実用化技術等(平成3年)

最終更新日 2023年3月13日ページID 052140

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【平成3年度】

1.「ハナエチゼン」の奨励品種採用
2.コシヒカリの上位第3葉身長の診断による倒状軽減技術
3.乾田直播における耕耘後の鎮圧による播種精度の安定向上
4.大区画水田における高性能機械化体系による乾田直播栽培
5.簡易暗渠の自作とその洗浄効果
6.緩効性肥料による2回施肥体系
7.改造型大豆コンバインの高性能化
8.大規模水田作経営における3年5作体系の経営評価
9.ラッキョウのウイルスフリー苗の育成増殖技術
10.施設野菜におけるロボットスプレーカを利用した薬剤散布効果
11.抑制キュウリの苗床摘芯による2本仕立て栽培法
12.半促成トマトの側技花房利用栽培
13.6・7月切りトルコギキョウの人工光下挿し芽増殖法
14.福井県に発生したスイセンの新病害葉先枯病の病原菌と対策
15.利久梅の技物として整技法
16.新規造成地ナシ園における生育・結実の実態と有機物の連用効果
17.ウメ黒星病菌の簡便な薬剤耐性検定法と福井県における葉剤耐性菌の出現と対策
18.肥料成分の動向からみたウメ園の施肥改善
19.大麦粉を併用した味噌用米麹の製造技術
20.降雨による刈り遅れ小麦の利用加工技術
21.半乾燥型粗飼料に対するアンモニア添加の発熱抑制および防カビ効果
22.暖地型牧草の草種別・刈取時期別乾燥特性の解明
23.繁殖豚の授乳用飼料に対する油脂の添加
24.育成期の制限給餌と成鶏期における期別給餌法

 

平成3年度

普及に移す技術

 

分類 A

契機 研

部門 水稲

技術・情報名

「ハナエチゼン」の奨励品種採用

実施場所

福井県農業試験場、福井県園芸試験場

 

1.成果の内容

 1) 技術・情報の内容及び特徴

  「ハナエチゼン」は福井農試において、昭和52年に「越南122号」を母とし、「フクヒカリ」を父として人工交配され、系統育種法により、育成された。昭和63年以降、地域適応性を検討した結果、下記のような特性が認められたので、平成3年より県奨励品種として採用の予定である。

 

(1)       「ハナエチゼン」は「フクヒカリ」より成熟期が1~2日早い早生で、やや穂数の多い、偏穂数型粳種である。

(2)       やや短稈で倒伏に強い。また、早生で問題になりやすい胴割および穂発芽をしにくく栽培しやすい。

(3)       千粒重は「フクヒカリ」より軽いが、登熟は良好で籾わら比が高く、また籾摺歩合も高く収量性は安定している。

(4)       「フクヒカリ」より腹白が少なく、玄米の外観品質はすぐれている。

(5)       精米白度が高く、飯米の外観が良い。食味総合値は「フクヒカリ」に匹敵する極良である。

(6)       いもち病真性抵抗性遺伝子型は「フクヒカリ」と同じ「Pi-z」と推定される。

 

2) 技術・情報の適用効果

  「こしにしき」および「フクヒカリ」の一部、さらに「コシヒカリ」偏重地域では「コシヒカリ」の一部にも代替し、品種作付配分の適性化をはかることにより、本県産米の総合的な収量・品質向上が期待される。

 

3)       普及・利用上の留意点

 

(1)       施肥は基肥を主体とし、穂肥は多用しない。

(2)       いもち病、白葉枯病の適期防除を行う。

(3)       成熟期が高温期であるため、適期に刈り取る。

(4)       集団栽培により雀害などを防止するとともに、基本技術を励行し、品質の向上に努める。

 

2. 具体的データ

 表1 生育概況    (農試 奨決基本調査 平均値)

試験

場所

施肥

水準

試験

年次

系統名

または

品種名

出穂期

成熟期

稈長

穂長

穂数

わら重

籾重

玄米重

標準比

千粒重

品質

倒伏

葉いも

ち病

(畑晩播)

 

 

 

 

(月日)

(月日)

(cm)

(cm)

(本/㎡)

(kg/a)

(kg/a)

(kg/a)

(%)

(g)

 

 

 

農試

標肥

S63-H2

ハナエチゼン

7.23

8.28

72

17.6

439

48.2

73.1

60.1

102

23.0

3.3

0

1

 

 

 

フクヒカリ

7.24

8.30

75

19.1

430

48.7

71.9

58.7

100

24.6

3.8

0.1

10

 

多肥

H1-H2

ハナエチゼン

7.21

8.28

78

17.5

500

60.3

83.6

68.6

103

22.8

3.6

0.7

 

 

 

フクヒカリ

7.22

8.28

79

19.5

491

59.3

81.9

66.6

100

24.6

4.0

1.4

園試

標肥

S63-H2

ハナエチゼン

7.23

7.29

69

17.3

434

51.4

71.3

57.6

104

22.9

2.7

0

 

 

 

フクヒカリ

7.24

7.30

74

18.7

416

53.4

70.6

55.5

100

24.0

2.8

0

 

多肥

H1-H2

ハナエチゼン

7.21

7.28

67

18.0

428

57.4

73.8

59.7

104

23.7

2.7

0

 

 

 

フクヒカリ

7.22

7.28

70

19.3

415

57.6

72.2

57.5

100

25.0

3.0

0

          品質1:上上~9:下下、倒伏0:無~5:甚、畑晩播0:無~10:甚

 

 表2 品質・食味関連調査結果(H2 奨決サンプル ただし武生・下河北を除く)

系統名

品種名

外観品質

(観察)

完全粒率%

観察(分別)

良質粒率%

(品質判定機)

食味官館(基準:農試産フクヒカリ)

玄米無機成分

食味計値

総合

外観

うま味

粘り

N

(%)

Mg

(mg/100g)

K

(mg/100g)

N社(玄米)

S社(白米)

ハナエチゼン

3.59

>**

83.1

>**

92.2

>**

0.339

0.283

>**

0.269

0.259

1.46

142

290

>**

79.5

64.0

>*

フクヒカリ

3.85

55.7

88.5

0.300

0.131

0.239

0.206

1.45

140

280

80.0

60.3

                              *5%有無 **1%有無

3.その他の特記事項

 研究期間 :昭和63年~平成2年        予算区分:国補1/2

 研究課題名:奨励品種決定調査

 

普及に移す技術

 

分類 B  

契機 普

部門 水稲

新技術

コシヒカリの上位第3葉身長の診断による倒伏軽減技術

実施場所

福井県農業試験場

 

1.       成果の内容

 

1)       技術・情報の内容及び特徴

 

   湿田の多い本県においては、中干しの不徹底や生育後半の気象変動によってコシヒカリの倒伏が少なくない。そくで上位第3葉身長(止葉より2枚先に展開する葉)による診断予測に基づき、止葉展開時に倒伏軽減剤(パクロブトラゾール0.6%粒剤)を散布し、上位節間短縮による安定生産をはかる。

 

(1)       上位3葉身長と下位節間長(第4+第5)の関連を確認した。上位第3葉身長と倒伏の関係は登熟期の雨量によってやや異なるが、平年では上位第3葉身長が42cmを超えると倒伏程度は高まった。(第1表、第1図、第2図)

(2)       5月上旬移植で上位第3葉(第11葉)が展開する時期は出穂前35日~24日、上位第1葉(第13葉・止葉)は出穂前15~8日である。したがって、葉齢を把握しておけば出穂前23日頃に上位第3葉身長が測定できる。また、把握できない場合でも止葉が判別できる出穂前14日頃には上位第3葉身が特定できる。(第2表、第3図)

(3)       上位第3葉(第11葉)身長が42cmを超えた場合、12.5葉期にあたる出穂前10日頃に倒伏軽減剤(パクロブトラゾール0.6%粒剤)を散布した結果、上位節間長の短縮により稈長が約10cm短くなって、倒伏が軽減されるとともに、収量・品質が安定した。(第3図、第3表)

 

2)       技術・情報の適用効果

 

(1)       コシヒカリの生育制御が困難な湿田等の水田における倒伏軽減が可能である。

 

3)       適用範囲

 

(1)       コシヒカリの早植え(4月末~5月上旬)の稚苗移植を対象とする。

 

4)       普及・利用上の留意点

 

(1)       出穂前23日~出穂前14日の時期に圃場で草丈・茎数が平均的な株20~30個体について、株中最長茎の上位第3葉身長を計測し、その平均値にて診断する。

(2)       パクロブトラゾール0.6%粒剤の施用は、止葉の1/2が展開した時点(出穂前10日頃)で、量は湿田において3kg/10a程度とする。

(3)       遅植えや麦跡田の作付においては総葉数が減少するので、上位第3葉身の葉齢を確認する。

 

2.       具体的データ

 

第2図 上位三葉身の展開時期(気象対策試験 昭59~平2年)

主稈葉数

展開始め~展開終了

平均葉身長(cm)

備考

11葉(上位第3葉)

出穂前35.4±2.8日~24.4±2.4日

40.6±1.4

最終主稈葉数

12葉(上位第2葉)

〃 24.4±2.4日~15.0±1.7日

35.1±1.8

13.0±0.19葉

13葉(上位第1葉)

 〃 15.0±1.7日~8.0±1.5日

25.6±2.1

 

 

第2表 止葉展開期の倒伏軽減剤(パクロブトラゾール)散布による倒伏軽減効果(平成元年)

圃場

施肥

(kg/10a)

軽減剤

(kg/10a)

7月14日(11.6葉)

出穂

稈長

穂長

倒伏

収量

総籾数

登熟

千粒重

上位節間

下位節間

草丈

茎数

LAI

11葉身長

月日

LAI

 

 

 

 

 

 

 

(1+2+3)

(4+5)

基肥

追肥

穂肥

時期

(cm)

(本/㎡)

 

(cm)

 

 

(cm)

(cm)

(0~5)

(kg/a)

(万粒)

(%)

(g)

(cm)

(cm)

強湿田

3

1

2×3

12.6 * 

5

67

561

4.0

43.1

8.7

5.4

84

17.1

0

61

3.12

89

22.4

64

18

3

1

2×3

-

0

65

581

4.0

43.5

8.6

5.4

94

17.4

4

58

3.20

82

22.0

76

19

普通田

3

0

2×3

-

0

63

560

3.3

40.1

8.6

4.7

90

17.5

1

57

2.71

93

22.6

75

16

          * 7月26日

 

第3表 止葉展開期の倒伏軽減剤(パクロブトラゾール)散布による倒伏軽減効果(平成2年)

圃場

施肥

(kg/10a)

軽減剤

(kg/10a)

 

7月11日(11.6葉)

出穂

稈長

穂長

倒伏

収量

総籾数

登熟

千粒重

上位節間

下位節間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(1+2+3)

(4+5)

基肥

追肥

穂肥

時期

 

草丈

(cm)

茎数

(本/㎡)

LAI

11葉身長

(cm)

月日

LAI

(cm)

(cm)

(0~5)

(kg/a)

(万粒)

(%)

(g)

(cm)

(cm)

強湿田

3

4

2×3

12.5

3

 

 

 

 

8.2

6.4

80

17.8

2.5

64

3.40

86

22.1

63

19

 

3

4

2×3

12.5

5

 

84

512

5.0

48.0

8.2

6.5

77

17.4

1

62

3.25

87

21.9

58

19

 

3

4

2×3

-

0

 

 

 

 

 

8.1

6.4

90

18.3

4

61

3.46

83

21.6

72

20

普通田

3

0

2×3

-

0

 

86

368

3.6

40.0

7.31

4.4

84

19.2

2

57

2.66

90

22.5

71

15

3.       その他特記事項

 研究期間 :昭和60~平成2年      予算区分:国補

 研究課題名:湿田のコシヒカリ栽培における登熟向上技術(先導的稲作技術改善)

 研究担当者名:佐藤勉、間脇正博、井上健一、岩田忠寿

 

普及に移す技術

 

分類 B  

契機 研

部門 水稲

新技術

乾田直播における耕耘後の鎮圧による播種精度の安定向上

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

 

1)技術・情報の内容及び特徴

 

重粘土地帯での乾田直播において、耕耘後の鎮圧処理によって、降雨による播種作業への障害を軽減でき、さらに播種精度の安定化がはかられる。

 

(1)作業方法

 鎮圧作業は、耕耘後土壌表面が白く乾いた時に鎮圧ローラを用い、速度は2m/s前後で2回程度行う。

 

(2)降雨後、播種可能日までの期間の短縮(図1)

  鎮圧処理をした場合、15~20mm/日程度の降雨後翌日からの播種が可能で、無鎮圧区及び不耕起区に比べ、出芽・苗立が70%程度と高い。

 

(3)播種深さの安定化と砕土率の向上(図2、3)

  鎮圧区は、播種深さの変動が小さく、無鎮圧、不耕起区は降雨量の増加に伴い播種深さの変動が大きくなるとともに、無覆土種子の割合が増える等、播種精度が悪化する。

 また、鎮圧区の播種時の砕土率は、無鎮圧区、不耕起区に比べ高い傾向がある。

 

(4)播種時のトラクター走行の安定化と土壌条件の向上(図4、5)

  鎮圧区は、無鎮圧区に比べて播種時の貫入抵抗が高く、トラクター沈下量も少なく、播種作業条件は良好となる。

 

(5)播種時の耕耘底層の土壌条件の向上(図6)

  鎮圧区の耕耘底層部は、無鎮圧区に比べ、締め固めにより固相率が高く、含水比が低くなり、播種時の砕土条件は向上する。

 

