間 |
放飼 雌数 /株 |
次世代株あたり 成幼虫数a) |
出穂期 |
||
5/6植 |
5/26植 |
5/6植 |
5/26植 |
|||
1993 |
月/日 |
頭 |
頭 |
頭 |
月/日 b) |
月/日 |
7/15 |
0 |
38 |
27 |
8/8(0) |
8/19(0) |
|
~ |
2 |
49 |
60 |
/8(0) |
/19(0) |
|
8/16 |
5 |
102 |
245 |
/8(0) |
/22(+3) |
|
|
10 |
231 |
232 |
/9(+1) |
/24(+5) |
|
1994 |
6/29 |
0 |
0.4 |
10 |
7/28(0) |
8/13(0) |
~ |
2 |
6 |
9 |
/29(+1) |
/13(0) |
|
8/1 |
5 |
121 |
50 |
/29(+1) |
/15(+2) |
|
|
10 |
117 |
134 |
/29(+1) |
/20(+7) |
a)放飼終了日の調査による
b)0頭区を0とした場合の差
表3 払い落とし法、すくいとり法による生息数調査の効率(1995)
調査 月日 |
調査a) 地 |
調査 者 |
調査 点数 |
1株 生息数b) |
払い落とし法 捕捉率% |
すくいとり法C) 捕捉率% |
|||
成虫 |
幼虫 |
成虫 |
幼虫 |
成虫 |
幼虫 |
||||
7/26 |
A |
Y |
3 |
9 |
189 |
33 |
18 |
7 |
0.3 |
〃 |
B |
Y |
3 |
1 |
5 |
20 |
20 |
2 |
1.2 |
8/4 |
A |
Y |
7 |
6 |
266 |
11 |
18 |
12 |
1.2 |
〃 |
A |
M |
7 |
〃 |
〃 |
11 |
21 |
11 |
1.5 |
〃 |
B |
Y |
3 |
2 |
58 |
10 |
9 |
8 |
1.2 |
a)A:越前町(日本晴) B:織田町(コシヒカリ)
b)株をテトロンゴース袋で覆い、殺虫剤を散布して生息数を調査
c)10回往復すくいとりする株数を300株として計算
[その他]
研究課題名:セジロウンカの要防除密度の策定と調査方法の改良
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成5~7年)
研究担当者:山崎昌三郎、松下ひろみ
発表論文等:福井農試研究報告(1996)№33 15-24
ラッキョウ甘酢漬下漬け発酵の安定化 |
|||||||
[要約]ラッキョウ甘酢漬の下漬け発酵の主要乳酸菌はLactobacillus plantarumで、ラッキョウに含まれるフルクタン(果糖の多糖類)を発酵した。また、この乳酸菌の特性から下漬けの食塩濃度は9%程度が望ましい。 |
|||||||
福井県農業試験場・食品加工研究所・加工開発研究チーム |
連絡先 |
0776-61-3539 |
|||||
部会名 |
食品 |
専門 |
加工利用 |
対象 |
根菜類 |
分類 |
普及 |
[背景・ねらい]
福井県の特産品である花ラッキョウ(ラッキョウ甘酢漬け)は、下漬け時に発酵を行っており、この発酵の良否が製品の品質を左右する。その特徴は、ラッキョウに特異的に含まれるフルクタンが発酵に利用される点にある。ところが、気候や製造ロットにより発酵不良にみまわれることがあり、品質低下の原因となっている。発酵不良を防止するには、下漬け中の微生物の実態を把握する必要がある。そこで、下漬けから分離した乳酸菌の同定を行い、その特徴を明らかにした。
[成果の内容・特徴]
(1)生菌数は下漬け開始直後から増加したが、乳酸菌が主体で、酵母やその他の細菌は菌数の増大期にはにられなかった(図1)。
(2)分離された主な乳酸菌はLactobacillus viridescens(I)、Leuconostoc mesenteroides(II)、Lactobacill-us plantarum(III)の3種と同定された。3種とも果糖を発酵したが、I、IIはラッキョウのフルクタンを発酵しなかった。IIIのほとんどはフルクタンを発酵するタイプ(A)だったが、発酵しないタイプ(B)も認められた(表1)。
