実用化技術等(平成元年)
【平成元年度】
1.水稲品種コシヒカリの上位葉身長(B3葉)に基づく倒状の予測
2.水稲フクヒカリ及びコシヒカリの収穫開始時期の目安
3.散播直播における過剰苗立ちの間引き処理
4.夏播きレタス作期前進の適応品種と播種期
5.長期株冷イチゴの省力的植え付け法
6.ミニトマトの品種[ミニキャロル]
7.ポット育苗カーネーションの品質向上及び2番花夏期開花回避法
8.レンギョウの適品種
9.ニホンナシ品種「筑水」の福井県における適応性
10.耐凍性台木および中間台木を使ったニホンナシ幸水の凍害防止
11.ウメの成熟ステージの予測法
12.ミツバチの放飼によるウメの結実向上
13.天敵(オンシツツヤコバチ)の利用によるオンシツコナジラミの防除
14.ウメ果実酒の醸造技術
15.オールイン飼料給与による和牛去勢牛の肥育効果
16.ソルガムのサイレージ調製技術
17.ビニールハウス豚舎による繁殖雌豚の飼養技術
平成元年度
普及に移す技術 |
分類B |
契機 普 |
部門 水稲 |
|
技術名 |
水稲品種コシヒカリの上位葉身長(B3葉)に基づく倒状の予測 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場・作物課 |
1.成果の内容
(1)技術の内容および特徴
コシヒカリの出穂の約25~20日前に倒状程度を予測し、穂肥施用等の栽培管理の判断に役立てる。
(1)-a.福井農試「稲作気象対策試験」の1984~1987のデーターから第(4+5)節間長及び第4節間長と倒状程度との間には、従来から指摘されている強い関係が確認された(図―1、図―2)。
b.さらに、第4節間長はそれより先に伸長するB3葉身長(止葉より数えて3枚目の葉身)と高い相関を有し(図-3)、また、B3葉身長は倒伏程度との間に正の相関が認められた
(図―4)。
(2) これらの関係からB3葉身長がほぼ展開を終了する出穂25~20日前に、B3葉身長を
測定することより、第4節間長を間接的に推定され、倒状程度の予測が可能である
(3) B3葉身長の測定は、生育中庸な株の最長茎を用いる(表―1)。また、B3葉身を正確に特定するには葉鞘内のB1、2葉身を確認する必要がある。しかし、通常は出穂25~20日前の最長葉であり、また一般にコシヒカリの葉数は13葉(不完全葉含まず)のことが多いので葉齢が把握されれば、基部から11番目の葉身を用いればよい。また、測定は生育中庸な10株~20株行う。
(2)技術の適応効果
本法は、最も診断が必要とされる穂肥前に簡易に倒状程度を予測できる。従来から行われている葉色等による診断技術と組み合わせることにより、より的確な生育診断が可能になる。
(3)適応範囲
コシヒカリの稚苗機械移植栽培地帯(ただし、回転式については地域、作期等により若干変動する)。
(4)普及指導上の留意点
地域、作期等により止葉葉数は若干変動するので代表的な圃場で葉齢のチェックを行う。
2.具体的データー(図表)
3.その他特記事項
研究年次 昭和61~63年度
参考資料 間脇正博・笈田豊彦・岩田忠寿:コシヒカリの下位節間長の診断予測一草丈・葉身長に着目した場合-(日作紀57別1)
普及に移す技術 |
分類B |
契機 普 |
部門 水稲 |
|
技術名 |
水稲フクヒカリ及びコシヒカリの収穫開始時期の目安 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場・作物課 |
1.成果の内容
1)技術の内容および特徴
刈取り時期を簡便・迅速に判断して適期に刈取るため、積算気温と登熟期における籾水分の推移、並びに穂の色調の変化及び玄米の性状を調査し、フクヒカリ、コシヒカリの刈取り開始日の目安とする。
(1)刈取り開始日の目安となる条件
千粒重と精玄米重の積から推定した収量が、最高になる時点を刈取り適期とすると、これより早く、減収が極わずかで、しかも品質を損なわず効率的にコンバイン収穫ができる条件を満たす時期を刈取り開始日とすることができる。この時期は、籾水分が25%程度になった点で、各品種の特徴は次のとおりである。
(2)刈取り開始時期の目安
(1)フクヒカリ(図)
積算気温が940℃に達した時で、穂軸の黄化率が約55%、青籾残在率は約10%である。
(2)コシヒカリ(図)
積算気温が990℃に達した時で、穂軸の黄化率が約45%、青籾残在率は約10%である。
2)技術・情報の適用効果
(1) 刈取り適期を正確に捉えられるため、早刈りや刈遅れに伴う品質の低下を防止できる。
(2) 大規模化に伴う、作期巾の拡大等に対応した品質の低下防止に役立つ。
3)適用範囲 福井県下全域
4)普及指導上の留意点
(1) この目安は、平均値であるので、表のように年によるある程度の変動を考慮する必要がある。
(2) 調査手順としては、まず、出穂期を把握して、積算気温から刈取り適期を予測し、予測日の4~5日前から胴割率や形態的特徴を調査する。
(3) 調査は、生育が均一で圃場全体を代表できるところを選び、3株(約50本)の平均とする。
表 過去11年間の登熟積算温度と登熟日数
(1978~‘88福井農試 気対試験より)
品種 |
積算気温 (℃) |
平均 (℃) |
標準偏差 |
登熟日数 (日) |
平均 (日) |
標準偏差 |
フクヒカリ |
944~1036 |
1001 |
32 |
34~41 |
37 |
2.2 |
コシヒカリ |
997~1111 |
1048 |
31 |
37~45 |
40 |
2.2 |
図 登熟期の積算気温と玄米の性状及び穂の形態の推移
3.その他の特記事項
研究課題名 水稲主要品種の刈取り適期調査
予算区分 県単
研究期間 昭和61~63年
普及に移す技術 |
分類B |
契機 研 |
部門 水稲 |
|
技術名 |
散播直播における過剰苗立ちの間引き処理 |
|||
実施場所 |
福井県園芸試験場 |
1. 成果の内容
1)技術の内容および特徴
直播栽培にとって苗立ちの確保が重要なことであるが、散播直播で過剰に苗立ちした場合、適正な苗立ち密度に間引きし、生育・収量の安定を図る。
間引きの方法は、中耕除草機を用い条状鋤込みにより間引きをする。間引きの程度は、苗立ち数を把握し、㎡当たり80本を目標に間引き条間の間隔によって調節する。
2)技術・情報の適用効果
適正な苗立ち密度の調整は、過剰茎数が防止でき倒状抵抗性が高まるとともに、収量構成要素とくに一穂着粒数の増加によって総籾数や収量が高まる。
3)適用範囲
県下全般の散播直播栽培に適応できる。
4)普及指導上の留意点
(1) 散播は、まきむらになり易いので、均一播種につとめること。
(2) 間引きは中耕鋤込みにより行うため、苗が大きくならない5葉期頃までに行う。
(3) 田面が硬いと鋤込み精度が劣るので、間引き効果が低下する。
2具体的データ(図表)
表-1 間引後の茎数経過
区名 |
間引後の 苗立数/㎡ |
茎数(本/㎡) |
穂数 (本/㎡) |
有効茎 歩合% |
|
6月28日 |
7月13日 |
||||
300g播無処理 |
90 |
746 |
642 |
349 |
46 |
45%間引 |
62 |
382 |
429 |
323 |
75 |
29%間引 |
77 |
561 |
547 |
366 |
65 |
500g播無処理 |
144 |
826 |
631 |
381 |
46 |
45%間引 |
83 |
501 |
487 |
332 |
64 |
29%間引 |
96 |
602 |
529 |
366 |
58 |
表-2 倒状の推移と節間長・葉身長
区名 |
出穂後の倒状度 |
節間長cm |
稈長 cm |
葉身長cm |
葉身重 (g/㎡) |
|||
28日 |
40日 |
1+2 |
4+5 |
止葉 |
止+2+3 |
|||
300g播無処理 |
2.0 |
3.4 |
50.2 |
13.3 |
79 |
24.8 |