2)       技術・情報の適用効果

 

   耕耘後に鎮圧処理をしておくことで、播種適期までの降雨による障害が軽減され、精度の高い播種が可能となる。

 

3)       普及・利用上の留意点

 

  (1)本情報で調査の対象とした土壌は、細粒強グライ土、細粒灰色低地土で作土の土性はLicである。

 

2.具体的データ

 

3.その他特記事項

 

研究期間            :昭和63年~平成2年              予算区分:地域水田農業

研究課題名           :大型機械による無湛水復帰田における水稲直播栽培法

                        大区画汎用水田における高能率低コスト米生産技術の解明

研究担当者名       :北倉芳忠、林恒夫、岩田忠寿、坂野良冶

 

普及に移す技術

 

分類 B  

契機 研

部門 水稲

技術・情報名

大区画水田における高性能機械化体系による乾田直播栽培

実施場所

福井県農業試験場

 

1.    成果の内容

 

1)       技術・情報の内容及び特徴

 

大区画水田(85m×210m=180a)において、潅排水対策と耕起後鎮圧処理の導入により降雨や重粘な土壌条件等播種時の阻害要因が軽減され、大型・高性能機械を利用した乾田直播栽培が可能となった。この体系では慣行移植栽培と比べて、収量差も少なく、省力・低コストである。

 

(1)       作業体系と使用機械(図1、表1)

2ヶ年の実証に基づき大型および高性能機械を用いた作業体系をモデル化した。

 

(2)       生育・収量(表2)

播種期は5月上旬で出芽苗立率60~80%が得られた。生育は移植に比べ成熟期で2週間程度遅くなった。

収量は、平成元年度でコシヒカリ512kg/10a(対移植99%)、キヌヒカリ523kg/10a、2年度で、それぞれ577kg/10a(対移植96%)、621kg/10aとなり、両年とも高い収量が得られた。

 

(3)       労働時間(表3)

実証による10a当り労働時間は平成元年度14.8/10a、2年度で13.3h/10aとなった。

 

2)       技術・情報の適用効果

 

大区画水田での省力・低コスト生産に活用できる。

 

3)       普及・利用上の留意点

 

(1)       対象とする圃場の土壌タイプは、現時点では細粒強グライ土及び細粒灰色低地土等で、垂直浸透の少ない土壌条件の範囲とする。

 

 

2.    具体的データ

 

 

 
 

 

表2 試験内容

試験区名

 

処理

 

0mm

人工降雨

0mm/日

1日後播種

5mm

  〃

5mm/日

10mm

10mm/日

20mm

20mm/日

30mm

30mm/日

1DAR

自然降雨

15mm/日

1日後播種

2DAR

2日後〃

3DAR

3日後〃

注1)人工降雨の処理は、5mm/hとした。

    2)自然降雨は3mm/hであった。  

 

 

表4 労働時間

 

元年

2年

参考

移植(元年)

種子予借

0.6

0.4

0.5

苗代一切

 

 

5.3

本田耕起及び整地

1.1

0.8

6.5

基肥

0.8

0.8

1.8

播種(田植)

1.0

0.9

{7.8

補植

1.0

1.0

追肥

2.1

1.6

2.7

除草

1.3

2.3

4.8

水管理

2.6

2.1

7.2

病害虫防除

1.5

0.8

1.5

収穫

0.5

0.6

7.2

乾燥調製

2.3

2.0

2.2

14.8

13.3

47.4

注1)乾直体系は、実証園における結果である。  

   2)移植体系は、福井県農林水産統計年報による。

表3 生育経過

年度

試験区

播種

(月日)

出芽始

(月日)

苗立数

(本/㎡)

苗立率

(%)

成熟期

精玄

米重

(kg/a)

幼穂

形成期

(月日)

出穂期

(月日)

成熟期

(月日)

倒伏

程度

稈長

(cm)

穂長

(cm)

穂数

(本/㎡)

元年

乾直コシヒカリ

5/9

5/18

127

79

85

18.4

354

51

7/29

8/18

9/30

1.9

乾直キヌヒカリ

5/9

5/18

110

71

76

17.7

346

53

7/30

8/17

10/1

0

移植コシヒカリ

4/1

93

17.7

433

52

7/17

6/6

9/18

3.2

2年

乾直コシヒカリ

5/1

5/14

76

54

96

20.9

357

57.7

7/23

8/12

9/27

3.0

乾直キヌヒカリ

5/1

5/14

103

74

78

19.5

332

62.1

7/21

8/10

9/25

1.0

移植コシヒカリ

4/1

86

18.9

429

59.8

7/7

7/28

9/5

4.0

 

 

 

3.    その他特記事項

研究期間 :平成元年~2年      予算区分:地域水田農業

研究課題名:大型機械による無湛水復帰田における水稲直播栽培法

研究担当者名:北倉芳忠、岩泉俊雄、朝日泰蔵、森川峰幸、田中英典、坂野良治、岩田忠寿

 

普及に移す技術

 

分類 A  

契機 研

部門 水稲

新技術・情報名

簡易暗渠の自作とその洗浄効果

実施場所

福井県農業試験場

 

1.    成果の内容

 

1)       技術・情報の内容及び特徴

水田の汎用化においては、暗渠等が排水機能を十分備えている必要がある。しかし、暗渠の施工方法、施工後の経過年数、土壌条件等により、排水機能の低下がしばしば認められ、機能回復の方策が強く求められている。ここでは、自作可能で、廉価な暗渠クリーナーを開発した。

 構造

(1)       簡易暗渠クリーナーの構造を図1に示す。揚水チューブ、ポンプ、送水チューブ等は全て市販製品である。ホースリール、ノズルは廉価に自作できる。送水チューブは適度の弾力性を持つテレチューブ(電話ケーブル用)を用いた(図1)。

(2)       ノズルの形状は、一般に使用されている市販品に対し、図示したように先端がまるく、且つ、前方噴射孔を有する。材質は、入手の容易な塩ビ管とエンドキャップで、接着や穴開け等の加工後、ホースの先端に装置する(図2)。

 

 能力・性能

(1)       ノズルは、先端から水を噴射する機能を有するため、詰まった部分をほくしながらホースを進めることができる(図2)。

(2)       ポンプの能力による噴射水圧及び各部の耐圧性からみて、ノズルの開孔総面積はギアポンプ(3/4インチ)用で0.5~0.7c㎡、ハンドポンプ用で0.3~0.5c㎡が適当である。これから算出したギアポンプ用ノズルの孔径及び孔数は、前方噴射孔径4mm、逆噴射孔径2mm×16孔、ハンドポンプ用でそれぞれ2mmと2mm×8孔前後となる(図3)。

(3)       重粘土圃場で自作機と市販機の性能比較を行った。市販機に比べ自作機の性能はやや劣る程度である。また、ハンドポンプを用いた場合はギアポンプより劣り、特に暗渠の排水機能が著しく低下している場合には、洗浄に長時間を要する(図4)。

 

  以上、暗渠の立ち上がり管からの注水を行い、排水口から排水される水量から、自作機による洗浄が十分であることを確認した(図5)。

 

2)       技術。情報の連用効果

 

(1)       入手し易い材料を使用し、廉価で軽量・小型クリーナーなので、農家の自作が十分可能である。

(2)       送水ホースに目盛をつけておくことで、暗渠管のはずれ部等の補修位置が推定できる。

(3)       小型・軽量なので、市販機の入りにくい地区での作業ができる。

 

  3)普及・利用上の留意点

 

(1)       ハンドポンプを使用する場合、洗浄能力が劣るので、詰まり程度のかるい暗渠(施工後経過年数の少ない暗渠)に適用する。

(2)       噴射洗浄後は揚水ポンプで暗渠の立上り管から注水を行って、管内に残った土塊、ヘドロ等を排出して洗浄効果を高めること。

 

2. 具体的データ(図・表)

 

 

3.その他特記事項

 

 1)研究年次   昭和63年~平成2年

 2)共同研究   田中徹雄(鯖江市舟枝町)

 3)参考資料   農文協 水田農業確立シリーズIII「技術指導の手引き」

 

普及に移す技術

 

分類 A  

契機 研

部門 水稲

技術名

緩効性肥料による2回施肥体系

実施場所

福井県農業試験場

 

1 成果の内容

 

 1)技術の内容

 

  環境にやさしい低コスト施肥の一環として、緩効性肥料を利用したコシヒカリの2回施肥体系を確立した。

 

 (1)基肥はコシヒカリの窒素吸収量が幼穂形成期までに5kg/10aを越えると倒伏しやすくなり、また穂肥は食味と関連が深いことから、図-1に示したような溶出タイプの緩効性肥料がよい。

 (2)地力的な窒素吸収を示すことから、緩効区の収量は気象条件にも大きな影響を受けず1~7%の増収を示し、玄米中の窒素濃度も高まることが少ない。

 (3)1回当たり施肥量は多量になるが、窒素の溶出が緩やかであるため溶脱が少なく、環境にやさしい施肥法である。

 (4)乾田直播栽培における施肥体系としても有効である。

 (5)施肥例(コシヒカリ)

土壌タイプ

基肥

穂肥

緩効性肥料

強グライ土

3.5~4.0

6.0

基肥 セラコートCK-M・60日タイプ(14-14-14)

   LPコート50日タイプ(N40)

グライ土

4.0~4.5

6.0

灰色低地土

4.5~5.0

6.0

穂肥 セラコートCK-S・40日タイプ(14-5-14)

    ※側条施肥では、1~2割減肥する。

 (6)緩効性肥料のタイプは、基肥用は50~60日タイプ(緩効性N:54%)、穂肥用は40日タイプ(緩効性N:39%)を選定する。

 

 2)技術の連用効果

 

  (1)大規模経営農家や、生産組織のおいては、作業の効率性が求められるので、特に有効である。

  (2)田面水への窒素溶出が少ないので、河川の湖沼等の水質に対する影響が小さく、環境保全の面からも有望な施肥体系である。

 

 3)適用範囲   県内一円の稲作

 

 4)普及指導上の留意点

 

  (1) 緩効性肥料は地温により溶出が遅れる場合があるので、初期低温のところでは40日タイプを基肥に用いるとよい。

  (2) 品種により基肥量を考慮する。

 

 

2 具体的データ(図表)

表-1 収量・収量構成要素および倒伏程度

施肥体系

年度

玄米重

(kg/a)

(%)

穂数

(本/㎡)

一穂籾数

(粒)

総籾数

(100粒/㎡)

登塾歩合

(%)

千粒重

(g)

倒伏

程度

移植

標準

S.62

62.6

100

438

74.3

325

85.5

22.5

2.3

S.63

62.0

100

406

72.8

21.0

4.4

H.1

58.5

100

424

87.4

379

72.4

21.9

2.5

H.2

57.2

100

385

84.9

327

79.8

22.0

3.0

平均

60.1

100

416

82.2

357

77.6

21.9

3.1

緩効

S.62

65.5

105

400

80.0

320

86.0

22.6

2.2

S.63

62.8

101

418

71.2

21.1

4.7

H.1

58.9

101

393

86.5

340

78.7

22.1

3.5

H.2

61.0

107

375

83.1

312

89.5

22.0

3.0

平均

62.1

103

389

83.2

348

81.4

22.0

3.4

乾田直播

標準

H.2

58.7

100

333

87.9

293

84.2

23.8

3.5

緩効

H.2

58.7

100

353

86.6

306

80.6

23.8

3.5

     移植・・・標準 3.0‐1.0‐2.0‐2.0            緩効 4.0‐6.0

     乾直・・・標準 1.5‐2.0‐1.5‐2.0‐2.0                            緩効 5.0‐6.0

図-1 緩効性肥料の窒素溶出特性                図-2 田面水のNH4-N濃度

                   (水田状態)

表-2 玄米の品質             表-3 経済性          (円/10a)

施肥法

T‐N

(%)

Mg/K

(eq/eq)

Mg/K・N

(eq/eq・%)

 

 

標準施肥

緩効性肥料

2回施肥

経済効果

標準施肥

1.33

1.93

1.45

 

増収効果

0

6,660

6,660

緩効施肥

1.34

2.01

1.50

 

肥料費

5,097

7,687

△2,590

 

 

 

 

 

施肥労働費

3,715

1,742

1,973

                 (注) 増収効果:3%

                    施肥労働(手撒き) 緩効性肥料2回施肥:1.5hr/10a

                             標準施肥:3.2hr/10a

                    労働単価:1,161円/hr(統計情報事務所 生産費調査

                               労働単価)

 

3. その他特記事項

 1) 研究年次  昭和61年~平成2年

 2) 参考資料  福井農試 土壌肥料に関する成績書(昭61~平1) 

 

普及に移す技術

 

分類 A  

契機 研

部門 水稲

技術・情報名

改造型大豆コンバインの高性能化

実施場所

福井県農業試験場

 

1. 成果の内容

 

 1) 技術・情報の内容及び特徴

 

  大豆の刈取り同時脱穀作業体系の確立をはかるため、中古の稲用自脱型コンバインを改造した安価な大豆用コンバインを開発した。さらに同技術を発展させ民間企業との共同研究により刈取搬送部や脱穀部の改良を進めた結果、精度と能率面で著しく性能が向上した。

 

(1)       性能向上のための主な改良点(表1)

穀粒損失の減少と汚粒発生の軽減及び処理量の増加のために、刈取搬送部と脱穀部を改良した。

 

(2)       作業精度(図1、2、表2、3)