(3)経時的に乳酸菌種に遷移がみられた。Iは発酵開始直後に減少し、変わってIIが多くを占めたが、生酸菌が増大してくる一週間後からはIIIが大部分を占めた(図2)。
(4)発酵不良の漬け液にはマンニトールの生成がみられたが、正常な漬け液にはみられなかった(図3)。IIは果糖からマンニトールを生成したが、I、IIIは生成しなかった。IIIはマンニトールを発酵した(表1)。
(5)これらのことから、IIIのフルクタンを発酵するタイプが下漬け発酵の主体で、発酵不良の下漬けでは、この乳酸菌が増殖せず、IIが生育し続けていると思われた。
(6)また、IIIの耐食塩濃度(表1)から、下漬けの食塩濃度は9%程度が望ましい。
[成果の活用面・留意点]
発酵工程の短縮と安定化に活用できる。
下漬けで長期間貯蔵する場合は、乳酸発酵が終わってから(約1ヶ月後に)増し塩を行う。
[具体的データ]
表1 下漬け液から分離した乳酸菌の特徴
|
L.viridescens |
Leuc.mesenteroides |
L.plantarum(A) |
L.plantarum(B) |
形態 |
稈菌 |
連鎖球菌 |
稈菌 |
稈菌 |
発酵形式 |
ヘテロ |
ヘテロ |
ホモ |
ホモ |
果糖から |
|
|
|
|
マンニトールの生成 |
- |
+ |
- |
- |
糖類発酵性 果糖 |
+ |
+ |
+ |
+ |
ラッキョウフルクタン |
- |
- |
+ |
- |
マンニトール |
- |
- |
+ |
+ |
生育温度 15℃ |
+ |
+ |
+ |
+ |
37℃ |
+ |
+ |
+ |
+ |
40℃ |
+ |
- |
+ |
+ |
45℃ |
- |
- |
- |
- |
耐食塩濃度 7℃ |
+ |
+ |
+ |
+ |
9℃ |
- |
-or Weak |
+ |
+ |
10℃ |
- |
- |
+ or - |
+ |
12℃ |
- |
- |
- |
- |
+:生育する -:生育しない Weak:僅かに生育する
[その他]
研究課題名:北陸特産野菜の特殊成分利用技術の開発・改善および新規食品の開発
予算区分 :国補(地域重要新技術)
研究期間 :平成7年度(平成5~7年)
研究担当者:小林恭一、岡田早苗* 、渕上小百合、西川清文、稲木幸夫。(*東京農大)
発表論文等:ラッキョウ甘酢漬けに関与する乳酸菌について、日本農芸化学会1996年度大会
[平成8年度 普及に移す技術]
セスバニアとトウモロコシの混作栽培 |
|||||||
[要約]セスバニアとトウモロコシの混作栽培及びセスバニア栽培後トウモロコシ栽培により連作栽培圃場に比べ、トウモロコシの収量性、栄養価が改善された。また、セスバニアはトウモロコシとの混合サイレージ化により、サイレージ発酵品質、嗜好性が改善され、良質粗飼料として利用可能である。 |
|||||||
福井県畜産試験場 技術開発部 飼料研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
畜産 |
専門 |
栽培 |
対象 |
雑穀類 |
分類 |
普及 |
[背景・ねらい]
大家畜産家の粗飼料生産として高栄養価、多収性等の理由から、飼料用トウモロコシの栽培が主流である。しかし、トウモロコシは栄養バランスの点から見ると、蛋白質やミネラルが低い等の欠点があり、また、土壌養分の収奪力が高いため、地方が低下し減収および病虫害が発生し易いと言った連作障害が出ている。
マメ科植物であるセスバニアは、トウモロコシの多収性を発揮させると同時に栄養成分の補正と土壌改善効果の期待ができる。そこで、セスバニアとトウモロコシの混作栽培について、栽培方法、生育特性、収量性、貯蔵調製方法、嗜好性、栄養性について検討した。
[成果の内容・特徴]
1.生育成績