96.6 |
142 |
45%間引 |
0.5 |
2.7 |
52.5 |
12.8 |
82 |
27.1 |
106.6 |
160 |
29%間引 |
0.5 |
2.4 |
51.4 |
14.0 |
80 |
25.1 |
101.5 |
158 |
500g播無処理 |
1.3 |
2.2 |
49.3 |
13.1 |
78 |
24.6 |
96.7 |
174 |
45%間引 |
0.7 |
2.0 |
51.3 |
12.7 |
79 |
24.7 |
101.2 |
180 |
29%間引 |
0.7 |
2.0 |
50.8 |
12.9 |
80 |
25.1 |
98.5 |
182 |
表-3 収益及び収量構成
区名 |
収量 kg/a |
穂数 本/㎡ |
一穂 粒数 |
総粒数 ×100/㎡ |
登熟 歩合 |
千粒重 g |
300g播無処理 |
49.8 |
349 |
65.9 |
239 |
93.7 |
22.2 |
45%間引 |
50.0 |
323 |
76.0 |
255 |
88.5 |
22.1 |
29%間引 |
53.3 |
366 |
73.5 |
275 |
88.8 |
21.8 |
500g播無処理 |
50.1 |
381 |
61.4 |
234 |
95.0 |
22.5 |
45%間引 |
52.1 |
332 |
72.3 |
257 |
94.1 |
21.5 |
29%間引 |
47.7 |
353 |
62.6 |
237 |
92.0 |
21.8 |
3その他特記事項
試験年次 昭和63年
参考資料 福井県園試営農環境課試験成績書
普及に移す技術 |
分類A |
契機 普 |
部門 野菜 |
|
技術名 |
夏播きレタス作期前進の適応品種と播種期 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場 |
1. 成果の内容
1)技術の内容及び特徴
平坦地における夏播きレタスは抽台発生や球の肥大不良を防ぐため、オリンピアを用いて8月上旬(5日~10日頃)播種するのが早まきの限界となっているが、晩抽性品種を用いた播種期の前進化により、従来の作型より1週間早く、また、準高冷地での育苗により約2週間早く出荷できることを明らかにした。
(1) 作期前進化に適応した品種として、従来のオリンピアよりも抽台しにくく、収穫株率及び商品化率の高いエクシードが優れる。
(2) 収穫したレタスの球重や商品化可能な球内茎長の程度から判断して、平地では従来より約1週間前進して、7月末頃の播種が可能である。しかし、約2週間前進した播種ではオリンピアでは全株が抽台し、他の品種でも球内の花茎が著しく長く、商品化は不可能である。
(3) エクシードを用いて、育苗に適した気温が得られる準高冷地(標高約500m)で育苗し、平地栽培すれば、従来の作型より約2週間の前進出荷が可能である。しかし、これ以上の前進化(7月中旬頃播種)では、球内花茎の伸長が進み商品化率が低下するので危険である。
2) 技術の適用効果
(1)収穫時期が早まるので価格安定が期待できる。
(2)作期の組み合わせにより労力分散、作付け拡大が可能である。
(3)準高冷地での育苗により作期前進が図られる。また、今後、育苗と栽培の分業化が期待される。
3)適用範囲 平坦地の水田転換畑、普通畑(砂丘地を除く)
4)普及指導上の留意点
(1)生育初期が高温乾燥期であるので、灌水に便利な圃場を選ぶ。
(2)葉数3~4枚程度で定植するようにし、ペーパーポットの大きさNo.11で育苗日数は20日間を基準とする。
(3)保水性や通気性の良い床土を用い、根群の発達した苗作りを行うようにし、徒長苗や老化苗にならないようにする。
(4)活着不良は生育の遅れや小球になりやすいので、砕土、整畦、定植、灌水作業は丁寧に行う。
(5)収穫期が高温期の場合は鮮度保持のため出荷前の予冷処理が望ましい。
2.具体的データ(図表)
表1 播種期、品種の違いと生育(昭和62)
播種期・品種 |
地上部重 g |
球重 g |
花茎長 cm |
収穫日 月.日 |
収穫率 % |
商品化率 % |
|
7/21 |
オリンピア |
- |
- |
- |
|
(抽台) |
0 |
セシル |
786 |
329 |
10.5 |
9.14 |
94 |
0 |
|
エクシード |
798 |
320 |
9.8 |
9.14 |
89 |
0 |
|
ユニバース |
831 |
349 |
9.9 |
9.14 |
81 |
0 |
|
スマート |
786 |
320 |
10.9 |
9.14 |
84 |
0 |
|
7/31 |
オリンピア |
573 |
334 |
5.6 |
10.8 |
66 |
58 |
セシル |
691 |
337 |
4.3 |
10.8 |
98 |
80 |
|
エクシード |
703 |
358 |
5.0 |
10.10 |
91 |
75 |
|
ユニバース |
705 |
356 |
6.2 |
10.13 |
91 |
47 |
|
スマート |
698 |
333 |
5.9 |
10.10 |
83 |
45 |
|
8/8 |
オリンピア |
700 |
420 |
3.6 |
10.17 |
72 |
95 |
セシル |
837 |
447 |
4.1 |
10.19 |
100 |
90 |
|
エクシード |
822 |
449 |
3.7 |
10.17 |
100 |
100 |
|
ユニバース |
811 |
418 |
3.9 |
10.17 |
88 |
90 |
|
スマート |
845 |
425 |
3.9 |
10.19 |
94 |
95 |
注)育苗日数20日 ペーパーポットNo.11使用
商品化率は収穫株のうち花茎長5cm以下のものの割合
表2 播種期、品種の違いと生育(昭和63)
播種期・品種 |
地上部重 g |
球重 g |
花茎長 cm |
収穫日 月.日 |
収穫率 % |
商品化率 % |
|
7/28 |
オリンピア |
612 |
386 |
2.7 |
10.12 |
75 |
100 |
セシル |
728 |
394 |
2.1 |
10.13 |
100 |
100 |
|
エクシード |
640 |
345 |
2.3 |
10.11 |
100 |
100 |
|
ユニバース |
631 |
353 |
2.3 |
10.12 |
100 |
100 |
|
スマート |
643 |
347 |
2.5 |
10.18 |
100 |
100 |
注)育苗日数20日 ペーパーポットNo.11使用
表3 高地苗の生育、品種(昭和62.63)
播種期 育苗地 |
外葉数 |
葉長 cm |
葉幅 cm |
地上部重 g |
球重 g |
球高 cm |
球茎 cm |
花茎長 cm |
収穫日 月.日 |
収穫率 % |
商品化率 % |
|
7/21 |
平地(62) |
12.6 |
24.1 |
30.0 |
798 |
320 |
13.5 |
14.6 |
9.8 |
9.14 |
89 |
0 |
高地(62) |
14.3 |
25.1 |
30.4 |
946 |
322 |
12.7 |
14.6 |
4.5 |
9.24 |
86 |
80 |
|
高地(63) |
9.0 |
21.0 |
28.0 |
561 |
338 |
13.0 |
15.0 |
3.4 |
9.28 |
91 |
100 |
|
7/14 |
高地(63) |
13.0 |
21.0 |
27.0 |
578 |
292 |
12.0 |
14.0 |
4.8 |
9.21 |
65 |
47 |
高地(63)* |
10.0 |
21.0 |
29.0 |
608 |
331 |
13.0 |
15.0 |
6.1 |
9.21 |
100 |
45 |
表4 育苗地の違いと気温、苗の大きさ(昭和62.63)