全穀粒損失は、2.7%~7.8%と改良前の4.8%~18.1%に比べて大巾に減少した。

内訳は、裂莢粒の減少が著しく、これは主に地際近くまで低くできる刈取方式と大豆の切断部に近い下方を挟持する搬送方式によるものである。

また、汚粒の発生はほとんどなく、コンバインの刈取りによる品質の低下もみられない。これは、低く刈取っても土砂を持ち込まない搬送方式と穀粒と茎等との持ち回りによる摩擦がほとんどない脱穀方式によるものである。

 

(3)       作業能率(表4)

圃場作業量は16.5a/hと改良前の6.8a/hに比べ大巾に増加した。これは、主に刈取部、脱穀部の改良により、作業速度を早くできたことと調整時間・トラブルが減少した効果による。

 

 2) 技術・情報の適用効果

 

  コストが低く、品質の低下も少ない大豆の機械化収穫が可能である。

 

 3) 適用範囲

 

  県下全域

 

 4) 普及・利用上の留意点

 

(1)       収穫は、圃場条件、作物条件を調査し、適水分条件で行う。

(2)       雑草、青立ち大豆等は予め抜き取っておく。

(3)       現在コンバインは、メーカーにより市販されている。

 

 

2. 具体的データ

 

表1 性能向上のための改良概要           表2 精度試験の主な条件

 

改良部分

改良内容

効果

刈取部

デバイダや根元掻込み

チェーン・ベルトの左右

間隔を縮小。

刈り刃方向への引込み

強化。

搬送部

刈刃位置を上方へ変更

及び搬送チェーンの刈刃

方向への延長。

大豆の挟持部の低下と

挟持力の強化。

搬送時の裂莢・落茎粒

の低減。

脱穀部

スパイラル状羽根付扱胴

からツース付回転板による

直流型に変更。

大豆の扱室内での滞留

の解消。

汚粒の軽減

機種

改良前

改良後

試験年月

作業時天候

1986.10

1988、10 1989、10  

大豆

水分

(%)

穀粒

14.6~16.7

9.5~15.1

33.3~55.6

14.7~18.7

10.5~18.6

59.2~70.6

収量(Kg/10a)

267

328

       

 

 

 

 

 

 

表3 精度試験時の汚粒発生の程度                表4 作業能率

機種

汚粒の程度1

汚れ指数1

改良前

改良後

無~少

 無

0~1

 0

   

機種

改造前

改良後

調査(年月)

天候

1986、10

1989,10

圃場面積(a)

24

10

穀粒、莢(%)

茎   (%)

20.4、15.9

 36.3

14.4、10.1

 63.0

収量(kg/10a)

345

299

刈取り条数(条)

作業速度(m/s)

圃場作業効率(%)

圃場作業量(a/h)

1

0.37

78.2

6.8

1

0.75

87.3

16.5

       

 

 

 

1)食糧事務所との協議による無、微、少、

  中、多、甚の6段階評価で、中以内は

  現在のほぼ3等以内。

2) 生研機構の汚粒表示法による。

 

 

 

 

 

 

3. その他特記事項

  研究期間  :昭和63年~平成2年   予算区分:地域水田農業

  研究課題名 :水稲用コンバインの改造による大豆収穫の実証

  研究担当者名:北倉 芳忠、林 恒夫、岩田 忠寿、杉原収

 

普及に移す技術

 

分類 B  

契機 研

部門 農業経営 

技術名

大規模水田作経営における3年5作体系の経営評価

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

1) 技術の内容および特徴

   転作面積の拡大する基調に対応し、生産性の高い水田輪作農法を構築することは、緊急の課題である。本情報は、その萌芽形態として一部の大規模水田作経営に取り込まれている3年5作体系(水稲-大麦-大豆-大麦-大豆)に着目し、従来の2年3作体系と比較しながら、この3年5作体系の成立条件を提示する。さらに、同体系について経営評価を行う。

(1)       作業体系からみた成立条件--転作1年目の大麦-大豆切り替え時には、強制駆動式ディスクプラウによる深耕を行う。同時に、耕耘・播種・除草作業を一日で終えるように、組作業を組成する。また、大麦は苗立率と越冬力向上を図るため条播とし、2年目大豆は晩播適応性の高い品種「タチナガハ」を導入する(図1)。

(2)       経営的成立条件--転作不適地の回避など、転作圃場を選択的に設定しうる集団的土地利用の確立、あるいは営農主体に農地集積が進み、転作圃場の選択的配置が容易であることが養成される(図2)。また、作付切り替え時の組作業を支えるために、雇用労働力を安定的に確保する。

(3)       経営評価(1)--転作のローテーションに組み込まれる圃場を適地に限定でき、さらに、大豆跡水稲作付面積が縮少することから、倒伏しやすいコシヒカリ等の作付率が大きくなる。さらに畑地化が促進され、転作2年目の圃場作業効率が高まるとともに、排水溝が不必要になり、圃場利用率も向上する。

(4)       経営評価(2)--福井県清水町の事例では、単年度の10a当たり所得は4.2万円となる(表1)。

   また、図1体系により3年5作体系を6ha導入する事ができ、その所得は平成元年ベースで250万円強に達し、複合部門となりうる。さらに、この3年5作体系を組み込んだ集団転作は、転作が2年間続くことから水田自体の流動化を促進させ、担い手の経営規模拡大につながる可能性が高い。

 

2) 技術の適用効果

  大規模経営の転作部門の導入方策として有効である

 

3) 適用範囲

  福井平坦地域

 

4) 普及指導上の留意点

  農地流動化が比較的進展しており、かつ集団転作を可能とする素地が認められる地区において適用効果が高い。

 

2.    具体的データ

 

水稲

 

オペレータ

補助者

・トレンチャーで溝掘り

 

2名※組作業

 

2名

大麦

・トラクター耕耘

・播種同時施肥機(8連条播)(10月第4半旬)

・コンバイン収穫(6月第1半旬)

 

 

 

 

1名

 

1~2名

 

大豆

・強制駆動式ディスクプラウ(6連)による深耕

・トラクター耕耘

・播種同時施肥機(4連、溝無し)(6月第2半旬)

・ブームスプレヤーで除草剤散布(6m幅)

 

・ロータリーカルチによる中耕培土

 

 

 

3名※組作業

 

 

1~2名

 

2名

大麦

・コンバイン収穫(10月第4半旬)

・耕耘。播種(溝掘りは不要)(10月第5半旬)

 他は1年目と同様

1名

2名

2名※組作業

2名

大豆

・耕耘・播種(強制駆動式ディスクプラウは使用しない)

 他は1年目と同様

 ただし収穫は10月第5半旬

2名※組作業

2名

 

 

水稲

 

 

 

 

図1 3年5作機械化作業体系

麦+豆

 

 

 

 

麦+豆

 

水稲(転作不適地)

 

水稲(転作不適地)

n年

 

n+1年

 

麦+豆

 

 

 

 

 

麦+豆

 

麦+豆

水稲(転作不適地)

 

水稲(転作不適地)

n+3年

 

 

n+2年

 

                          

 

 

                         表1 3年5作体系の投下労働時

単収・所得水準

        

 

投下労働

単収

所得

 

時間/10a

Kg/10a

万円・10a

水稲

大麦

大豆

大麦

大豆

29.0

6.3

15.9

5.2

15.1

 

353

271

283

242

 

2.3

2.7

1.6

1.9

 8.1

 

5.0

 

3.5

 

 

 

 

 

 

図2 3年5作体系圃場モデル図

 

                           

                          注:福井県清水町における事例の昭和

                            61年~平成元年の平均値である。

 

3. その他特記事項

 1)研究年次 昭和63年度~平成2年

 2)参考資料 なし

 

普及に移す技術

 

分類 A

契機 研

部門 野菜

技術名

ラッキョウのウイルスフリー苗の育成増殖技術

実施場所

福井県農業試験場

1. 成果の内容

 1) 技術の内容及び特徴

  本県特産のラッキョウは長年にわたる連作と分球繁殖によって、母球のウイルス罹病による収量の低下が著しいため、ウイルスフリー球の安定的な供給が強く求められている。本技術はウイルスフリー球の作出と大量増殖技術を確立したものである(図1)。

 (1) ウイルスフリー球の作出

   無菌的に0.3~0.4mmの茎頂部位を摘出し、BA2mg/ℓとNAA0.2mg/ℓを添加したMS寒天培地(ショ糖3%、寒天0.8%、PH5.8)で培養、多芽体形成が促進された。得られた多芽体を2~4分割し、同一培地に4回程度継代培養して増殖を促した後、発生したシュートをNAA0.02mg/ℓ添加のMS寒天培地(ショ糖3%、寒天0.8%、PH5.8)に置床して、約50日で発根を経て球形成に至った(表1)。培養条件は、照度2,000Lux、16時間日長、25℃、培養期間は初代培養が50日、継代培養を20日とした。

 

 (2) 大量増殖

   馴化後、隔離栽培、増殖させたウイルスフリー球を7月に収穫、乾燥後0℃で貯蔵しておき、順次取り出して球内の幼花芽をBA2mg/ℓとNAA0.2mg/ℓ添加のMS液体培地(ショ糖3%、PH5.8)で回転培養し、MS寒天培地による継代培養を組み合わせることで、約110日で800倍にまで増殖させることが可能となった(表2)。

   貯蔵可能期間は翌年2月までであった。

 

 (3) 再分化植物

   得られた個体のうち、葉緑素突然変異とみられる葉の黄化株の発生率は2~3%であった。現地圃場における栽培試験の結果は、植付け1年後の調査(2年子)で20~40%増収し、ウイルスの再汚染率は0~6.6%であった(表1・表3)。

 

 2) 技術の適用効果

 

 (1) ウイルスフリー球を短期間で効率的に産地に供給できる。

 (2) 0℃で貯蔵しておけば、長時間にわたって培養作業が可能である(収穫後、約7ヵ月間の貯蔵が可能)。

 

 3) 適用範囲

 

   ラッキョウウイルスフリー苗供給施設

 

 4) 普及指導上の留意点

 

 (1) 昨年当農試で開発された簡易エライザ法などの手法を用いて、幼花芽培養に供するラッキョウのウイルス検定を必ず実施しておく。

 (2) 変異株は馴化後遅れて発生するものもあるため、種球増殖のための栽培を続けながら除去する必要がある。

 (3) 馴化温度は25℃が最適であるが、10~30℃の範囲で実施すればよい。

(4) 変異の発生を助長するとみられる長期間の維代培養は避ける。
2.具体的データ(図表)

 

表1 茎頂培養における増殖数*と変異率(1988)

BA

NAA

初代

継代回数

増殖総数

変異率

(%)

(mg/ℓ)

1

2

3

4

2

0.2

2.7

2.0

2.5

2.8

3.5

132

2.6

20

0.02

2.2

2.1

3.1

2.6

2.7

100

11.1

20

0.2

2.4

2.2

3.9

3.3

5.0

340

15.2

* 置床1個体当りの増殖数

 

表2 ラッキョウの培養部位とシュート形成                                 表3 ウイルスフリー球の現地圃場における収量*

培養部位

置床数

シュート

形成率

(%)

1個体当たり

シュート形成

数*

 

栽培地

 

1株

球重

(g)

1球

(g)

分球

ウイルス

再汚染率

(%)

A

20

90

3.5

 

米納津

フリー球

65.5

6.4

10.2

0

B

24

88

3.7

 

 

罹病球

51.5

5.8

8.9

C

15

93

7.1

 

白方

フリー球

86.0

8.4

10.2

6.6

 

 

 

 

 

 

罹病球

57.5

7.3

7.9

A:葉原基2~3枚を含む茎頂の2分割

B:生長点に1mm角の底盤部をつけて摘出

C:幼花芽

*:シュート発生総数/置床個体

 

* 1穴2球植えで、植付け1年後に収穫

 

図1 ラッキョウのウイルスフリー球大量増殖法

 

 

3.その他特記事項

 

 1)研究年次         昭和60年~平成2年

 2)参考資料         福井農試 野菜花き試験成績書                   昭61 昭62 昭63 平1

                                     福井農試 バイテク試験成績書                   平2

普及に移す技術

 

分類 A

契機 研

部門 野菜

技術名

施設野菜におけるロボットスプレーカを利用した薬剤散布効果

実施場所

福井県農業試験場

 

1.              成果の内容

 

1) 技術の内容および特徴

施設野菜においては、栽培期間中に行う薬剤防除回数が甚だ多く、薬剤散布作業者の健康に及ぼす影響が憂慮される。このため各種の人手を介さない薬剤散布法が開発、利用されているが、このひとつとして近年開発されたロボットスプレーカの薬剤付着程度、散布効果などについて検討したところ、十分に実用性のあることが立証された。

(1) 散布作業者への薬剤付着:作業者の衣服に調査用紙を張り付け、作業終了後回収して薬剤付着量程度調査を行うと、ロボットスプレーカによる防除では散布ノズルを上下に動かしながら散布する方法(以下動力噴霧法と略)に比べ全体的に人体への薬剤付着程度が低かった。部位別では頭部、上半身背面、下半身への薬剤付着程度が低く、上半身前面でほぼ同等、手の甲でやや多かった(表-1)。

(2) 作物への薬剤付着:1うね2条で栽培されているトマトでは、うね中央位置ではうね端に比べ、両散布方法ともに葉の裏側および茎への薬剤付着程度は劣った。特に葉裏面での薬剤付着程度の低下は著しかった。また、ロボットスプレーカによる防除方法は、動力噴霧法に比べて葉の裏面の付着程度は優れていたが、茎の付着程度はやや劣った(図-2)

(3) 防除効果:トマトの灰色かび病に対し、ロブラ―ル水和剤を散布後7日目の新たな病葉数、病花数の発生は、ロボットスプレーカ、動力噴霧法ともほぼ同時であった(表-2)。