平成6年度では生育前半でトウモロコシの草丈がセスバニアより高かったが、収穫時には1.3.4区のセスバニアの方が上まわった。平成7年度では試験圃のトウモロコシの草丈はトウモロコシ栽培跡に比べセスバニア栽培跡が高くなった。これは根粒菌による窒素固定による影響と考えられる。
2.収量成績
平成6年度では各区の10a当りの乾物収量は1区2,005.7kg>2区1,804.2kg>4区1,695.2kg3区>1,470kgの順となった。4区が3区より多くなった要因はセスバニアの播種量が影響したと考えられる。平成7年度では試験圃の収穫時のトウモロコシ10a当りの乾物収量はトウモロコシ栽培跡に比べ、セスバニア栽培跡が253.4kg高くなった。また、実証圃の10a当りの乾物収量はトウモロコシ887.3kg、セスバニア162.4kgとなった。
3.発芽成績
セスバニアの無処理区が10日目で発芽率24%、これに比べ、種子の吸水性改善を行なった処理区は同日目で発芽率63%と約3倍程度向上した。このため、セスバニアの発芽、生育を均一にするためにはこの様な種子処理が重要と考えられた。(表-1)
4.発酵品質
サイレージ発酵品質のフレーク評点の点数、等級はセスバニア単独64点・良<セスバニア、トウモロコシ混合79点・良<トウモロコシ単独96点・優の順に良くなった。このことからセスバニア単独、セスバニア、トウモロコシ混合のサイレージ化は十分可能と考えられた。(表-2)
5.嗜好成績
21日間の体重当たりの採食率を見ると、セスバニア単独10.5%<セスバニア、トウモロコシ混合16.0%<トウモロコシ単独21.2%の順に高まった。このことから、セスバニアはトウモロコシとの混合により嗜好性が高まったと考えられる。(表-3)
6.一般成分
セスバニアはトウモロコシに比較して粗蛋白質、粗繊維含量が2倍の値を示した。
7.サイレージの栄養価
サイレージのDCPはトウモロコシ単独4.3%<セスバニア、トウモロコシ混合5.9%<セスバニア単独8.9%の順に高い傾向を示した。TDNはセスバニア単独44.5%、セスバニア、トウモロコシ混合48.0%、トウモロコシ単独61.9%、の順に高い傾向を示した。(表-4)
[成果の活用面・留意点]
セスバニアの発芽、生育を均一にするには種子を砂粒により強く摩擦し、種子表皮に細かい傷を付けて吸水性の改善を図る事が重要である。セスバニアとトウモロコシの混作栽培は交互別畦播種である条播、畦間75cmであり、セスバニアの播種量は(約150粒/m)が適正と考えられる。セスバニアはトウモロコシとの混合サイレージ化により、サイレージの発酵品質、嗜好性が改善されることから良質粗飼料として利用可能である。
[具体的数値]
表-1 セスバニアの発芽状況 (%)
区分 |
経過日数(日間) |
||||
|
1 |
3 |
10 |
14 |
28 |
無処理区 |
12 |
14 |
24 |
51 |
62 |
処理区 |
27 |
38 |
63 |
75 |
85 |
表-2 サイレージの発酵品質
区分 |
水分 |
PH |
有機酸組成 FM% |
フレーク評点 |
||||
|
|
|
総酸 |
乳酸 |
酢酸 |
酪酸 |
点数 |
等級 |
セスバニア |
79.7 |
4.64 |
0.93 |
0.50 |
0.43 |
- |
64.0 |
良 |
トウモロコシ |
68.8 |
3.76 |
1.67 |
1.29 |
0.38 |
- |
96.0 |
優 |
セスバニア+ |
75.6 |
3.95 |
1.94 |
1.29 |
0.65 |
- |
79.0 |
良 |
トウモロコシ |
|
|
|
|
|
|
|
|
表-3 山羊による嗜好成績
区分 |
|
セスバニア |
トウモロコシ |
セスバニア+トウモロコシ |
21日間採食量 |
DM 体重当り |
12.62kg 10.5% |
21.75 21.2 |
16.89 16.0 |
表-4 消化率 (%)
区分 |
乾物 |
有機物 |
粗蛋白質 |
粗脂肪 |
可溶性無窒素物 |
粗繊維 |