育苗地 |
育苗期間中の気温 |
定植時の苗の大きさ |
|||
最高 |
最低 |
葉数 |
葉長 |
葉幅 |
|
平地(62) |
33.6 |
20.7 |
4.0 |
10.7 |
6.2 |
高地(62) |
29.3 |
19.5 |
2.3 |
9.7 |
3.2 |
高地(63) |
29.9 |
20.5 |
3.0 |
6.1 |
4.3 |
品種:エクシード 播種:7/21 育苗日数:20日間
3.その他特記事項
研究年次 昭和62~63年
参考資料 昭和62~63年度野菜花き試験成績書、研究速報(NO.52)
普及に移す技術 |
分類B |
契機 研 |
部門 野菜 |
|
技術名 |
長期株冷イチゴの省力的植え付け法 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場 坂井丘陵畑作研究室 |
1.成課の内容
1)技術の内容及び特徴
長期株冷を利用した秋、春2季どりイチゴの産地造成が、「水田農業確立」事業の推進に伴い、ここ数年急速に行われている。この場合、秋季の低収が問題となっている。その要因の一つとして、長期の貯蔵による株の消耗に加えて、高温期の植え付けとなるので、その方法は簡便性が要求される。具体的な植え付け法は、植え穴を掘り、その中央に円錐状に土を盛り、その上に根を広げて土寄せする慣行法は極めて多大の労力を要する。そこで根を広げず垂直に植える垂直植え、根を半分に広げて垂直に植える半開植え、さらに畦の肩から中央部へ移植ゴテ等を30度位の角度でさし入れ、浮き上げそこへ扇型に広げた根を入れる船底植えを慣行法と比較検討した。(図1)
船底植えは慣行法に比べ、半分の植付け労力であり(表1)、初期生育や根の伸長もよく、最も活着しやすいことが認められ(表2)秋季のa当り収量及び2季合計a当り上物果重が多く、品質も劣らず、敏速な定植が要求される長期株冷苗の植え付け法として適している。
2)技術の適用効果
船底植えは慣行法の1/2の労力でよいことから作付け面積の拡大が図り易くなり、また、植え付け技術が簡便なため、新産地にも導入し易く、産地造成上寄与するところが大きい。
3)適用範囲 長期株冷苗を利用した2季どりイチゴの産地全域
4)普及指導上の留意点
(1) 根の広がりをより大きくし、活着促進のため、植え付け時に使用する移植ゴテ等のコテ部はわん曲度合いが小さく、長さ20cm前後(株冷苗の根の長さを考慮して)がよい。
(2) 苗は畦の肩部からさし入れるが、図2のごとく、土寄せ時、幹部が垂直になるように、また、浮き上がらないように留意する。
2.具体的データ(図表)
表1 抑制イチゴの植付労力調査(50株当り) 昭61
植付法 |
慣行植 |
直立植 |
半開植 |
舟底植 |
植付時間(分) |
65 |
42 |
40 |
32 |
慣行比(%) |
100 |
64 |
61 |
49 |
表2 抑制イチゴの植付法と結実期の生育との関係 昭61
植付法 |
草丈 cm |
株張り cm |
葉身長 cm |
生体 |
|
根重 g |
根長 cm |
||||
慣行植 |
19.4 |
30.1 |
5.0 |
12.2 |
34.7 |
直立植 |
18.1 |
26.3 |
5.0 |
13.0 |
36.3 |
半開植 |
19.3 |
30.6 |
5.4 |
14.7 |
38.3 |
船底植 |
18.9 |
30.3 |
6.0 |
15.3 |
38.7 |
表3抑制イチゴの植付法と年次別収穫期、収量との関係 昭61.昭63
植付法 |
年次 |
収穫 始期 月.日 |
a当り収量1) |
大果率 |
|
総果重 kg |
上物果重 kg |
M級以上果数 % |
|||
慣行植 |
61 |
11.3 |
122.5 |
105.5 |
43 |
|
63 |
10.18 |
89.3 |
63.8 |
29 |
直立植 |
61 |
11.1 |
102.7 |
85.9 |
41 |
|
63 |
10.19 |
97.6 |
77.5 |
18 |
半開植 |
61 |
10.30 |
131.6 |
117.8 |
36 |
|
63 |
10.19 |
86.7 |
70.5 |
14 |
舟底植 |
61 |
10.31 |
130.2 |
112.7 |
42 |
|
63 |
10.18 |
89.7 |
76.2 |
25 |
1) 12月8日までの収量
3.その他特記事項
研究年次 昭和61~63年
参考資料 坂井丘陵野菜試験成績書
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 野菜 |
|
技術名 |
ミディトマトの品種「ミニキャロル」 |
|||
実施場所 |
福井県園芸試験場 |
1.成果の内容
1)技術の内容および特徴
半促成栽培、抑制栽培の2作型とも収量、品質に優れた「ミニキャロル」が適当である。
a.半促成栽培
10a当たり総収量は、6.4tとミニトマトの中では極めて多収であり、他の品種に比較して裂果が少なく、上物率が高かった。
1果重は、11.1gでありミニトマトとして販売するための大きさとしては適しており、Brix糖度も8.0と高く、高品質であることから市場性は高いと考えられる。
b.抑制栽培
10a当たり総収量は、全収穫期間を通して高く、上物率も高かった。
2)技術の適用効果
ミニトマトの中では収量が多く、他の品種に比較して上物率、糖度ともに高く、高品質であることから販売には有利である。
3)適用範囲
福井県内全域に適用できる。
4)普及指導上の留意点
裂果に対して比較的強いので水分管理は容易であるが、糖度を高めるためには土壌水分は控えめに管理するのが良い。
また、ホルモン処理を行う場合は、一般の大玉トマトと同様、50~120倍で処理する。
2.具体的データ(図表)
表-1サイズ別収量(10株当たり)
品種 |
半促成栽培 |
|||||||
15g以上 |
8g~15g |
8g以下 |
裂果 |
|||||
|
個 |
g |
個 |
g |
個 |
g |
個 |
g |
ナイアガラスイート |
10 |
159 |
1039 |
10767 |
342 |
2579 |
231 |
1888 |
ミニカブリ |
643 |
11465 |
634 |
7445 |
11 |
72 |
117 |
1355 |
チェリッシュ |
6 |
94 |
1344 |
13975 |
251 |
1760 |
244 |
1962 |
チェルシー |
878 |
23745 |
18 |
201 |
0 |
0 |
20 |
463 |
レッドチェリー |
0 |
0 |
433 |
4116 |
501 |
3094 |
160 |
1200 |
チェリーミニカ |
5 |
77 |
759 |
7597 |
718 |
4471 |
334 |
2560 |
ミニキャロル |
261 |
4166 |
1378 |
14978 |
281 |
2128 |
117 |
1241 |
ツィンクルスイート |
22 |
337 |
954 |
9883 |
286 |
1678 |
123 |
1139 |
ブチ |
740 |
14323 |
360 |
4661 |
31 |
188 |
55 |
596 |
イブ |
1 |
15 |
1083 |
10078 |
839 |
5426 |
318 |
2171 |
ピコ |
739 |
13863 |
96 |
1277 |
8 |
47 |
127 |
2077 |
品種 |
抑制栽培 |
|||||||
15g以上 |
8g~15g |
8g以下 |
裂果 |
|||||
|
個 |
g |
個 |
g |
個 |
g |
個 |
g |
ナイアガラスイート |
25 |
394 |
426 |
4700 |
30 |
206 |
15 |
174 |