(4) 作業能率:動力噴霧法では作業に2人を要するが、ロボットスプレーカによる防除方法ではホースを自動的に巻戻しながら走行するので作業員は1人でよい。時間当りの作業量はロボットスプレーカによる防除は動力噴霧法と比較してややすくなかった(表-3)。

 

2) 技術の適用効果

 施設栽培における農薬散布を、安全かつ効率的に行うことが可能である。

 

3) 適用範囲

 施設野菜類の栽培農家

 

4) 普及利用上の留意点

 (1) ロボットスプレーカの散布開始および終了時に作業者に薬剤が付着しやすい点に留意する。

 (2) 充電器が必要。

 (3) うね間は平らにしておく。

 

2.具体的データ

 

表-1 薬剤散布による薬液の付着程度(人体)a

 

頭部

上半身(全面)

 

頭頂

マスク

右肩

左肩

右胸

左胸

右腹

左腹

右肘

左肘

ロボットスプレーカ

B1

A5

C1

C3

C3

C1

A4

動力散布

C6

D1

D3

D5

D2

C2

C3

D2

C5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手の甲

上半身(背面)

下半身

注a)

液剤粒径区分:A(微粒)ーD(粗粒)、指数:1(微量)-8(多量)

散布日:6月26日、供試薬剤:ロブラ―ル水1250倍・アディオン乳2,000倍

散布量:125㍑

対象作物:トマト、定植日:3月20日、収穫開始日:5月16日

収穫終了日:7月23日

動力噴霧機の型式:丸山MS153

ロボットスプレーカの型式:共立ACS-61、ノズル高30、60、90、120cm

動力散布法で使用するノズルの型式:広角スズラン2頭口、ノズル高、中心117cm

 

 

右手甲

左手甲

右背

左背

右膝

左膝

ロボットスプレーカ

A5

C6

A3

動力散布

D2

D2

D3

A5

B7

 

 

 

 

 

 

 

表―2 灰色かび病の防除効果  (25株当り)

 

散布前b)

散布7日後c)

防除効率  (%)

100-(c/b*100)

 

発病葉数

発病花数

新たに発生

した病葉数

新たに発生

した病花数

ロボットスプレーカ

12

5

6

1

50

80

動力散布

15

2

4

0

73

100

注)散布日:6月26日、供試薬剤:ロブラール水1250倍・アディオン乳2000倍、散布量:125㍑

対象作物:トマト、定植日:3月20日、収穫開始日:5月16日、収穫終了日:7月23日

動力噴霧機の形式:丸山MS153

動力散布のノズル形式:広角スズラン2頭口

表―3作業能率

 

ロボットスプレーカ

動力噴霧

作業人員

1人

2人

作業速度

0.4a/sec

0.6a/sec

総作業時間b)

18’42”

14’39”

 散布作業

8`02”

5`25”

 移動・旋回

1`59”

1`44”

 薬剤割合

4`54”

4`54”

その他

3`47”

2`34”

注a)

散布日:10月29日、供試薬剤:ダコニール1000、

 散布量:ロボットスプレーカ280㍑/10a

  動力噴霧240㍑/10a

対象作物:トマト、定植日:8月1日、

動力噴霧機の型式:ユニスプレーCSE530 K

動力散布法で使用するノズルの型式:新広角スズラン4頭口

  b)2.5aあたり

 

3.その他特記事項

 1)研究年次           平成2年

 2)参考資料           なし

 

抑制キュウリの苗床摘心

による2本仕立て栽培法

 

福井県園芸試験場

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

  抑制キュウリは育苗時期が高温のため、軟弱徒長となり、苗質が低下しやすい。

  また、収穫期間が他作型より短いために収量が伸び悩んでいる。この対策として苗床摘芯による2本仕立てにより苗床での軟弱徒長回避と本圃の面積当たり蔓数増加による収量向上を図った。

 

 (1) 第1回摘芯は本葉2葉展開時に2葉を残して摘心する。発生した腋芽は頂芽のみ強勢に伸びるため、さらに2葉展開時に1葉に摘芯する。これにより生育の揃った蔓が2本以上確保でき、その後、2本に摘芽する。 

 

 (2) 育苗日数は40~50日とする。

 

 (3) 株間は慣行と同じ30cmとする。

 

 2) 技術・情報の適用効果

  

  9、10月収量は慣行比105~120%と向上する。

  苗床、本圃初期の乾燥による萎凋程度が軽く、活着が良い。

 

 3) 普及・利用上の留意点

 

  (1) 品種は主枝節成性の高い「れんせい」等に適用する。

 

  (2) 生育の揃った2本の蔓を確保するため、苗床では液肥施用などで生育を促進する。

 

  (3) 着果数が多いため、樹勢の弱りから果実品質低下が発生しやすい。このため、基肥を増施するとともに追肥は生育をみて回数を多く、早めに施用する。

 

2.具体的データ(図表)

 

 

図1.摘心法

 

 

表1.育苗日数と品番、仕立て本数(平成元年)

は種期

品種

仕立て法

株間

(cm)

定植時

草丈

(cm)

9.10月

収量

(kg/a)

同左比

(%)

時期別収穫割合(%)

9月

下旬

10月上旬

10月中旬

10月下旬

7月13日

南極

2号

2本仕立て

30

16.2

366

109

19

20

25

36

3本仕立て

45

297

88

21

18

21

40

れん

せい

2本仕立て

30

10.8

399

119

24

15

24

37

3本仕立て

45

316

94

22

13

27

39

7月24日

南極

2号

慣行

30

16.3

336

100

15

19

25

41

2本仕立て

30

9.8

353

105

13

14

28

45

3本仕立て

45

296

88

11

10

25

54

れん

せい

慣行

30

13.6

305

91

9

25

29

38

2本仕立て

30

7.0

353

105

3

9

30

57

3本仕立て

45

296

88

2

12

30

57

南極

2号

主枝+

側枝1本

30

13.6

399

101

6

23

28

43

45

296

88

12

20

29

39

 定植期は8月28日。接木方法は呼び接ぎで、台木品種は「輝虎」。摘芯は本葉4葉展開時に3葉とした。(定植時に側枝は未展葉であった。)

 

表2.育苗日数、摘芯法と苗質(平成2年度)

育苗

日数

摘心

回数

蔓の

種別

蔓長

(cm)

蔓の

発生率

(%)

10株当たり乾物重(g)

備考

50日

1回

最長

112.0

100

31.0

24.7

6.3

 

2番目

 

 

 

 

 

2回

最長

55.3

100

29.7

18.0

7.3

第2回摘心は最長蔓4葉

展開時に3葉に摘芯

2番目

24.0

100

 

 

 

40日

1回

最長

94.4

100

28.0

16.0

6.5

 

2番目

 

 

 

 

 

2回

最長

42.0

100

29.0

19.0

9.0

第2回摘心は最長蔓3葉展開時に2葉に摘芯

2番目

18.5

100

 

 

 

30日

1回

最長

58.0

100

18.3

9.7

3.3

 

2番目

 

 

 

 

 

2回

最長

34.9

100

17.3

6.3

3.7

第2回摘心は最長蔓2葉展開時に1葉に摘芯

2番目

19.8

100

 

 

 

 

 

75.8

100

21.0

12.0

2.7

 

は種期は7月11日。接木法は呼び接ぎで、穂木の種類は「れんせい」、台木品種は「スーバー雲竜」。第1回摘芯は本葉2葉展開時に2葉とした。8月11日調査

 

3.その他の特記事項

研究期間 :平成元年~2年                                              予算区分:県単

研究課題名:抑制キュウリの苗床適芯多枝仕立て栽培

 

半促成トマトの側枝花房利用栽培

 

福井県園芸試験場

 

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

 半促成トマトの主流品種である「桃太郎」は本圃活着後の吸肥力が強く、草ボケしやすいため1~4段花房で着果不良となりやすい。そこで肥沃条件下で側枝花房を利用した収量の向上を図る。

 

(1) 1段花房直下から発生する強勢な側枝を残す。この側枝の花房1段が着果後、花房の上1葉を残して摘芯する。

 

(2) 側枝は花房の重さにより自然に下垂するため、連続2段摘芯栽培のように捻枝作業の必要がない。

 

(3) 側枝花房の収穫時期はほぼ3段花房と同時期である。

 

 

    2) 技術・情報の適用効果

 

      肥沃条件下であって着果数が増え、増収する。また、時期別収穫量の増減が少なくなる。

 

 

    3) 普及・利用上の留意点

 

    (1) 草勢が強くなると予想される場合に適用する。適用の基準は慣行整枝では草ボケし、果実収穫始期に1段花房直下の茎径が1.5~2cm程度になると考えられる圃場条件である。

    

    (2) 株元がよく繁茂するので風通しが悪くなり病害が発生しやすい環境条件になるので予防的な防除を心掛ける。

 

2.具体的データ

 

図1.整 枝 法

 

表1.平成元年度の試験成績

 

 

花房段位

a当り収量

 

 

1段

2段

3段

4段

5段

側枝

慣行区

1株着果数(個)

3.6

2.1

2.8

2.1

2.4

13.8

1,104kg

平均1果重(g)

198

215

195

188

227

(株平均1果重196g)

収穫時期

6月

6月

6月末

7月

7月

 

 

 

上中旬

中下旬

7月始

上旬

中旬

 

 

 

側枝

利用区

1株着果数(個)

3.4

3.4

2.4

1.3

1.4

3.6

15.6

1,485kg

平均1果重(g)

211

261

204

221

322

203

(株平均1果重228g)

収穫時期

6月

6月

6月末

7月

7月

6月末

 

 

上中旬

中下旬

7月始

上旬

中旬

7月上旬

 

 

 定植期は3月15日。接木法は挿し接ぎで、台木は青枯病抵抗性台木「LS89」を使用。

栽植法は畦巾1.6m×株間30cmの2条植(417株/a)。厩肥約1t/10aを溝施用し、肥妖条件を設定した。その他は耕種基準によった。1段花房直下の茎径は1.5cmであった。

 

表2.平成2年度の試験成績

 

 

 

花房段位

a当り収量

 

 

1~2段

3段

4段

5段

側枝1

側枝2

慣行区

1株着果数(個)

6.0

2.2

3.6

3.0

14.8

853kg

平均1果重(g)

174

185

168

225

(株平均1果重184g)

側枝

1本

利用区

1株着果数(個)

7.9

3.6

2.4

4.0

2.3

20.3

1,242kg

平均1果重(g)

192

201

219

203

175

(株平均1果重197g)

側枝

2本

利用区

1株着果数(個)

8.5

3.2

4.2

3.6

2.2

2.6

24.4

1,390kg

平均1果重(g)

194

286

229

312

70

99

(株平均1果重184g)

  定植期は3月23日。接木法は挿し接ぎで、台木は青枯病抵抗性台木「LS89」を使用。

栽植法は畦巾1.6m×株間20cmの1条植(313株/a)とし、2条振り分け誘引した。厩肥約

2t/10a以上を全面施用し、肥妖条件を設定し、施肥量は耕種基準によった。草勢過多に

より、不要側枝除去は4月下旬に遅らせ、草勢をやや弱らせた。1段花房直下の茎径は2cm

であった。

 

3.その他の特記事項

研究期間 :平成元年~2年            予算区分:県単

研究課題名:半促成トマトの側枝花房利用栽培

 

普及に移す技術

 

分類 A

契機 研

部門 花き

技術名

6.7月切りトルコギキョウ人工光下挿し芽増殖法

実施場所

福井県農業試験場

 

2.              成果の内容

 

1) 技術・情報の内容及び特徴

 

  冬期間が寡日照な地域でも、既存の納屋等で人工的な環境条件を設定することにより、種子繁殖に比べ、短期間で良質の苗が均一に量産化できるトルコキキョウの挿し芽繁殖法を可能にした。

 

(1) 挿し芽繁殖の好適環境は、照度:3,000luxから6,000lux、照射時間:12時間、温度:20℃が妥当である。(表1~2)

(2) 挿し芽用土は、パーライト単用かパーライト、クンタン等量混合したものを、又、挿し穂の大きさは、発根し易い展開葉数2~3対で0.8g以上の充実した穂を用いる。(表3~4)

(3) 挿し穂の冷蔵は短期間(40日以内)で10℃、長期間(60日)で0℃でよいことが明らかになり、この挿し穂冷蔵の利用により、挿し穂の大量確保が可能になった。なお、秋採穂のものは発根率が低いため、20日間の挿し穂冷蔵をする必要があった。(表5~6)

(4) 本技術による挿し芽1本当たりの経費は、挿し芽密度1㎡当たり1,250本で、挿し芽期間4週間、照度6,000lux、光の照射時間12時間とし、年間6回転で試算すると、挿し芽1本当たりの減価償却費は1.76円、電気料金は2.89円で合計4.65円である。(表7)

 

2) 技術の適用効果   トルコキギョウの育苗技術の平準化と省力化が可能になる。

 

3) 適用範囲      県下一円

 

4) 普及指導上の留意点

(1) 湿度管理は発根初期まで、挿し芽箱の上部をポリエチレンフイルム(0.03mm)で被覆して100%に保ち、その後はポリエチレンフイルムに5%(被覆表面積当たり)の穴を空け換気する。