DCP |
TDN |
セスバニア |
37.8 |
46.0 |
66.3 |
54.3 |
46.1 |
49.2 |
8.9 |
44.5 |
トウモロコシ |
56.9 |
63.8 |
55.6 |
71.3 |
68.6 |
55.8 |
4.3 |
61.9 |
セスバニア+ |
41.9 |
49.7 |
54.9 |
49.8 |
55.3 |
40.3 |
5.9 |
48.0 |
トウモロコシ |
|
|
|
|
|
|
|
|
[その他]
研究課題名:セスバニアとトウモロコシの混作栽培
予算区分 :国補
研究期間 :平成6年~7年度
研究担当者:畜産試験場技術開発部飼料研究チーム
発表論文等:第37回日本畜産学会福井県分会大会
[平成8年度 普及に移す技術]
市販の消臭剤が鶏糞の臭気発生に及ぼす影響 |
|||||||
[要約]悪臭問題に対する対策として、コスト面で比較的取り組みやすいバイオ・新素材の効果判定を試みた。産卵鶏を用いて3種類の資材について検討し、めざましい効果は観察されなかったものの、A・C材については消臭低減効果を有すると思われる。 |
|||||||
畜産試験場 技術開発部 環境研究チーム |
契機 |
研 |
|||||
部会名 |
畜産 |
専門 |
飼育管理 |
対象 |
採卵鶏 |
分類 |
指導 |
[背景・ねらい]
近年、深刻化している畜産環境の中で、悪臭問題は苦情件数も多く早急な対応が求められている。このため、コスト面で比較的取り組みやすく(設備の新設が不要)、臭気分解、堆肥化促進に効果があると考えられているバイオ・新素材についてその効果を検討した。
[成果の内容・特徴]
使用資材 植物質系添加物A材、B材及び微生物系添加物C材を飼料に添加した。
添加量はそれぞれ0.5%、0.6%、1%とした。
測定場所 畜産試験場近隣の養鶏農家4戸において実施。
また、サンプリング時の環境によるデータの混乱を考慮し、畜産試験場の実験室内で持ち帰った糞の臭気を測定した。
測定項目 アンモニア(検知管法)
低級脂肪酸:プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸(ガスクロ法)
硫黄化合物:硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル(ガスクロ法)
臭気指数(三点比較式臭袋法:官能検査法)
測定回数 試験開始前、20、50、80日目の計4回
結果の概要
A材: 野外試験の試験区において、低級脂肪酸は平均的に試験区が対照区を下回り、資材の効果が観察された。実験室でも、低級脂肪酸は試験区が対照区をおおむね下回った。臭気指数も試験区において低く推移した。A材は臭気の低減効果を有すると思われる。
B材: 野外試験においては、低級脂肪酸、硫黄化合物、臭気指数ともに大きな低減効果は認められなかった。実験室内においても、20日目のアンモニア発生が抑えられた他は、対照区との間に効果を見いだせなかった。当資材の産卵鶏への使用では、高い効果は期待できないと思われる。
C材: 野外試験において、アンモニアおよび低級脂肪酸は、試験区・対照区ともに同様の推移が観察され、資材の効果であるかどうかは疑問である。しかしながら、臭気指数は試験区において常に低く推移し、資材の効果がうかがえる。実験室内においては、低級脂肪酸については野外試験と同様であったが、アンモニア濃度では顕著な減少がみられた。臭気指数も試験区において低く推移した。本資材はアンモニア濃度低減および臭気指数を低下させる効果を有すると思われる。
[成果の活用面・留意点]
自家配合飼料の場合は配合の際に資材を混合し、配合飼料を購入している場合にはタンクに飼料補給する際に必要量を投入する方法が最適と思われる。また、これらの資材から期待される効果は、あくまで補助的と考えるべきである。消臭低減効果を期待するならば、普段から畜舎清掃がきちんと行われていなければならない。
[具体的データ-]
直物抽出物系資材A材の効果