チェリッシュ |
31 |
493 |
317 |
3351 |
60 |
397 |
17 |
167 |
ミニキャロル |
82 |
1334 |
535 |
6175 |
37 |
266 |
26 |
323 |
ツィンクルスイート |
17 |
266 |
496 |
5561 |
24 |
164 |
29 |
281 |
イブ |
3 |
43 |
261 |
2612 |
75 |
515 |
38 |
301 |
表-2 a当たり収量
品種 |
半促成栽培 |
抑制栽培 |
|||||||
総収量 |
上物率 |
上物収量 |
1果量 |
糖度 |
総収量 |
上物率 |
上物収量 |
1果量 |
|
|
Kg |
% |
Kg |
g |
Brix |
Kg |
% |
Kg |
g |
ナイアガラスイート |
423.1 |
86.8 |
375.1 |
9.4 |
8.5 |
138.6 |
95.7 |
132.6 |
11.0 |
ミニカブリ |
584.5 |
92.6 |
541.0 |
14.7 |
7.5 |
- |
- |
- |
- |
チェリッシュ |
516.6 |
87.3 |
451.1 |
9.9 |
7.0 |
111.3 |
95.2 |
106.0 |
10.4 |
チェルシー |
713.7 |
95.6 |
682.4 |
26.7 |
7.8 |
- |
- |
- |
- |
レッドチェリー |
242.8 |
84.6 |
205.5 |
7.5 |
5.5 |
- |
- |
- |
- |
チェリーミニカ |
421.8 |
81.8 |
345.1 |
8.1 |
5.8 |
- |
- |
- |
- |
ミニキャロル |
642.3 |
94.4 |
606.2 |
11.1 |
8.0 |
204.5 |
95.1 |
194.4 |
11.9 |
ツィンクルスイート |
374.8 |
90.5 |
339.1 |
9.4 |
7.5 |
157.8 |
94.9 |
149.7 |
11.2 |
ブチ |
560.3 |
96.5 |
540.7 |
16.7 |
5.7 |
- |
- |
- |
- |
イブ |
509.2 |
86.8 |
442.2 |
8.0 |
8.8 |
90.5 |
87.6 |
79.3 |
9.4 |
ピコ |
498.4 |
86.8 |
432.8 |
18.0 |
7.5 |
- |
- |
- |
- |
3.その他の特記事項
研究年次 昭和63年
参考資料 昭和63年度 野菜試験成績書
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 花き |
|
技術名 |
ポット育苗カーネーションの品質向上及び2番花夏期開花回避法 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場 |
1.成果の内容
1)技術の内容及び特徴
本県のカーネーションの一般的な作型は、2月下旬挿し芽、3月下旬定植であるが、1番花の開花始めは7月~8月と遅く、また、年間の切花本数も少ないのでポット育苗方式による栽培改善を進めてきた。ポット育苗方式では10月上旬挿し芽、11月上旬7.5cmポットに鉢上げして冬期間育苗し、3月上旬に定植することにより1番花の開花始めは従来の作型より早く、6月上旬から可能で年間の総採花数も多くなるが、切花長や切花重の増大など品質向上が重要で、また、2番花は価格の安い7~8月に開花するので、これを避け秋冬期に多く開花させる方法を明らかにした。
(1)低節位からの出芽を促進して、1番花の切花長や切花重の増大など品質向上を図る方法として、定植1ヶ月後にBA200ppm処理することが有効で開花始期も早くなる。
(2)2番花の夏期開花回避法として6月下旬(6月20日~25日)に2番花となる腋芽をピンチする方法が最も効果がある。7~8月の開花が減少して、価格の高い9~12月に増加し、年間の総採花数も増加する。また、秋冬期の切花品質は無処理に比べてほぼ同程度である。
2)技術の適用効果
市場価格の高い9月~12月の秋冬期に採花本数がまとまり、出荷量も増加するので農家の所得向上につながる。
3)適用範囲 県下全域のカーネーション栽培農家
4)普及指導上の留意点
(1)裁植密度は、条間10cm、株間20cmとし、2番花は1株6本仕立てに整技する。
(2)2番花夏期開花回避のため腋芽ピンチ時期は遅くならないようにし、ピンチ後にBA200ppm処理する。
(3)分技数の増加に伴い、切り花長、切り花重が低下しないように草勢の維持に留意する。
2.具体的データ(図表)
表―1 BA処理が1番花(6~7月)の品質に及ぼす影響(昭63)
|
出芽節位 |
出芽率 % |
開花始期 月.日 |
切花長 cm |
切花重 g |
節数 |
茎の太さ cm |
無処理 |
5.8 |
81 |
6.22 |
64 |
30 |
7.8 |
0.6 |
定植時 |
4.9 |
89 |
19 |
71 |
35 |
8.4 |
0.6 |
定植1カ月後 |
4.3 |
99 |
19 |
72 |
33 |
9.4 |
0.5 |
注)定植:3月22日 品種:バニア BA濃度200ppm 出芽節位 出芽率は5月25日調査
表―2整枝法の違いが開花時期別採花数に及ぼす影響
(1㎡実面積当たり)
|
項目 |
開花始期(月日) |
時期別採花数(本) |
9~12月 |
総採花数 |
||||
区 |
|
1番花 |
2番花 |
~6月 |
7.8月 |
9.10月 |
11.12月 |
計(本) |
|
昭 和 61 年 |
無処理 |
6. 8 |
8. 17 |
62 |
82 |
50 |
12 |
62(100) |
206(100) |
わき芽除去(6/20) |
8 |
9. 15 |
56 |
65 |
38 |
46 |
84(135) |
205(100) |
|
わき芽ピンチ(6/21) |
9 |
10. 10 |
68 |
72 |
73 |
55 |
128(206) |
268(130) |
|
切り戻し(6/22) |
8 |
9. 29 |
44 |
0 |
71 |
53 |
124(200) |
168(82) |
|
昭 和 62 年 |
無処理 |
6. 19 |
8. 15 |
47 |
55 |
37 |
46 |
83(100) |
185(100) |
わき芽除去(6/20) |
19 |
9. 19 |
46 |
43 |
28 |
42 |
70(84) |
159(86) |
|
わき芽ピンチ(6/21) |
19 |
21 |
45 |
35 |
62 |
46 |
108(130) |
188(102) |
|
切り戻し(6/22) |
19 |
25 |
48 |
0 |
55 |
34 |
89(107) |
137(74) |
注)定植6月6日(62年) 10日(61年) 品種:レナ・スーパー(61年) バニア(62年)
無処理区以外は1日後にBA200ppm散布
表―3 整枝法の違いが秋冬期の切り花品質に及ぼす影響
|
項目 |
9月 |
10月 |
11・12月 |
|||
区 |
切花長 (cm) |
切花量 (g) |
切花長 (cm) |
切花量 (g) |
切花長 (cm) |
切花量 (g) |
|
昭 和 61 年 |
無処理 |
64 |
34 |
83 |
35 |
91 |
40 |
わき芽除去(6/20) |
62 |
27 |
76 |
32 |
91 |
34 |
|
わき芽ピンチ(6/21) |
- |
- |
78 |
32 |
89 |
37 |
|
切り戻し(6/22) |
66 |
28 |
82 |
33 |
91 |
36 |
|
昭 和 62 年 |
無処理 |
68 |
24 |
72 |
25 |
87 |
28 |