(2) 用土が乾いた場合は期間中1~2回スミレックス2,000倍液をかん注する。

(3) 挿し穂の調整は挿し芽基部を1~2cm切り戻してスミレックス1,500倍液に1~2分浸漬してから水上げ後に4×2cm間隔で挿し芽する。

(4) 発根促進剤にはオキシベロン0.5%粉剤を切口粉衣する。

(5) 挿し穂は冷蔵前に灰色カビ病予防のため、スミレックス1,500倍液に浸漬後、半日間陰干しして、ポリ袋に密閉して入庫する。

(6) 採穂用親株は必要な株数(株当たり10~20本採穂可能)を無加温ハウスに植え付け保管しておく、挿し穂は切り花収穫後、株元から伸びてくる芽を利用する。

 

2.具体的データ (図表)

 

表1 照度の違いが発根に及ぼす影響

処理区

発根程度(%)

根数

最大根

長(mm)

 

未発根

対照

発根せず

 

 

 

 

 

1,500lux

10

25

45

20

11.4

25

3,000lux

5

0

25

70

21.9

61

6,000lux

5

15

30

50

16.0

43

表7挿し芽室の施設費と電気料金

1.挿し芽室(10㎡)の施設費

 

台数

(台)

金額

(千円)

耐用年

数(年)

償却費

(千円)

冷房機

1

220

6

36.7

4

80

15

5.3

蛍光灯

60

150

4

37.5

農電サーモ他

68

5.5

12.3

断熱資材他

 

400

10

40.0

工事費

 

104

 

10.4

 

1,002

 

142.2

償却費 142,200÷(13,500×6回転)=1.76円

挿し芽苗1本当たりの減価償却費 1.76

 

2.挿し芽室の電気料金(6ヵ月分)

電気料金234,426円÷(13,500×6回転)=2.89円

挿し芽苗1本当りの電気料金 2.89円

 

 

 

 

 

 

 

対照:育苗ハウスで50%遮光。 品種:嵯峨の桃

挿し芽期間:2月1日~20日

表2 照度時間と温度の違いが発根に及ぼす影響

処理区

発根個

体率(%)

枯死率

(%)

未発根

率(%)

発根個体

 

根数

最大根数(mm)

15℃6時間

0

0

100

0.0

0.0

12時間

5

0

95

2.0

0.3

20℃6時間

30

20

50

7.5

6.5

12時間

80

5

15

12.6

23.3

25℃6時間

40

60

0

10.0

14.5

12時間

50

10

40

4.9

11.4

表3 挿し芽用土の違いが発根に及ぼす影響

処理区

pH

EC

(ms/cm)

発根個

体率(%)

発根程度(%)

根数

最大根

長(mm)

 

 

(1)

7.0

0.02

26.9

10.4

8.6

7.9

6.0

28

(2)

7.0

0.04

83.0

41.3

30.2

11.5

14.0

20

(3)

7.4

0.12

49.9

44.2

28.6

10.1

7.5

10

(4)

6.4

0.07

28.9

5.0

9.5

14.4

3.5

8

(5)

7.3

0.06

64.6

31.5

20.2

12.9

12.6

21

(1)バーミキュライト単用、(2)パーライト単用、(3)クンタン単用、(4)バーミキュライト、ピートモス等量混合

(5)パーライト、クンタン等量混合   挿し芽期間12月5日~26日

表4 挿し穂の葉数と重量の違いが発根に及ぼす影響

処理区

発根個

体率(%)

枯死率

(%)

未発根

率(%)

しおれ

率(%)

発根個体

 

根数

最大根数(mm)

2対0.4~0.7g

40

5

45

10

7.9

10.0

0.8以上

60

0

35

5

6.6

14.7

3対0.4~0.7g

55

0

35

10

9.0

19.1

0.8以上

60

0

25

15

6.0

9.9

挿し芽期間:11月17日~12月25日

表5 挿し穂の冷蔵期間と冷蔵温度の違いが発根に及ぼす影響

処理区

出庫後の

生存率(%)

発根個

体率(%)

枯死率

(%)

未発根

率(%)

発根個体

 

根数

最大根数(mm)

20日冷蔵0℃

100

75

0

25

10.8

11.3

10℃

100

70

0

30

7.2

17.3

40日冷蔵0℃

100

75

5

20

4.1

16.5

10℃

95

84

5

11

8.9

15.7

60日冷蔵0℃

100

70

10

20

8.7

17.9

10℃

85

76

12

12

11.8

35.8

挿し穂冷蔵は3月1日に開始し、各冷蔵処理後に25日間挿し芽

表6挿し穂冷蔵及び品種の違いが発根に及ばず影響

処理区

品種

発根個

体率(%)

枯死率

(%)

未発根

率(%)

しおれ

率(%)

発根個体

 

根数

最大根数(mm)

無処理

朝の峰

55

0

35

10

9.0

19.1

春の峰

45

10

25

20

12.2

7.8

藤の峰

55

15

30

0

4.5

6.3

嵯峨の桃

30

0

70

0

6.7

9.0

20日冷蔵

朝の峰

75

5

20

0

9.9

10.9

春の峰

80

0

20

0

12.4

14.7

藤の峰

95

5

0

0

14.6

12.8

嵯峨の桃

95

0

5

0

17.1

15.1

採穂期:11月15日

3.その他の特記事項

1)研究期間 :昭和62年~平成2年

2)参考資料:野菜花き課試験成績書

 

普及に移す技術

分類B

契機 研

部門 花き

技術名

福井県に発生したスイセンの新病害葉先枯病の病原菌と対策

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

 

1)技術・情報の内容および特徴

 福井県では、促成栽培のニホンスイセンの葉先が収穫前に枯れる症状が多発生し、切花の安定生産を阻害している。これまでは、根の生理的障害が原因とされていたが、今回、病理的側面から検討を行った結果、糸状菌による新病害であることが判明し、その薬剤防除法を明らかにした。

 

(1)       症状および発生状況:外葉の先端部が楕円形~不正形の褐色~黒褐色病斑となり、病斑部は枯死する(写真1)。県内の主産地(越前町、越廼村、河野村)で発生が認められるが、地域によって発病程度に差が見られる。普通栽培(季咲き)より促成栽培で発生が多く、生育初期から発生がみられる。特に7月中に鱗茎を植え付け、開花の早い圃場での発生が多い傾向にある。

(2)       病原菌:葉の病斑部からはPhoma属菌が高率に分離され、その生育適温は21~23℃であった。葉の有傷あるいは無傷部分に各分離菌の菌叢片を接種するとPhoma属菌に病原性が認められた(表-1)。

   また、分生子懸濁液の噴霧接種でも、葉先および葉の周縁部の褐変が認められた。

  本症状は新病害で、症状から葉先枯病と命名した。

(3)       伝染源:前年発生が多かった圃場の鱗茎の保菌率は約30%で、そのほとんどが鱗茎頂部への感染であった(表-2)。保菌鱗茎は伝染源の1つとなる。

(4)       防除:ベノミル剤、イプロジオン剤は10ppmで菌糸生育阻止率が高く(図―1)、また、ポット植えのスイセンでも、発病前のこれら薬剤の散布による防除効果が認められた(表-3)。

 

2)技術・情報の適用効果

 スイセンの葉先枯症状は、Phoma属菌による病害であることが明らかになった。薬剤防除や耕種的対策によって葉先枯病の防除ができ、スイセン切花の安定生産が図れる。

 

3)普及・利用上の留意点

(1)     無発病圃場から採取した鱗茎を用いるが、促成栽培では発病が増加するので防除を徹底する

(2)     薬剤は予防的に散布する。

 

 

2.具体的データ(図,表)

 

 

表-1 スイセンの葉からの分離菌株の病原性

分離菌

(NO.)

分離年月日

(1988)

有傷接種a

無傷接種a

1 (Phoma sp.)

12.28

+

2 (Allernaria sp)

12.28

3 (Allernaria sp)

12.28

4 (Phoma sp.)

12.28

+

9 (Phoma sp.)

11.12

+

+

10 (Phoma sp.)

11.28

+

+

11(Phoma sp.)

12.28

+

+

12(Phoma sp.)

10.26

+

+

13(Phoma sp.)

12.28

+

14(Phoma sp.)

12.28

+

+

15(Phoma sp.)

12.28

+

無処理

 

 

 

注a)             菌叢ディスクをスイセンの葉に接種した。

写真1 葉先枯病の病斑

 

 

 
 

 

表-2 スイセン鱗茎からのPhoma属菌の分離状況

圃場

供試鱗茎数

(個)

Phoma菌分離鱗茎率

(%)

鱗茎部位別分離比率(%)

頂部

側部

底盤部

A圃場

44

20.5

77.8

11.1

11.1

B圃場

49

34.7

100.0

5.9

0

平均

 

27.6

88.9

8.5

5.6

 

図-1 スイセン葉先枯病菌に対する薬剤の菌糸生育阻止率

 

 

表-3 薬剤散布によるスイセン葉先枯病防除効果(ポット栽培)a

処理

希釈倍率

菌株No.1

菌株No.12

発病葉

率(%)

病斑

数/葉

発病葉

率(%)

病斑

数/葉

ベノミル剤

2,000倍

0.6a

0.3a

9.6b

1.5bc

イプロジオン剤

1,000倍

0.8a

0.3a

14.6

1.2b

無散布

 

31.7b

1.5b

27.4c

1.7c

無接種

 

0a

0a

0a

0a

注a)表-1の分離菌番号を示す。

同一英文字間には、ダンカン新多重検定法による有意差(5%)

がないことを示す。

 

3.その他特記事項

1)研究期間       昭和63年~平成2年度

2)参考資料       本多範行・横山竜夫・川久保幸雄(1991)植物防疫45(1):17-20

 

普及に移す技術

分類B

契機 研・普

部門 花き

技術名

利久梅の枝物としての整技法

実施場所

福井県園芸試験場

 

1.成果の内容

 

1)技術の内容及び特徴

 

 

利久梅を花木枝物として利用するとき整枝法を明らかにした。

(1)       利久梅を花木主幹を1.5mとし、発生する1年枝を収穫するのが適当である。

(2)       切り枝本数は、株による差と年次による差が大きいが、3年間の平均でみると、主幹長1.5mでは40本程度であった。

(3)       主幹長1.5mの出荷可能枝本数は30本で、その内訳は、枝長1.2m以上のものが、9本、枝長1.2~0.9mのものが21本であった。

(4)       枝長を1.2mに調整後の枝の太さは最大最大12.9mm~3.6mmまであったが、枝物として適当な枝の太さは5~9mmくらいがよく、主幹長1.5mはこの太さの枝が多かった。

 

 

2)技術の適用効果

春に出荷できる花木枝物の1つとして利久梅を利用できる。

 

3)適用範囲

県内の花木枝物産地

 

4)普及指導上の留意点

(1)       開花時(4月)に、整枝を兼ねて、1年間に伸びた枝を全部収穫する。

(2)       春先に整素成分量でa当たり1kg以上を施用し、枝の伸長を図る。

(3)       1年生の徒長枝(前年生枝)は、花つきがよく、切り枝として適当な形状であるが、2年えだは、2年目に伸びた小枝が長くなるため形が悪く、出荷できない。

(4)       開花時期は年次による差が大きく、‘88年と‘89年は、4月中旬に開花が始まり、下旬に満開となった。しかし、‘90年は4月上旬に開花し始め、4月10日には満開となった。

(5)       開花日は、株によって数日の差がある。

(6)       利久梅の切り枝は、水揚げが悪い。

 

2.具体的データ(図表)

第1表 切戻前の樹の大きさ

樹高

2.7m

(3.5~2.1)

樹冠幅

1.4m

(1.8~0.9)

主幹経

4.5m

(8.5~3.1)

注1.   1987年2月26日調査

 2.8年生樹を供試した。

 

第2表 主幹の切り戻し高さが利久梅の生育・収量に及ぼす影響

主幹の

切戻高

(m)

年次

収穫前の樹の大きさ

切枝本数

(本)

出荷可能枝本数

出荷可能

枝率

(%)

樹高

(m)

樹冠幅

(m)

1.2m<

(本)

0.9m<

(本)

合計

(本)

0.5

‘88

2.3

1.2

26.8

16.0

3.5

19.5

73

 

‘89

2.2

1.7

30.5

11.0

15.3

26.3

86

 

‘90

2.3

1.5

33.3

13.8

9.5

23.3

70

 

平均

2.3

1.5

30.2

13.6

9.4

23.0

76

1.0

‘88

2.5

1.3

23.3

13.5

3.7

17.3

74

 

‘89

2.3

1.9

25.3

2.3

17.7

20.0

79

 

‘90

2.6

1.6

43.0

13.3

14.3

27.7

65

 

平均

2.5

1.6

30.5

9.7

11.9

21.7

71

1.5

‘88

2.8

1.4

34.0

12.5

14.5

27.0

79

 

‘89

2.7

1.9

34.0

3.5

25.5

29.0

85

 

‘90

2.8

1.6

53.0

11.5

24.0

35.5

67

 

平均

2.8

1.6

40.3

9.2

21.0

30.5

77

注1.   切枝本数は、枝長90cm以上のものを調査対象とした。

 2. 枝長90cm以上で、花蕾を着生した部分が50cm以上の枝を出荷可能とした。

 

第3表 利久梅の枝の品質(1990)

主幹の枝長別出荷可能枝本数

調整前枝長

花蕾着

生枝長

(cm)

枝基部経

枝長別枝基部径

切戻高

(m)

1.5m<

(本)

1.2m<

(本)

0.9m<

(本)

平均

(cm)

最大

(cm)

平均

(mm)

最大

(mm)

最小

(mm)

1.5m<

(mm)

1.2m<

(mm)

0.9m<

(mm)