畜舎内の臭気(平成6年 夏に実施) 単位:ppm
|
資材添加区の臭気 |
無添加区の臭気 |
||||||
|
添加前 |
20日目 |
50日目 |
80日目 |
添加前 |
20日目 |
50日目 |
80日目 |
アンモニア |
4.5 |
2.0 |
1.2 |
0.5 |
4.1 |
4.1 |
9.5 |
1.0 |
プロピオン酸 |
--- |
0.0058 |
0.0214 |
0.0161 |
--- |
0.0221 |
0.0232 |
0.0202 |
n-酪酸 |
--- |
0.0052 |
0.0047 |
0.0095 |
--- |
0.0083 |
0.0086 |
0.0041 |
吉草酸 |
--- |
0.0012 |
0.0025 |
0.0022 |
--- |
0.0022 |
0.0023 |
0.0015 |
i-吉草酸 |
--- |
0.0018 |
0.0005 |
0.0018 |
--- |
0.0018 |
0.0004 |
0.0018 |
臭気指数 |
18.7 |
17.4 |
13.7 |
13.65 |
18.65 |
17.4 |
13.65 |
13.65 |
畜舎内温度 |
31.7 |
30.8 |
25.5 |
13.5 |
29.4 |
29.1 |
28.2 |
13.5 |
植物抽出物系資材B材の効果
新鮮糞かのの臭気(平成7年 夏に実施) 単位:ppm
|
資材添加区の臭気 |
無添加区の臭気 |
||||
|
添加前 |
20日目 |
65日目 |
添加前 |
20日目 |
65目 |
アンモニア |
200 |
220 |
800 |
180 |
400 |
830 |
プロピオン酸 |
0.0006 |
0.0013 |
0.0006 |
0.0000 |
0.0004 |
0.0004 |
n-酪酸 |
0.0017 |
0.0037 |
0.0007 |
0.0000 |
0.0010 |
0.0010 |
吉草酸 |
0.0004 |
0.0006 |
0.0004 |
0.0000 |
0.0000 |
0.0000 |
i-吉草酸 |
0.0000 |
0.0168 |
0.0149 |
0.0266 |
0.0000 |
0.0000 |
臭気指数 |
39.9 |
43.7 |
37.4 |
37.45 |
39.9 |
34.9 |
室内温度 |
21.5 |
27.3 |
30.1 |
22.2 |
24.8 |
30.1 |
微生物物系資材C材の効果
新鮮糞からの臭気(平成7年 夏に実施) 単位:ppm
|
資材添加区の臭気 |
無添加区の臭気 |
||||
|
添加前 |
20日目 |
65日目 |
添加前 |
20日目 |
65目 |
アンモニア |
100 |
260 |
350 |
240 |
1000 |
580 |
プロピオン酸 |
0.0056 |
0.0008 |
0.0010 |
0.0004 |
0.0010 |
0.0010 |
n-酪酸 |
0.0009 |
0.0012 |
0.0051 |
0.0000 |
0.0007 |
0.0051 |
吉草酸 |
0.0000 |
0.0071 |
0.0004 |
0.0000 |
0.0005 |
0.0004 |
i-吉草酸 |
0.0000 |
0.0004 |
0.0205 |
0.0000 |
0.0000 |
0.0205 |
臭気指数 |
38.65 |
39.9 |
41.6 |
41.15 |
46.76 |
45.7 |
室内温度 |
23.8 |
26.0 |
28.4 |
22.2 |
25.8 |
28.8 |
[その他]
研究課題名:市販の消臭剤が鶏糞の臭気発生に及ぼす影響
予算区分 :国補(家畜ふん尿無臭化還元技術開発事業 バイオ・新素材利用型)
研究期間 :平成6~7年
研究担当者:明間 基生
発表論文等:なし
アンケート
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