わき芽除去(6/20) |
63 |
19 |
69 |
21 |
87 |
27 |
|
わき芽ピンチ(6/21) |
66 |
17 |
70 |
21 |
85 |
26 |
|
切り戻し(6/22) |
57 |
14 |
66 |
18 |
87 |
25 |
注)表-2の 注)を参照
3.その他特記事項
研究年次 昭和62~63年
参考資料 昭和62~63年度花き試験成績書、研究速報(NO.52)
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 花き |
|
技術名 |
レンギョウの適品種 |
|||
実施場所 |
福井県園芸試験場 花き課 |
1.成果の内容
1)技術の内容および特徴
1 枝物花木用のレンギョウは、1年枝および2年枝の利用が可能な次の品種が適当である。
リアンウッドゴールド
ジャイアントエロー
スペクタビリス
2 これらの品種は1年枝の出方が立性で、しかも1年枝によく花芽が着生し、花型花色なども良好である。
2)技術の適用効果
1 幼木期の管理が容易で、収穫開始までの期間も3年程度と短い。
2 1年枝で収穫できるので、無駄な枝が少なく、収量(収穫本数)が増加する。
3)適用範囲
県下の促成花木産地
4)普及指導上の留意点
1 2年枝および花着きのよい1年枝を収穫出荷する。1把に入れる1年枝、2年枝の比率は出荷市場と打ち合わせておく。
2 花芽が多数着生した節は、2年枝となったとき葉芽が着きにくく、枯れ込みやすい。先端からよく花芽の着いた1年枝は必ず収穫する。
2 具体的データ
表1.レンギョウ品種の形態的特徴
品種名 |
養盛期 樹型 |
新梢 の色 |
葉の形 |
葉緑の形 |
花型 |
花弁長 |
花弁幅 |
備考 |
日本 |
開張 |
褐色 |
楕円状卵形 |
鋸歯緑 |
2 |
中 |
中 |
秋咲き性あり |
リアンウッドゴールド |
立性 |
褐色 |
長楕円状披針形 |
鋸歯緑 |
2 |
中 |
中 |
|
ジャイアントエロー |
立性 |
褐色 |
長楕円状披針形 |
鋸歯緑 |
1 |
中 |
やや広 |
|
スペクタビリス |
立性 |
褐色 |
長楕円状披針形 |
鋸歯緑 |
1 |
中 |
やや広 |
|
ビートリックスファーランド |
立性 |
褐色 |
卵形 |
鋭鋸歯緑 |
1 |
長 |
広 |
|
朝鮮 |
立性 |
緑色 |
長楕円状披針形 |
鋭鋸歯緑 |
2 |
やや長 |
中 |
|
注 花型の分類 1.花弁の先端が外にそるか、まっすぐに聞く。形が良い。
2.花弁の横がそり気味に聞く。
表2.レンギョウの枝の特徴
品種名 |
1年枝の特徴 |
2年枝の特徴 |
||||
花芽着生 |
形状 |
側枝数 |
側枝長 |
花芽着生 |
形状 |
|
日本 |
不良 |
先端蔓化しやすい |
多い |
中位 |
やや良 |
立性枝の形状良い |
リアンウッドゴールド |
特に良好 |
直立性 |
少ない |
長い |
やや良 |
先端枯れ込む、古莢残る |
ジャイアントエロー |
特に良好 |
直立性 |
少ない |
長い |
やや良 |
先端枯れ込む、古莢残る |
スペクタビリス |
特に良好 |
直立性 |
少ない |
長い |
やや良 |
先端枯れ込む、古莢残る |
ビートリックスファーランド |
良好 |
直立性 |
少ない |
長い |
やや良 |
先端枯れ込む、古莢残る |
朝鮮 |
良好 |
直立性 |
やや少ない |
長い |
やや良 |
先端やや枯れ込む |
3 その他特記事項
研究年次 昭和59年~63年
参考資料 昭和62年度花き試験成績書
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 果樹 |
|
技術名 |
ニホンナシ品種「筑水」の福井県における適応性 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場 |
1.成果の内容
1)技術の内容及び特徴
筑水は農林水産省果樹試験場の育成品種で、昭和58年「筑波36号」の系統名で穂木の配布を受け、本県における適応性を検討してきた。特性は次のとおりで、幸水の前に収穫される早生の優良品種として福井県に適応することが明らかになった。
特性
樹勢は中位で、新水に比べて弱い。枝の発生が多く短果枝の着生は中程度であるが腋花芽の着生が多く、花芽の確保は容易である。開花期は新水より遅く、幸水と同時期かやや遅い。
熟期は新水より6日程度早く、8月上~中旬。果実は円形で果梗が短い。果重は250~300gで新水より大きく玉揃いは中程度である。
果肉は軟かくて酸味が少なく糖度は12度程度で幸水に似た食味を持つ。
日持ちは7日程度で新水に比べて良く、果実生理障害では、心腐れがわずかに発生するが他の障害はみられない。
収量は花芽の着生維持、枝の発生密度、果実の大きさなどの特性からみて、単位面積当たりでは新水を上回るものと思われる。
2)技術の適用効果
本品種は花芽の着生が多く維持も容易で、果実は新水に比べて大きい。また黒斑病抵抗性を育種目標の一つにして抵抗性品種を交配親にしているので、抵抗性を示すとされているから新水に代わって栽培される早生品種として期待できる。
3)適用範囲
県内既存ナシ栽培地を中心にした少雪平坦地帯
4)普及指導上の留意点
(1)樹勢が中位であるから植栽に当っては肥沃地を選び、新水より裁植密度を高める。
さらに肥培管理、せん定を適切に行い樹勢維持につとめる。
(2)玉揃いを良くするため人工受粉などにより受粉を完全に行わせる。
(3) 果梗が短かくて、軸折れ、傷果が発生しやすいから、摘果の際、適正な着果位置の幼果を残すよう留意する。
2.具体的データ
表-1 樹の特性(4~6年生)
品種名 |
樹勢 |
幹周 (6年生cm) |
枝の発生密度 |
短果枝 着生 |
えき花芽 着生 |
開花期(月日) |
|
始 |
終 |
||||||
筑水 |
中~ヤ弱 |
25.0 |
多 |
中 |
多~中 |
4.22 |
4.29 |
新水 |
強 |
21.7 |
少 |
中~ヤ少 |
少 |
4.20 |
4.25 |
幸水 |
中 |
24.8 |
中 |
少 |
中 |
4.21 |
4.27 |
表-2 果実の特性(4~6年生)
品種名 |
収穫期 |
果実外観 |
果実品質 |
||||||
始 |
終 (月日) |
果皮色 |
果実重z) (g) |
果形 |
玉揃い |
硬度y) |
糖度 |
pH |
|
筑水 |
8.9 |
8.17 |
中間 |
291 |
円 |
中 |
4.5 |
12.0 |
5.1 |
新水 |
8.12 |
8.22 |
赤 |
277 |
扁円~円 |
良 |
5.2 |
12.8 |
4.6 |
幸水 |
8.20 |
8.26 |
中間 |
295 |
扁円~円 |
中~良 |
4.8 |
11.6 |
5.1 |
z) 5~6年生平均 y) マグネステーラー(ブランジャー5/16インチ)
表-3 果実の特性および収量(4~6年生)
品種名 |
果実品質 |
日もち性 |
果実生理障害 |
累計 収量 |
||||
渋味 |
香気 |
心腐れ |
みつ症 |
硬化障害 |
裂果 |
|||
筑水 |
なし |
微 |
7 |
なし~少 |
なし |
なし |
なし |
20.2 |
新水 |
なし |
なし |
5~7 |
なし |
なし |
なし |
なし |
29.9 |
幸水 |
なし |
なし |
7 |
なし~少 |
なし |
なし |
有~なし |
29.3 |
3.その他特記事項
研究年次 昭和59~63年
参考資料 果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会資料(落葉果樹 昭59~63年)
栗原(果樹試)ら.ニホンナシの新品種‘筑水’.園芸学会63年度秋季大会
研究発表要旨 84~85.