0.5

4.3

9.5

9.5

125

185

73

7.9

12.9

4.4

10.3

8.2

6.5

1.0

4.0

9.3

14.3

119

160

70

7.3

10.8

4.3

9.3

8.3

6.0

1.5

2.5

9.0

24.0

113

180

69

7.1

11.0

3.6

9.2

8.3

6.4

注1.   枝の調整は、枝を1.2mで切り揃え、基部から20cm部分の葉や花蕾を摘除して行った。

 2. 枝長の分類規格は、調整前の枝の長さによった。

 3. 花蕾着生枝長および枝幹部径は、調整後の枝で調査した。

 

 

3.その他の特記事項

 1)研究年次         昭和62年~平成2年

 2)参考資料         なし

 

普及に移す技術

分類A

契機 研

部門 果樹

技術名

新規造成地ナシ園における生育・結実の実態と有機物の連用効果

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

 1)技術の内容及び特徴

  地形改造を行って新しく造成された樹園地と原地形のまま開園された樹園地とでナシ‘幸水’の生育・結実の実態調査を行った。その結果新規造成地では、幹周、平均新梢長、樹冠面積など樹の生育が明らかに劣り、着果量も少なかった。(表1)。

このような、生育、着果の相違は、地形改造を伴う樹園地造成により土壌理化学性が変化したためとみられたので、新規造成地の地力向上を目的に、もみがら牛ふんの連用試験を行った。なお土壌は中粗粒褐色森林土で、もみがら牛ふんは全面に施用し、軽く中耕した。

その結果

(1)     もみがら牛ふんの施用により、土壌のpHは高まり、腐植、T-N、交換性塩基、リン酸が増加した。もみがら牛ふん施用量2t~8tの間では腐植含量は施用量とともに増加し、8tの4年連用で4%以上に達した(表-2)。

(2)     もみがら牛ふんを8t施用した場合、樹冠面積の拡大が促進され、収量は増加した(表-3)。

 

以上のことからもみがら牛ふんの連続施用量は、10a当り2t~8tの範囲では多いほど良く、果実品質への影響、資材の確保、施用労力等、総合的に判断して8tが限度と思われる。

 

 

2) 技術の適用効果

 幼木期から連用することにより地力が向上するので、生育が促進され、樹齢に見合った収量とその長期安定化が期待される。

 

3)適用範囲

  県内全域の新規造成地ナシ園

 

4)普及指導上の留意点

(1)       有機物は完熟を施用し、未熟なものはあらかじめ果樹園の一部を利用するなどして十分腐熟させたものを施用する。

(2)       10月~11月頃、晴天が数日続き、土壌水分が低下した時期に施用する。

(3)       有機物の窒素含量、施肥量に応じて年間施肥量を減らす。

 

2.具体的データ(図表)

 

表-1 新規造成地園と原地形園におけるナシ‘幸水’

の生育、着果数比較 (1987)

樹園地

NO.

樹齢

(年)

幹周

(cm)

平均新梢長

(cm)

樹冠面積

(㎡)

着果数/樹

(個)

新規造成

1

11

45.4

60.6

25.3

254

2

11

44.8

40.4

22.0

258

3

11

50.7

93.4

25.0

362

4

11

46.0

63.8

22.1

201

5

11

38.0

51.8

20.4

270

平均

 

45.0

62.0

23.0

269

原地形

1

10

49.5

67.6

26.1

177

2

11

47.7

72.3

26.4

449

3

12

48.2

78.1

28.2

245

4

12

56.9

72.9

42.6

336

5

12

52.3

66.2

38.1

305

平均

 

50.9

71.4

32.3

302

 

表-2有機物Z)施用が土壌の化学性に及ぼす影響(4年連用後.1990)

有機物

施用量

層位

(cm)

pH

(H2O)

腐植

(%)

T-N

(%)

交換性塩基(mg/100g)

TruogP2O5

CaO

MgO

K2O

(mg/100g)

 

0~10

6.6

2.61

0.14

178

55

62

58.1

2t/10a

20~30

5.4

0.80

0.05

58

19

46

3.7

 

0~10

6.9

2.81

0.17

175

51

58

67.8

4t/10a

20~30

6.2

0.67

0.05

65

21

47

7.7

 

0~10

6.8

4.36

0.26

217

71

63

114.5

8t/10a

20~30

6.1

0.65

0.06

72

28

53

14.0

 

0~10

6.2

1.91

0.11

110

37

41

50.0

無施用

20~30

5.1

0.73

0.04

38

12

27

4.5

  Z)完熟もみがら牛ふんN含有率0.44%

 

表-3 有機物施用がナシ‘幸水’の生育および

    果実の収量、品質に及ぼす影響(1989)

有機物

施用量

樹冠面積z)

(㎡)

着果数y

収量y)

(kg)

平均果重X)

(g)

Brix

糖度x)

2t/10a

15.25

438

131.5

295

12.0

4t/10a

14.98

440

131.8

303

12.0

8t/10a

17.73

529

159.7

299

11.8

無施用

15.03

400

117.3

301

11.9

z)1989年4月 1樹当たり

y)1986(6年生)~1989(9年生)年1樹当たり累計

x)1986~1989年平均

 

 

3.その他特記事項

1)研究年次       昭60年~平成元年

2)参考資料       福井農試果樹試験成績書 昭61.昭62.昭63.平成元

 

普及に移す技術

分類A

契機 普

部門 果樹

技術名

ウメ黒星病菌の簡便な薬剤耐性検定法と福井県における薬剤耐性菌の出現と対策

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

 

 1)技術・情報の内容及び特徴

  福井県では、数年前からウメ黒星病が多発し問題化している。チャファネートメチル剤が連用されていることから、耐性菌の発生による防除効果の低下が疑われたので、黒星病菌の同剤に対する薬剤耐性検定を行った。その結果、耐性菌が高率に存在し、代替剤が交差耐性を持たないことも明らかになった。さらに、本病の場合、薬剤耐性検定と菌叢生育法で行うと、結果の判定までに長時間を要することから、迅速・簡便に行える胞子発芽法を利用した。

 

(1)     ウメ黒星病菌のチオファネートメチル剤感受性は菌叢の最小生育阻止濃度(以下MIC)が0.78、12.5、50,800ppmにピークを持つ4峰性に分かれ、感受性菌率(0.19≦ ≦3.12)は5.2%と非常に低く、弱耐性菌(6.25≦ ≦12.5ppm)率は29.2%、強耐性菌(50ppm≦)率は65.6%で、薬剤耐性菌が高率に存在していることが判明した(図-1)チオファネートメチル剤耐性菌には本剤の予防散布、治療散布ともに防除効果が劣った(表-1)。

(2)     チオファネートメチル剤耐性菌は同一系統薬剤であるベノミル剤に交差耐性を示したが、キャプタン、ポリカーバメート、無機硫黄剤の間にMICの差異はみられず、これらの薬剤には耐性を有しなかった(表-2)。

(3)     ウメ黒星菌は培地上での生育が遅く、菌叢でのMICは結果の判明までに20日以上を要する(25℃、PDA培地)。これに対し、胞子発芽法(25℃、PDA培地で、発芽管の隔膜形成阻害の有無により、それぞれ耐性なし、ありとする)でのMICは5-10日で判定が可能である。胞子発芽法におけるMICは、菌叢生育法でのMICより低い値を示したが、両者の値は比例関係にあった〔logY(胞子発芽法MIC)=0.05+0.61logX(菌叢生育法MIC) r=0.9265、図-2〕。このことから、本病の薬剤耐性は病斑上の分生胞子を薬剤添加培地に直接塗布し、胞子発芽法により迅速、簡易に検定が可能である。

2)技術・情報の適用効果

 胞子発芽法では薬剤耐性検定を簡便に行える現在耐性菌の発生している地帯では代替剤を使用すれば防除できる。また、それ以外の地帯では耐性菌の発生を防ぐために成分を異にする代替剤をと交互散布する。

 

3)普及・利用上の留意点

 胞子発芽による耐性検定では新鮮な病斑を採集し、水洗後新たに胞子形成させ、これで検定する。

 

2.具体的データ(図、表)

 

図-1 ウメ黒星病のチオファネートメチル剤に対する感受性

 

表-1 チオファネートメチル剤耐性ウメ黒星病菌に対する同剤の防除効果a

菌株

最小生育

阻止濃度

無防除

病斑数b

予防散布

治療散布

病斑数

防除価

病斑数

防除価

S-89040

0.39ppm

2.3

0.1

96

1.0

57

R-89045

12.5

1.3

3.8

0

1.6

0

R-89122

50.0

1.4

0.5

64

1.3

7

注a)トップジンM水和剤1500倍液を予防散布は接種1日前、治療散布は接種

  1日後に散布。接種60日後調査。

 b)21~30果当たり病斑数

 

表-2 チオファネートメチル剤耐性ウメ黒星病菌に対する各剤の菌糸生育阻止濃度a

各剤の濃度

(ppm)

菌株数

チオファネートメチル剤のMIC(ppm)

0.19

0.38

0.78

1.56

6.25

12.5

25

50

400

800

1600

3200

キャプタン1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10

1

 

1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

100

1

1

1

 

1

2

 

6

 

3

1

 

1000

3

2

4

1

5

7

 

14

5

1

4

5

1000<

 

 

 

 

3

2

 

 

 

 

 

 

ポリカー  1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バメート 10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

100

10

3

6

1

9

11

 

20

4

5

5

4

1000

 

 

 

 

 

 

 

 

1

 

 

1

1000<

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無機     1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

硫黄     10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

100

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1000

 

 

 

 

 

 

 

3

 

 

 

 

1000<

10

3

6

1

9

11

 

17

5

5

5

5

注a)空欄は該当する菌株のないことを示す

 

 

3.その他特記事項

 1)研究期間              平成元年~平成2年度

 2)参考資料              平成元年度病理昆虫課試験成績書

 

 

肥料成分の動向からみたウメ園の施肥改善

 

福井県園芸試験場

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

(1)     土壌中における施肥後の肥料成分の時期的な変動は、ライシメーター試験の結果によると各成分の中で窒素が最も大きく、また根の分布の多い上層部(0~15cm)での窒素の肥効時期は、施肥時期によって大きく異なり、4月や11月施用では40~50日と比較的長いのに対し、6月下旬施用では10~20日と短かった(第1図)。

(2)     土壌からの塩基類の溶脱量は石灰が最も多く、また窒素の多量施用によって塩基、特に石灰の溶脱が増大した(第1表)。

(3)     土壌の化学性と樹体の生育との関係をみると、置換性カリ(K)との関係は明らかでなかったが、置換性石灰含量(Ca)が高く、Ca/K当量比が大きいと生育は良好であった。またpHの影響も大きく、pH7で旺盛な生育を示したのに対し、pH4の生産量はきわめて小さかった(第2表)。

以上のような結果から、ウメ樹の健全な生育を図るためには

(1)       土壌中の置換性石灰含量は200mg/100g以上、置換性苦土含量は20mg/100g以上、pHは6以上に維持する。

(2)       石灰の溶脱・流亡を少なくするために、窒素の一時的な多量施用を避ける。

(3)       夏秋季の貯蔵養分蓄積期には、分施などによって窒素の肥効の持続を図る。

 

  2)技術・情報の適用効果

   土壌診断に基づいて適正な施肥改善を行うことによって、養分不足や土壌pHの不適による生育不良や生育阻害が軽減されるとともに、過剰施用や養分の溶脱・流亡が少なくなり肥料の節減が図られる。

 

  3)普及・利用上の問題点

   土壌pHを高めるために、石灰を過剰に施用すると塩基のバランスが不均衡になったり、微量要素の吸収を阻害することになるので注意する。

 

2.具体的データ(図・表)

 

第1表 年間養分溶脱量             (10a当り)

NO3―N

NH4-N

P

K

Ca

Mg

Fe

Mn

B

Cl

(kg)

(kg)

(kg)

(kg)

(kg)

(kg)

(kg)

(kg)

(g)

(kg)

褐色

森林

N多Ca/K大

5.00

0.07

0.09

4.51

20.46

4.86

0.02

0.01

0.92

3.42

N標Ca/k大

2.70

0.03

0.11

4.00

14.63

3.59

0.03

0.00

4.38

4.47

N多Ca/K少

5.72

0.04

0.12

4.90

20.83

5.07

0.03

0.00

0.66

5.87

N標Ca/k少

2.81

0.04

0.12

3.90

15.01

3.75

0.07

0.00

2.34

5.75

 

黄色

N多Ca/K大

6.32

0.04

0.01

0.66

15.78

4.61

0.00

0.00

0.06

4.43

N標Ca/k大

2.94

0.05

0.02

0.55

10.92

2.95

0.00

0.00

0.25

4.15

N多Ca/K少

6.39

0.06

0.02

0.69

15.39

3.33

0.00

0.00

0.03

5.69

N標Ca/k少

3.08

0.06

0.02

0.56

12.07

3.44

0.00

0.00

0.27

5.20

 調査期間           1988年10月から1989年9月まで

 植栽密度           30本/10a

 

第2表 樹体の生育と土壌の化学性

幹周(cm)

肥大率

(%)

新梢仲長量

土壌化学性

1988年

1989年

1989年

総新梢長

(m)

100cm以上の

新梢の本数

pH

無機期N

(mg/100g)

有機態P2O5

(mg/100g)

置換性(mg/100g)

5/20(A)

1/30(B)

10/20(C)

(B/A)

(C/A)

CaO

MgO

K2O

褐色

森林

N多Ca/K大

6.8

10.5

16.0

1.54

2.36

54.3

31

7.0

1.1

51

656

19

30

N標Ca/k大

7.2

9.5

14.2

1.32

1.97

47.2

26

7.2

1.1

58

628

20

33

N多Ca/K少

6.9

10.0

15.0

1.45

2.17

46.2

28

5.6

1.1

28

137

20

31

N標Ca/k少

6.7

8.5

12.6

1.27

1.88

28.5

14

5.5

1.0

36

126

19

38

 

黄色

N多Ca/K大

7.3

9.5

12.5

1.30

1.71

34.9

18

5.8

1.9

39

320

5

26

N標Ca/k大

6.7

8.8

12.6

1.31

1.88

39.2

14

5.7

1.0

23

266

7

26

N多Ca/K少

6.4

7.8

8.2

1.21

1.28

15.1

1

4.5

5.7

21

22

2

33

N標Ca/k少

6.6

8.1

10.7

1.23

1.62

25.8

14

4.7

1.3

19

16

5

34

 

3.その他の特記事項

 研究期間           :昭和63~平成2年                       予算区分:県単

 研究課題名       :ウメ園における主要無機成分の動向と養分吸収様式の解明

 

普及に移す技術

分類B

契機

部門 食品

技術名

大麦粉を併用した味噌用米麹の製造技術

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

 1)技術の内容および特徴

   旨味の強い味噌の製造のための製麹法を検討した結果、米粒に大麦粉をコーティングすることで米麹と比較して液化力と糖化力はやや弱いもののプロテアーゼ力価が同等の麹が製造できた。(表1)

(1)大麦粉を併用した米麹の製造法

(1)     大麦の加熱調製70%精麦を蒸煮後通風乾燥し、200メッシュ程度に粉砕する。

(2)     米は常法どおり烝したものを使用する。

(3)     原料を混合する比率の目安は米80%に対して、大麦粉20%とし種麹(もやし)の使用量は0.1%とする。

(4)     製麹は通常よりも低い温度が望ましく、25℃では40時間必要であった。

(図1)

(2)味噌の仕込みと熟成経過

(1)     味噌の仕込み法は常法どおりとする。

(2)     味噌の熟成は早く、窒素の溶解率が高まり、着色がやや早くなる。(表2)

(3)     旨味の指標となる窒素の溶解率は57%とかなり高くなる。(表2)

 

2)技術・情報の適用効果

(1)     大麦粉を併用することで旨味が強く麦の風味をもった味噌ができる。

(2)     大麦の利用用途の拡大を図ることができる。

 

3)適用範囲

 県内の味噌加工業

 

4)普及・指導上の注意点

 大麦粉の粒度が粗いと米粒への付着性が悪くなるので、150~200メッシュの粒度が必要である。

 

2.具体的データ(図表)

 

表1 味噌の試醸に用いた麹の酵素力価

 

項目

液化力

糖化力

プロアーゼ

 

(pH5.0)

(pH5.0)

(pH6.0)

(pH3.0)

大麦粉衣麹

 

306

17.3

49.1

51.1

米麹

 

413

37.2

52.6

47.5

液化力の単位は溶性澱粉液の青価、糖化力は40℃で1分間に

生成するグルコースのmg数、プロテアーゼ力価はミルクカゼイン

を基質として40℃で1分間に生成するチロシンのμg数とした。

 

 

図1 大麦粉衣麹の製麹時間と酵素力価の変化(25℃)

 

表2 仕込み後3ヶ月経過した味噌の性状

項目

色調(CIELAB)

pH

摘定酸度

水溶性

窒素

(%)

SN/TN

直糖

(%)

L*

a*

b*

I

II

大麦粉衣麹味噌

41.7

16.1

26.0

5.1

10.6

9.2

0.9

0.57

16.9

米麹味噌

45.0

15.6

26.8

5.2

9.3

8.7

0.9

0.51

16.1

 

3.その他の特記事項

 1)研究年次    昭和63年~平成4年

 2)参考資料    福井県食品加工研究所試験成績書 平成元

 

普及に移す技術

分類B

契機   研

部門 食品

技術名

降雨による刈り遅れ小麦の利用加工技術

実施場所

福井県農業試験場

 

1.成果の内容

 

 1)技術の内容および特徴

   北陸地域では、小麦の収穫期が梅雨期と重なるため、降雨による刈り遅れ小麦が生じやすい。ここでは、こうした小麦(ナンブコムギ)の、うどん、ビスケットへの加工適性を明らかにした。

 

(1)降雨による刈り遅れ小麦の性状

 硝子質が減り、粉質化した。α-アミラーゼ活性が高まったことで、アミログラムの最高粘度が下がり、でんぷんの低アミロ化(770B.U)が認められた。プルテアーゼ活性には変化はみられず、また、、蒸低下した。(表1、図1)

(2)うどん試作試験

 上記の小麦は、標準に比べ、機械製めん(水分34%)性は良かった。

手打ち(水分40%)では、食感が劣ったが、熟成時間を短くすることで改良できた。(表2、3)

(3)ビスケット試作試験

極度の低アミロ小麦(50B.U)もビスケット製造が可能であった。また、ハードビスケット製造には、グルテンを抑制し、ビスケットの変形を防止するために亜硫酸塩等が添加されるが、無添加で、厚さの薄い、変形の少ないものができた。(表4,5)

 

2)技術・情報の適用効果

  降雨により、刈り遅れの用じた小麦であっても、うどん、ビスケットへ利用できる。

 

3)適用範囲

  北陸地域の小麦粉加工業へ適用できる。

 

4)普及指導上の留意点

  本成果は、北陸地域のナンブコムギについて普及、利用する。

 

2.具体的データ (図表)

 

表1 雨ぬれ小麦の性状

 

原麦の性状

60%粉の性状

 

*千粒重

(g)

硝子率

(%)

外観

*蛋白質

(g)

*灰分

(%)

烝煮時の

ハンター白度

アミログラム

最高粘度

A

45.0

67.2

正常

7.33

0.36

58.3

950

B

47.5

0

退色

7.71

0.34

55.6

770

C

46.3

0

非常に退色

7.14

0.35

55.4

50

A:標準(出穂後50日)

B:雨ぬれ小麦(出穂後63日)

C:人工低アミロ小麦

 (Bを2時間水に浸債した のち20℃で24時間発芽させたもの)

 

(注) *水分12.5%換算

*     *吸光度/サンプル乾物量1g当り

 

表2    ゆでめん試験結果

 

機械製

*手打ち

 

硬さ

(g)

弾力性

硬さ

(g)

弾力性

A

168

0.90

190

1.00

B

148

0.98

140

0.83

B-O

193

0.98

 

 

 

 

 

 

 

(注)*手打ちにおける熟成時間

   A,B  90分

   C-0   0分

表3   ゆでめんの官能試験結果

 

市販

中力粉

機械製

手打ち

 

A

B

A

B

B-C

17.5

15.8

11.7

14.2

11.7

11.5

外観(はだ荒れ)

14

11.3

14.7

12.7

11.3

12

(かたさ)

7

7.3

8.7

7.3

4.7

7.5

食感(粘弾性)

17.5

18.3

24.2

20

14.2

22

(なめらかさ)

7

7.3

7.7

7

5.7

6

食味(匂い、味)

7

6.7

7

7

6.3

6.3

総合

70

76.7

83.3

70

46.7

72

    (注)市販中力粉を標準品として試験した

表4  ハードビスケットの

    原料配合                                                                      表5 ハードビスケットの形状

原料名

(g)

小麦粉

200

ショートニング

17.2

砂糖

45.2

食塩

2.5

炭酸アンモニウム

2.2

炭酸ナトリウム

0.6

57

 

抜型(生)

A

*A

B

C

たて(mm)

5.20

5.30

5.28

5.30

5.29

よこ(mm)

2.30

2.42

2.44

2.45

2.34

厚さ(mm)

2.00

5.39

4.70

5.30

4.51

硬さ(kg)

2.08

1.42

1.28

1.37

硬さ/厚さ

(g/mm)

385.9

302.1

241.5

303.8

(注)*A:ハイドロサルファイトトリウム

   小麦粉に対し0.01%添加したもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.その他特記事項

 

1)研究年次       昭和63年~平成2年

2)参考資料       福井県食品加工研究所試験成績書 平成2

 

 

半乾燥型粗飼料に対するアンモニア添加の

発熱および防カビ効果

 

福井県畜産試験場

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

 北陸地域における乾燥調製は不安定な気象条件に左右されやすく、降雨による品質低下や収穫ロス等安定生産には問題がある。そこで、半乾燥牧草(水分20~40%)の調製貯蔵技術の確立を図るため、発熱抑制および防カビ効果の認められるアンモニア添加量を材料草や水分条件別に明らかにした。

 (1)アンモニア処理による開封後の発熱抑制効果

カラードギニアグラス:水分30%設定の材料草に対しては、1%添加の15日処理で開封後の発熱をかなり抑制しており、2%添加では発熱はなかった(図1)。水分40%設定の材料草に対しては、15日処理でも2%添加で十分発熱を抑制した(図2)。

 ライ麦:水分30%設定の材料草に対しては、15日処理よりも30日処理の効果が高く、0.5%や1%添加でもその発熱は軽微であった(図3)。しかし、40%設定の材料草では、2%添加でも開封21日から発熱がみられた(図4)。

 (2)アンモニア処理による開封後の防カビ効果

 カラードギニアグラス:水分20%設定の材料草に対しては、0.5%添加で3ヶ月間、カビの発生はなかった。30%設定の材料草に1%添加の15日処理で開封15日には梱包断面の2割程度に白カビを認めたが、30日処理での発生は極わずかで、開封3ヶ月目まで貯蔵状態は安定していた。40%設定の材料草に対しては、15日処理でも、2%添加であれば3ヶ月間発生を抑制した(表1)。

 ライ麦:開封後の貯蔵期間が梅雨期を経過するため、カラードギニアグラスに比べ防カビ効果は悪い傾向にあり、水分20%程度の材料草でも1%添加が安全であり、(0.5%添加・15日処理の開封1ヶ月目調査で2割程度の黒カビ確認)、水分40%程度の材料草では、2%添加でも短期間利用が望ましい(30日処理の開封1ヶ月目調査で2割程度の白カビ確認)。なお、水分30%設定の材料草に対しては、1%添加は30日処理、2%添加は15日処理によって、長時間、防カビ効果が認められた(表1)。

 

2)技術・情報の適用効果

 半乾燥牧草に対する品質低下の防止により、粗飼料供給の安定化が図れる。さらに、水分に応じた添加量を注入すれば、経済的にアンモニア処理ができる。

 

3)普及・利用上の留意点

 今回のデータは小規模(タイトベール3梱包をバッグサイロ処理)であり、別の実用段階の試験では、高水分材料(46%)を用いたロールベール(芯巻き仕様)での拡散浸透が悪く、この方式での処理は、特に低水分調製や減圧梱包に努める必要がある。

 

2.具体的データ(図・表)

図-1 カラード 開封後の品温推移(設定水分30%・15日処理)                図―2カラード 開封後の品温推移(設定水分40%・15日処理)

図-3 ライ麦 開封後の品温推移(設定水分30%・30日処理) 図―4ライ麦 開封後の品温推移(設定水分4.0%・30日処理)

 

表-1アンモニア処理草の開封後のカビの発生状況

(%)

 

(%)

 

カラードギニアグラス

ライ麦

 

15日処理

30日処理

15日処理

30日処理

 

貯蔵期間1

貯蔵期間2

貯蔵期間3

貯蔵期間4

 

 

 

15日

30日

90日

15日

30日

90日

15日

30日

90日

15日

30日

90日

40

カラード:42.0**

ライ麦:36.8**

1

白カビ

2.0

3.0

5.0

1.0

3.0

5.0

3.5

4.0

5.0

1.5

1.5

1.0*

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

0

0.5

0

0

0

0

2

白カビ

0

0

0.5

0

0

0.5

0

0

0.5

0

1.0

0.5

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

30

カラード:34.8**

ライ麦:25.8**

0.5

白カビ

1.5*

2.0*

2.5*

1.5

2.0

2.0*

0

2

0

0

0

0

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

1.0

2.0

2.5*

1.0*

1.5*

1.0*

1

白カビ

1.0

0.5

1.0*

0.5

0.5

0.5

0

0

0

0

0.5

0

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

0.5

1.0

0.5*

0

0

0

2

白カビ

0

0

0

0

0

0

0

0

0.5

0

0

0

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

20

カラード:19.2**

ライ麦:18.1**

0.5

白カビ

0

0

0

0

0

0

0

0

0

-

-

-

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

0

1.0

0.5

-

-

-

1

白カビ

0

0

0

0

0

0

0

0

0

-

-

-

 

黒カビ

0

0

0

0

0

0

0

0

0

-

-

-

注) カビ発生程度    :ほぼ全面に発生-5 8割程度発生-4、6割程度発生-3、4割程度発生-2、2割程度発生-1

                                      発生無-0とした(調査はタイトベールの中央及び端部断面で実施)。

                       *:カビ発生程度0.5~2.5のうちカビ奥の強いもの

   貯蔵期間         :1平成元年11月4日~2年2月6日       2平成元年11月20日~2年2月21日

                                      3平成2年5月25日~2年8月23日     4平成2年6月12日~2年9月7日

*      *:実水分率

*      

3.の他特記事項

研究期間              :昭和63年度~平成2年度            予算区分:地域重要新技術

研究課題名           :北陸地域における半乾燥型祖飼料の安定生産利用技術

 

暖地型牧草の草種別・刈取時期別乾燥特性の解明

 

福井県畜産試験場

 