福井農試果樹試験成績書(昭59~63年)
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 果樹 |
|
技術名 |
耐凍性台木および中間大木を使ったニホンナシ幸水の凍害防止 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場 |
1.成果の内容
1)技術の内容及び特徴
幸水は耐凍性が弱く、新規造成地等では、主幹部を中心に樹皮が裂開もしくは黒変する凍害が発生し、樹の骨格形成を阻害しているが、次に示す台木および中間台木には耐凍性が認められ、これらを使用することにより発生を軽減することができる。
(1) 台木 マンシュウマメナシ台に接ぎ木した幸水はニヒンヤマナシ台に比べて凍害の発生が少なくしかも、若木期から優良結果枝が多く発生し、収量が高い傾向にあるから、幸水の台木はマンシュウマメナシを使う。
なお、マンシュウマメナシの中では、ベチュレホリア(埼玉園試産)がホクシマメナシ(果樹試産)に比べて耐凍性がやや強い。
(2) 中間台木 凍害が最も発生し、致命的ななりやすい主幹部の被害を防ぐにはマンシュウマメナシ台木に二十世紀を接ぎ木し、さらに90~100cmの高さで幸水を接ぎ木して主幹部を二十世紀中間台にする。
2)技術の適用効果
マンシュウマメナシ台はヤマナシ台に比べて凍害の発生は少ないものの、効果は不十分である。しかし二十世紀を中間台にした場合の効果は著しく高く、多発地でも凍害を克服することができる。
3)適用範囲
幸水の台木は耐凍性、早期結実性を備えたマンシュウマメナシを使用することとし冷気が停滞しやすい地形、排水不良土壌、地力に乏しい土壌等凍害の多発が予想される地域では二十世紀を中間台に使用する。
4)普及指導上の留意点
(1) 二十世紀中間台幸水苗は標準苗より養成期間が1年長くなるので、自家養成する場合、定植1年前までにマンシュウマメナシ台二十世紀苗を準備し、幸水を高接ぎする。
(2) 排水不良、低地力など、凍害を助長する土壌環境の改善を進める。
2.具体的データ
表-1 台木の違いによる幸水幼木の凍害発生率 (樹%)
凍害 |
樹皮裂開 |
樹皮の黒変 |
|||
台木 |
1984 |
1985 |
1985 |
1986 |
1987 |
マンシュウマメナシ |
|
|
|
|
|
ベチュレホリア(埼玉園試産) |
50.0 |
0.0 |
0 |
12.5 |
12.5 |
ホクシマメナシ(果樹試産) |
50.0 |
0.0 |
0 |
25.0 |
62.5 |
ニホンヤマナシ |
85.7 |
14.3 |
28.6 |
40.0 |
20.0 |
表-2 台木の違いが花芽数および収量に及ぼす影響
凍害 |
せん定後短果枝数 |
せん定後えき花芽数 |
累計収量z |
|||
台木 |
1087 |
1988 |
1987 |
1988 |
果数 |
重量(kg) |
マンシュウマメナシ |
|
|
|
|
|
|
ベチュレホリア(埼玉園試産) |
110ay |
81a |
289a |
192a |
304a |
104a |
ホクシマメナシ(果樹試産) |
96a |
76ab |
286a |
185a |
324a |
98a |
ニホンヤマナシ |
69b |
65b |
332a |
135a |
285a |
89a |
Z)1985~1988 y)ダンカンの多重検定 P=5%
表-3 中間台木が幸水の凍害発生に及ぼす影響
区名 |
供試 樹数 |
生存 樹数 |
裂皮発 生樹率 |
黒変症発生樹率(1984) |
黒変症発生度(1982~1984)z |
||
主幹(%) |
主枝(%) |
主幹 |
主枝 |
||||
幸水2年生苗(標) |
10 |
9 |
33.3 |
77.8 |
88.9 |
3.0 |
0.8 |
二十世紀中間台2年生苗 |
5 |
5 |
0 |
60.0 |
60.0 |
1.4 |
0.6 |
長+郎 〃 |
5 |
5 |
20.0 |
100.0 |
40.0 |
1.4 |
0.6 |
幸水1年生苗(標) |
10 |
8 |
0 |
62.5 |
87.5 |
2.8 |
0.9 |
二十世紀中間台1年生苗 |
5 |
5 |
0 |
20.0 |
100.0 |
0.2 |
1.2 |
長+郎 〃 |
5 |
5 |
0 |
80.0 |
80.0 |
0.8 |
0.8 |
Z)0(被害がみられない)・・・4(枯死または枝幹円周の2/3以上黒変)
3.その他特記事項
研究年次 昭和57~63年
参考資料 長沢清孝 ニホンナシ優良品種の生産性向上技術の確立.研究速報49
(昭62):6~8
小川晋一郎 ナシ幼木期の耐凍性増強技術.研究速報54(平成元):8~10
福井農試果樹試験成績書(昭56~62年)
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 果樹 |
|
技術名 |
ウメの成熟ステージの予測法 |
|||
実施場所 |
福井県園芸試験場 |
1.成果の内容
1)技術の内容および特徴
(1)果実肥大は着果量に、成熟は開花盛期からの平均気温の積算に強く影響されている。
(2)成熟ステージは、開花盛期からの平均気温の積算温度で、硬核期は約700℃前後、胚乳固化期は約1050℃、産地最大収穫期日は約1450℃である。
(3)成熟ステージの硬核期、胚乳固化期、産地最大収穫期日は開花盛期と有意な相関が認められ、それぞれ回帰式により予測できる。
硬核期 y=83.14-0.51x
胚乳固化期 y=111.16-0.69x
産地最大収穫期日 y=130.11-0.70x
(注: xは2月1日を1とした開花盛期までの日数、
yは開花盛期から各成熟ステージまでの日数を示す。)
2)技術の適用効果
出荷計画の樹立が容易になり、未熟果や過熟果の出荷を防止できる。
3)適用範囲
県内植裁の紅サシ
4)普及指導上の留意点
(1)現地の開花盛期を正確に把握すること。
(2)収穫期の決定は、現地における硬核期と胚乳固化期を調査し、回帰式による予測と開花盛期後の積算温度とを考慮して行う必要がある。
2.具体的データ(図表)
表-1 年次別発育ステージと積算温度
年度 |
開花 盛期 A |
結実率 (%) |
硬核期 B |
A~Bまでの |
胚乳固化期 C |
A~Cまでの |
産地最 大収穫 日 D |
A~Dの 平均気温 積算 ℃ |
||
日数 (日) |
平均気温 の積算℃ |
日数 (日) |
平均気温 の積算℃ |
|||||||
1984 |
4/11 |
- |
5/24~5/28 |
47 |
674.9 |
~6/13 |
63 |
1013.5 |
7/1 |
1425.2 |
1985 |
3/19 |
44 |
5/14~5/19 |
61 |
822.9 |
5/13~6/4 |
77 |
1118.6 |
6/21 |
1453.9 |
1986 |
4/1 |
66 |
5/20~5/23 |
52 |
758.4 |
5/16~6/7 |
67 |
1037.6 |
6/27 |
1450.0 |
1987 |
2/23 |
33 |
5/2~5/5 |
71 |
662.4 |
5/10~5/28 |
94 |
1063.9 |
6/17 |
1488.6 |
1988 |
3/14 |
19 |
5/7~5/14 |
61 |
681.4 |
5/7~6/8 |
86 |
1127.2 |
6/22 |
1413.9 |
平均 |
3/21 |
40.5 |
5/18 |
58.4 |
720.0 |
6/5 |