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

  暖地型牧草の草種や品種、また、その生育期や刈取り機械の違いによる乾燥特性を調査し、乾燥ないしは半乾燥として利用する場合の選択基準を明らかにした。

 (1)草種・品種の乾燥特性

  乾燥初期における乾きはローズグラスが早く、特にカタンボラでその傾向が強かった。

  また、グリーンパニック、ガットンパニック、タミドリ、ソライにおける初期の乾燥性はほぼ同様でナツカゼはこれらよりやや遅く、スーダンは遅かった(表1)。

 (2)刈取期別における乾燥特性

 カタンボラとソライとの初期における乾燥性は、節間伸長期で悪く、穂孕期・出穂期にかけて高まった(図1、2)。

 (3)刈取機械の違いによる乾燥特性

  カタンボラの1番草では、刈取後2日目の午後にはディスクモーア刈とモーアコンディショナー刈との間に大差はなくなり、好天候のもと、いずれも3日目には乾草に仕上がった(表2)。しかし、2番草ではモーアコンディショナーの効果が高かった(図3)。

  また、その他の品種でも、好天候での1番草でモーアコンディショナーの効果が高かった(表2)。

 

 

2)技術・情報の適用効果

暖地型牧草を乾草および半乾草に調製する場合の基本的な考え方として活用できる。

 

 

3)普及・利用上の留意点

(1)     今回の試験は、生草収量300kg/aに相当する量を用いて実施した。

(2)     いずれの品種も極力、出穂期でのモーアコンディショナー刈が望まれる。

 

2.具体的データ(図・表)

 

表-1 品種別の乾燥速度(昭和63年度成績)

 

 

刈取ステージ

刈取水分(%)

乾草速度(%/時間)

草種名

品種名

1番草

2番草

1番草

2番草

1番草

2番草

ローズグラス

カタンボラ

出穂期

出穂始

75.2

81.0

8.7

8.8

 

カロイド

節間伸長期

節間伸長期

77.6

84.5

7.9

8.8

ギニアグラス

グリーンパニック

出穂始

穂揃期

75.4

80.3

5.4

6.5

 

ガットンパニック

出穂始

出穂始

77.7

81.0

5.7

6.3

 

ナツカゼ

節間伸長期

止葉期

79.8

84.2

4.2

4.5

カラードギニア

ソライ

穂孕期

出穂期

80.3

83.8

6.5

6.1

グラス

タミドリ

穂孕期

出穂期

78.2

83.0

6.3

5.6

スーダングラス

乾草スーダン

出穂始

 

83.8

 

1.8

 

注)50℃に設定した通風乾燥器による結果

 乾燥速度:乾燥開始後8時間目までの測定値による単回帰係数で、1時間当りの含水率の低下量を示し、

 大きい値ほど乾燥性が良い傾向を示す。

 含水率(%)=(試料重-乾物重)/試料重

 

 

表-2各品種における刈取機会の違いによる含水率

 

 

 

含水率(%)

品種名

ステージ

刈取機

刈取時

翌日

2日目

3日目

カタンボラ

出穂始

D

79.1

39.7

23.1

17.8

 

 

M

79.4

33.4

19.1

15.1

カロイド

期間伸長

D

82.0

50.2

34.8

27.4

 

 

M

82.9

35.0

25.8

21.0

ソライ

開花始

D

80.4

42.8

29.0

22.5

 

 

M

79.3

34.7

20.5

15.0

タミドリ

開花始

D

80.3

46.0

31.9

23.7

 

 

M

78.9

32.6

20.8

14.4

グリーンP

止葉

D

80.9

57.3

33.5

22.8

 

 

M

80.6

35.4

18.2

12.0

ガットンP

出穂始

D

80.1

59.7

37.8

27.2

 

 

M

79.9

41.9

23.6

17.3

ナツカゼ

節間伸長

D

79.4

55.5

36.2

27.2

 

 

M

80.8

40.7

22.3

17.9

注) 刈取時                :8月1日午前11時(天候 晴)

                                                                                                          翌日~3日目              :午前10時の測定値(天候 晴)

                       D:ディスクモーア

                       M:モーアコンディショナー

 

3.その他特記事項

 研究期間           :昭和63年度~平成2年度                          予算区分:地域重要新技術

 研究課題名       :北陸地域における半乾燥型粗飼料の安定生産利用技術

 

繁殖豚の授乳飼料に対する油脂の添加

 

福井県畜産試験場

 

 

1.成果の内容

 1)技術・情報の内容及び特徴

 本県のような夏高温多湿地域においては、夏場の気象環境(表1)は家畜にとって相当のストレスであり、そのため、飼料摂取量は低下し、生産性に悪影響を及ぼしている。繁殖豚にとっても、夏場の分娩は体力の消耗が一層大きく、体力の回復も飼料摂取量不足のため遅れがちとなり、子豚の哺育成積も悪い。そこで、豚の授乳用飼料に動物性油脂を添加したところ、次のような成果が得られた。

(1)     油脂の添加は、対照区の当畜産試験場慣行飼料(TDN70%)に対し、2.5%である。これにより、TDN含量が75%になる。油脂は市販の粉末油脂を使用すると、配合も容易である。

(2)     生後離乳までの子豚の発育性をみると、油脂添加区は対照区と比較して、約10%高い増体を示し、特に、7日齢以降の発育が優れていた(表2)。

(3)     子豚の育成率も、対象区の87.1%と比較して約10%高く、油脂添加による授乳量増加が示唆された(表3)

(4)     離乳後の発情再帰においては、油脂添加の効果はなかった。(表4)。

 

2)技術・情報の適用効果

 繁殖豚の授乳用飼料における油脂の添加は、本県のような高温多湿地域の暑熱下においては、母豚の飼料摂取量不足による体力の低下防止策として適用できる。

 

3)普及・利用上の留意点

 繁殖豚の授乳期以外のステージにおいて油脂添加を行う場合は、栄養の過不足が生じないように、栄養計算をし、給与量の適正化を図る必要がある。

 

2.具体的データ(図、表)

 

表1 気温の推移                      (℃)

項目

6月

7月

8月

上旬

中旬

下旬

上旬

中旬

下旬

上旬

中旬

下旬

平均

19.7

21.9

22.2

22.5

25.7

25.9

25.9

27.2

最高

23.0

25.6

25.3

25.3

29.1

29.3

29.0

31.3

最低

16.4

18.2

19.5

20.0

22.7

22.9

23.0

23.9

                         注)福井地域気象台月報(平成2年)より

 

表2  子豚体重の推移

区分

供試

頭数

生時

体重

7日齢

体重

14日齢

体重

21日齢

体重

油脂添加

76頭

1.4±0.3kg

2.5±0.5kg

4.1±0.8akg

5.7±1.0kg

対照

91

1.5±0.2

2.4±0.4

3.6±0.6b

5.4±0.9

                                  * 異符号間に5%水準で有意差あり

 

表3  生産子豚数と離乳までの育成頭数

区分

供試

母豚数

生産

子豚数

7日齢

頭数

14日齢

頭数

21日齢

頭数

育成率

油脂添加

8頭

9.5頭

9.3頭

9.3頭

9.3頭

97.9(%)

対照

9

10.1

9.1

9.0

8.8

87.1

 

表4  離乳から発情再帰までの日数

区分

10日以内

10日以上

発情再帰なし

平均発情

 

頭数

割合

頭数

割合

頭数

割合

再帰日数

油脂添加

5頭

63(%)

2頭

25(%)

1頭

12(%)

11.6日

対照

6

67

3

33

0

0

13.2

 

 

3.その他特記事項

 研究期間           :平成2年度                     予算区分:県単

 研究課題名       :種豚管理試験

 

 

育成期の制限給餌と成鶏期における期別給餌法

 

福井県畜産試験場

 

1.成果の内容

1)技術・情報の内容及び特徴

6銘柄の採卵鶏を用いて育成期の制限給餌と成鶏期の期別給餌とを組み合わせて飼料の効率的な給与技術体系を検討した。

供試鶏は、6銘柄(シェーバースタークロス288、デカルブエクセルリンク、ニックチックE、ハイセックス、ハイラインW77、バブコックB300)を用いた。

供試飼料は、市販の育すう用飼料ならびに成鶏用飼料で、成鶏用飼料には、MEを同水準にして標準的な飼料としてCP16%(ME2800Kcal/kg)、高たん白質飼料としてCP18%(MB2850Kcal/kg)の2水準を設定した。

 初生から6週齢までは不断給餌、以後20週齢まで各銘柄の管理マニュアル体重の70%によるように制限給餌を行った。成鶏期における給与飼料の切り換えは第1表のように行った。

 

第1表 成鶏期の飼料給与

区分

20

30

50

80週齢

試験1区

CP16%

CP16%

CP16%

 

試験2区

CP16%

CP18%

CP16%

 

試験3区

CP18%

CP18%

CP16%

 

 

(1)     制限給餌により、20週齢時体重は各銘柄ともマニュアルのほぼ70%に制限された。その時の育成期の飼料消費量(20週齢まで)は対照区よりも約30%節減された。しかし、50%産卵日齢は各銘柄の標準成績よりも20日前後遅れた。

(2)     育成期に制限給餌を行ったばあい、成鶏期の産卵初期に高たん白飼料CP18%を給与して性成熟の回復を早めることにより、その後代償性産卵・卵重の改善を維持することができる。その効果は銘柄によって差があり、シェーバー、ニックチックおよびハイセックスに認められた。また、CP18%の給与期間については今後検討する必要がある。

 

2)技術・情報の適用効果

前期6銘柄の採卵鶏に適用できるが、銘柄によって効果に差がある。

 

3)普及・利用上の留意点

制限給餌を行うと尻つつきが発生するので断嘴は必ず行っておく。

 

2.具体的データ

 

第2表 育成期 制限給餌の効果(0-20週齢)

銘柄

区分

20週齢時体重

飼料消費量

0-20週齢

育成率

 

 

g比率

g比率

シェーバー

対照区

1,429(100)

6,879(100)

84.6

制限区

976(68)

4,641(67)

99.3

デカルブ

対照区

1,412(100)

6,684(100)

100

制限区

953(67)

4,589(69)

97.2

ミックチック

対照区

1,349(100)

6,630(100)

100

制限区

951(68)

4,787(72)

98.6

ハセックス

対照区

1,416(100)

6,998(100)

90.9

制限区

968(68)

4,771(68)

99.3

ハイライン

対照区

1,393(100)

6,064(100)

100

制限区

1,011(73)

4,732(78)

98.6

バブコック

対照区

1,295(100)

6,609(100)

100

制限区

911(70)

4,569(69)

100

 

 

g比率

g比率

全銘柄

対照区

1,382(100)

6,644(100)

95.9

平均

制限区

962(70)

4,682(70)

98.8

 

第3表 成鶏期 制限給餌の効果(21-80週齢)

銘柄

試験区

50%産卵

産卵率

平均

卵重

日産

卵重

飼料

消費量

飼料

要求率

 

1羽当たり

粗利益

日齢

卵重

生存率

 

 

g

%

g

g

G

 

%

円 比率

シェーバー

試験1区

192

57.3

68.5

64.8

44.4

106.7

2.40

93.8

1,658(100)

試験2区

184

55.6

71.3

64.7

46.2

107.8

2.33

93.8

1,707(103)

試験3区

188

53.4

72.4

64.2

46.5

111.6

2.40

93.8

1,704(103)

デカルブ

試験1区

193

54.3

75.1

60.9

45.7

109.5

2.39

91.7

1,743(100)

試験2区

194

53.1

71.3

62.3

44.4

110.7

2.50

93.8

1,511(87)

試験3区

189

51.6

76.3

62.3

44.4

111.9

2.36

95.8

1,765(101)

ミックチック

試験1区

189

50.7

71.3

61.8

44.1

109.1

2.48

97.9

1,619(100)

試験2区

186

54.1

75.5

63.7

48.1

114.0

2.37

93.8

1,745(108)

試験3区

185

55.1

77.3

62.7

48.5

115.0

2.37

97.9

1,830(113)

ハイセックス

試験1区

179

51.5

72.4

62.7

45.4

109.3

2.41

93.8

1,682(100)

試験2区

176

48.8

78.3

62.7

49.1

109.3

2.22

95.8

1,980(118)

試験3区

181

52.1

75.6

63.5

48.1

110.6

2.30

91.7

1,831(109)

ハイライン

試験1区

185

47.5

67.6

65.2

44.1

110.0

2.50

91.7

1,530(100)

試験2区

175

52.0

72.8

65.7

47.8

112.3

2.35

95.8

1,799(118)

試験3区

179

52.7

67.6

64.5

43.6

108.5

2.49

85.4

1,452(95)

バブコック

試験1区

183

49.3

70.7

60.0

42.4

103.8

2.45

97.9

1,585(100)

試験2区

184

53.2

69.5

61.6

42.8

105.1

2.46

95.8

1,497(94)

試験3区

179

48.9

72.5

61.0

44.3

108.2

2.45

100.0

1,601(101)

全銘柄

平均

 

g

%※

g※

g※

g

 

%

円 比率

試験1区

187

51.8

70.9a

62.6a

44.4a

108.1

2.44

94.5

1,636(100)

試験2区

184

52.3

73.6b

63.0ab

46.4b

111.0

2.40

94.1

1,697(104)

試験3区

183

52.8

73.1b

63.5b

46.4b

109.9

2.37

94.7

1,707(104)

※は5%の危険率で有意差がある。卵価210円、飼料CP16% 49.5円/kg、CP18%5,285円/kg

 

3.その他特記事項

 研究期間           :昭和62年-平成2年度                予算区分:県単

 研究課題名       :採卵鶏の期別給餌管理技術

 

 

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