77.4 |
1072.2 |
6/24 |
1446.3 |
表-2 開花期と成熟ステージの関係
項 目 |
開花期との 相関係数 |
回 帰 式 |
予測日との差 |
硬核期 |
-0.995xx |
Y=83.140-0.507X |
-0.7~1.7 |
胚乳固化完了期 |
-0.975xx |
Y=111.155-0.692X |
-2.7~4.6 |
産地最大収穫日 |
-0.993xx |
Y=130.110-0.695X |
-2.5~1.2 |
(注)開花期,Xは2月1日を1とした開花盛期までの日数,Yは開花盛期
から各ステージまでの日数を示す。
図ー1 開花盛期からの積算温度と果実肥大ならびに発育ステージ
3.その他特記事項
研究年次 昭和59~63年
参考資料 福井園試 果樹課成績書 (昭和62,63年度)
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研普 |
部門 果樹 |
|
技術名 |
ミツバチの放飼によるウメの結実向上 |
|||
実施場所 |
福井県園芸試験場 |
1.成果内容
1)技術の内容および特徴
開花期間中にミツバチを放飼し、花粉の媒介を促進して結実の向上を図る。
2)技術の適用効果
(1)受粉を促進し、結実が高まる。
(2)ミツバチは、気温が10℃を超え、風が弱く、晴天条件となればウメ園に集中して飛来する。
(3)花粉は、低温での発芽力が強く、また、雌ずいは開花後1週間程度は受精能力を持っている。一方、ミツバチの飛来当日に咲いた花に比べて飛来日前に咲いた花の結実率が高いことが明らかとなっている。
このようなことから、開花期間中3~5日に1回の間隔でミツバチが活動すれば有効である。
3)適用範囲 ウメ園
4)普及指導上の留意点
(1)ミツバチが活動しやすい条件を作るため、防風垣を完備する。
(2)放飼中はもとより、放飼前も1週間以上前で薬剤散布を止める。(養蜂業界では2~3週間としている)
(3)限界条件下での活動であり、巣箱は日当たりがよく、風の当たらない温暖な場所を選び、出入り口を南向きに設置する。
また、設置密度は30~50aに1箱とするが、山の稜線や森林帯を越えての活動は期待できないため、最低でも谷合ごとに設置する。
(4)放飼中は巣箱を移動しない。
2.具体的データ(図表)
表-1ミツバチ放飼がウメの結実率におよぶ影響(%)
|
巣箱からの距離(m) |
|
||
|
5 |
50 |
100 |
平均 |
遮蔽 |
16.4±6.3 |
27.4±1.8 |
18.3±14.3 |
23.0(100) |
放飼 |
24.5±3.0 |
43.8±6.0 |
27.7±2.6 |
33.1(144) |
総花蕾数に対する4月13日の結実率、遮蔽はネット被覆
紅サシ、3年生、ポット植
表-2スミチオン散
布後のミツバチの死亡
月/日 |
死亡数 |
3/12.13 |
430 |
14 |
110 |
15 |
136 |
16 |
157 |
17 |
90 |
18 |
55 |
濃度 1000倍
散布日 3/9~10
巣箱開口日3/11
死亡数は巣箱周辺で調査
3.その他特記事項
1)研究年次 昭和60年~平成元年
2)参考資料 福井園試報第5号
農業技術体系(畜産編)農文協
普及に移す技術 |
分類B |
契機 研 |
部門 野菜 |
|
新技術・情報名 |
天敵(オンシツツヤコバチ)の利用によるオンシツコナジラミの防除 |
|||
実施場所 |
福井県農業試験場 |
1.成果の内容
1)技術の内容及び特徴
オンシツコナジラミ(以下、コナジラミと略称)は、施設園芸の主要害虫で、トマト,ナス、キュウリおよび花き類など甚大な被害を与えているが、本中はロウ物質で被われており、繁茂した茎葉裏に各態が混在するため、殺虫剤のみでは完全防除が期待できず、また安全使用基準により収穫期には農薬の散布ができない。そこで、本虫の天敵寄生蜂の1種オンシツツヤコバチ(以下、ツヤコバチと略称)の防除効果を施設栽培の夏秋トマトを用いて検討したところ、天敵放飼15日後にコナジラミの誘殺数が急激に低下し、また天敵の密度が十分であったか所では被害果率も極めて低かったことから、適切な放飼を行った場合には効果が高く、実用可能なことが明らかとなった。
具体的な実施方法は以下の通りである。
(1) コナジラミ成虫の発生調査:ツヤコバチを放飼する適期を知るために、黄色粘着リボン(商品名・金竜)を施設トマトの場合、100株に1か所の割合で1.5mの高さに吊り下げ、1リボン、1週間あたりのコナジラミ成虫誘殺数を調査する。
成虫誘殺数が10~20頭になった時期(発生初期)が、ツヤコバチの第1回放飼適期にあたる。
(2) ツヤコバチの放飼方法:羽化直前のマミー(ツヤコバチ蛹態)を、虫かごかポリ容器などに入れ、トマト50~100株を1ブロックとして、その中心部の支柱の1.5mの高さに吊り下げる。
(3) ツヤコバチの放飼量・回数:コナジラミ成虫発生初期の生息密度の2倍相当量のマミーを、成虫発生初期、同最盛期および幼虫発生初期を目標に3回それぞれ放飼する。ただし、コナジラミの発生量が均一でなく、ブロック間差がある場合には、マミーの放飼量を増減し、寄主の生息密度に対応できるようにする。
2)技術の適用効果
天敵による害虫防除は、農薬による防除技術の不十分な部分をカバーでき、確実な防除効果が期待できる。とくに、トマトの場合、本虫の被害が最も問題となる夏秋トマト(7月中~下旬定植、10月中~下旬収穫最盛期)では、防除時期が収穫期と重複するため、農薬の安全使用基準のうえから殺虫剤散布が困難であるので、適用性が高い。
3)適用範囲
当面施設栽培のトマトのコナジラミ防除に適用する。
4)普及指導上の留意点
(1) コナジラミの成虫発生調査を必ず実施したうえで、生息密度に対応するツヤコバチを放飼する。
(2) 成虫発生初期を確認し、第1回目マミー放飼時期を量を適合させることがポイントである。
(3) コナジラミ以外の害虫防除には、天敵に影響のない殺虫剤(ブプロフェジン剤)を選んで使用する。
2.具体的データ(図、表)
図-1 オンシツコナジラミの天敵放飼効果 (1987年)
3.その他特記事項
1)研究年次 昭和61~63年
2)参考資料 北陸病害虫研究会報 第36号(1988);35~38
福井農試 虫害に関する試験成績書 昭和61~63年
普及に移す技術 |
分類B |
契機 研 |
部門 加工 |
|
技術名 |
ウメ果実酒の醸造技術 |
|||
実施場所 |
福井県食品加工研究所 |
1.成果の内容
1)技術・情報の内容および特徴
本県の主要農産物であるウメは生産量の拡大にともない、付加価値の高い特産品の開発が求められている。そこでウメ果実酒を醸造する際の諸条件について検討し、黄化ウメを用いることにより、青ウメに比べ香味の良い果実酒になることを確認した。
(1) 醸造方法として、まず果実を凍結、解凍し、圧搾して果汁を得る。得られた果汁を有機酸が0.6%になるように希釈し、補糖調製する。また調製果汁は微量栄養源が少ないため、発酵促進剤として効果が高かったリン酸アンモニウムを添加する。ワイン酵母OC-No.2を用い、17℃にて約10日間発酵させる。(図1,2)
(2) ウメ果実酒の原料としての適正について、青ウメと、これを4~6日間室温にて追熟した黄化ウメを比較した場合、黄化ウメは甘い桃様の香りを有し、評価が高い。また、青ウメと比較して果汁収率はやや低下するが、有機酸含量が少ないため果汁希釈率が低くてよい。(表1)
(3) 青ウメと黄化ウメのそれぞれを原料として醸造したウメ果実酒の成分組成を比較すると後者はエキス分や有機酸組成が適度であり、香りの評価も高い。従って、ウメ果実酒の原料としては黄化ウメが適しており、黄化ウメを用いることにより香味の優れたスッキリとした果実酒が得られる。(表2)
(4) 製成したウメ果実酒は酸味とほのかな苦味を要するため、やや甘口に仕上げた方がまろやかな製品が得られる。(表3)
2)技術・情報の適用効果
従来の梅酒と異なり、酸味の効いた果実酒としての新しい商品開発につながる。
3)適用範囲
果実酒であるため、醸造免許を受けた者に限る。
4)普及指導上の留意点
特になし
2.具体的データ(図表)
果汁抽出 |
→ |
果汁調製 |
→ |
発酵 |
→ |
貯蔵 |
・凍結、解凍 ・圧搾抽出 ・遠心分離 |
|
・希釈減酸 ・補糖(ショ糖20%) ・殺菌(メタリカ100ppm) ・発酵助成促進剤 (リン酸水素2アンモニウム0.2%) |
・酵母 OC-No.2 ・17℃ |
|
|
図1 ウメ果実酒製造のフローチャート
図2 発酵助成促進剤を添加した調整果汁
(糖:20%、酸:0.6%)における
OC-No.2アルコール生産性
表1 紅映の果汁成分
|
還元糖 |
有機酸(%) |
香りの 評価 |
果実収率 (%) |
果汁希釈 率(培) |
||
|
(%) |
クエン酸 |
りんご糖 |
計 |
|||
青ウメ |
0.02 |
4.0 |
1.5 |
5.5 |
++ |
62 |
9.2 |
黄化ウメ |
0.03 |
3.5 |
0.2 |
3.7 |
++++ |
55 |
6.2 |
表2 ウメ果実酒の成分
|
アルコー ル(%) |
エキス (%) |
有機酸(%) |
香りの 評価 |
||
|
クエン酸 |
りんご糖 |
計 |
|||
青ウメ |
11 |
2.5 |
0.46 |
0.23 |
0.69 |
± |
黄化ウメ |
10 |
3.0 |
0.61 |
0.13 |
0.74 |
++ |
表3 調整後のウメ果実酒のタイプと評価
タイプ |
酸(%) |
エキス(%) |
評価 |
辛口 |
0.6 |
2.0 |
苦く、酸味があとに残る |
やや辛口 |
0.6 |
2.5 |
まろやか、ほのかな苦味 |
やや甘口 |
0.6 |
3.0 |
まろやか、ほどよい酸味 |
甘口 |
0.6 |
4.0 |
梅酒様の香味 |
3.その他の特記事項
研究期間 昭和61~平成元年
福井県畜産試験所
1.成果の内容
1)技術・情報の内容及び特徴
自給飼料に稲わら、製造生粕類と濃厚飼料を混合し、水分45%に加水調製したオールイン飼料(表-1)を、和牛去勢牛に給与し、その肥育性、経済性を検討した。
(1) 低質飼料である稲わらや生粕類を用いて混合飼料にしたオールイン給与牛は、分離給与型慣行飼料給与牛と比べて、増体や肉質で遜色のない成績であった(表-2)。
(2) 飼料を混合、加水することにより、飼料の選択採食を防止でき、低嗜好性飼料の採食を促し、飼料の栄養バランスを維持できる。
(3) 飼料の混合化は、第一胃内における内容液の恒常性を保つことにより、飼料の利用性を向上させる一方、オールイン資料給与牛は消化器系などの疾病が少なかった。このため、飼料要求率(DM・TDN)は慣行飼料に比べて約9%優れた(表―2)。
(4) オールイン飼料給与牛の経済性は、飼料の混合調製に要する労力、機械施設などの経費が慣行飼料より少し加算されるが、直接経費による差益では、オールイン飼料給与牛は飼料費が安くなったことにより、慣行飼料給与牛より低コスト牛肉生産が図られた(表-3)。
2)技術情報の適用効果
飼育技術の平準化が容易になり、牛肉生産の拡大が期待できる。
3)適用範囲
北陸全域、特に稲わらと自給飼料生産可能な地帯。
4)普及指導上の留意点
(1) オールイン飼料の調製には、良質な素材となるサイレージが必要であり、混合を均一にすること、特に、粗飼料は切断長3cm以下にすると混合が均一化する。
(2) 肥育ステージ(前・中・後期)にあった飼料メニューで給与することにより、さらによい発育と肉質の向上が期待される。
(3) オールイン飼料は、夏期に変質しやすく、裁食量が低下するので、気温が上昇する日中の給与は避け、早朝と夕方に分け給与する。
2.具体的なデータ(図表)
表-1 給与飼料 (配合割合 DM%)
飼料名 |
オールイン飼料区 |
慣行飼料区 |
||
前期 (238日) |
後期 (294日) |
前期 (238日) |
後期 (294) |
|
配合飼料(市販) |
― |
― |
25 |
30 |
麦ヌカ |
40 |
― |
45 |
― |
圧べん大麦 |
5 |
40 |
― |
45 |
コーンフレーク |
10 |
30 |
― |
10 |
大豆粕 |
5 |
― |
5 |
― |
ビートバルブ※ |
5 |
5 |
― |
― |
ビール粕 ※ |
10 |
10 |
― |
― |
トウモロコシサイレージ |
10 |
5 |
10 |
5 |
稲わら |
15 |
10 |
15 |
10 |
DCP |
11.0 |
9.0 |
11.0 |
9.0 |
TDN |
67.0 |
80.0 |
67.0 |
80.0 |
注)※は、ビール粕サイレージ(ビートバルブ混入)
表―2 肥育成績
項目 |
オールイン飼育区 |
慣行飼料区 |
|
増 体 |
開始時体重(kg) |
262.8±10.3 |
254.8±23.0 |
終了時体重(kg) |
639.3±17.4 |
612.8±26.1 |
|
1日当り増体重(kg) |
0.71±0.03 |
0.67±0.12 |
|
飼 料 |
DM摂取重(kg) |
6.65 |
6.90 |
DM要求率 |
9.37 |
10.30 |
|
TDN要求率 |
6.99 |
7.90 |
表―3 枝肉成績及び差益(1頭当り)
項目 |
オールイン飼育区 |
慣行飼料区 |
|
枝肉成績 |
と殺前体重 (kg) |
631.5±21.2 |
603.2±32.5 |
枝肉体重 (kg) |
383.4±10.4 |
368.9±26.8 |
|
枝肉歩留 (%) |
60.7±0.8 |
61.1±1.7 |
|
脂肪交雑 |
3.3±0.7 |
3.3±0.7 |
|
背脂肪厚 (cm) |
1.9±0.4 |
1.6±0.4 |
|
ロース芯面積 (cm) |
47.1±4.9 |
44.6±4.5 |
|
差
益 |
枝肉単価 (円) |
1,861 |
1,839 |
枝肉価格 A (円) |
713,811 |
678,670 |
|
素牛価格 B (円) |
311,118 |
305,925 |
|
飼料費 C (円) |
166,539 |
231,415 |
|
差益=A-(B+C) (円) |
236,154 |
141,330 |
注)脂肪交雑、背脂肪厚、ロース芯面積は6~7助骨間
3.その他特記事項
研究年次 昭和59~62年度
研究種別 地域重要新技術開発促進事業
福井県畜産試験場
1.成果の内容
1) 技術・情報の内容及び特徴
ソルガムのホールクロップサイレージ利用を図るため、タイプ・刈取時期・栄養価等について検討した。
(1) ソルガムホールクロップサイレージの品質は、各タイプ(子実・兼用・ソルゴー・スーダン型)、各熟期(乳熟・糊熟期)ともに良質なサイレージが調製されたが、乾物収量・穂重割合・IV-DMDについては各タイプとも糊熟期が乳熟期に比べて高い値であった。(表-1)
(2) 糊熟期におけるソルガム各タイプの主要特性は、乾物収量についてはスーダン型>兼用・ソルゴー型>子実型、穂重割合については子実型>兼用型>スーダン型>ソルゴー型の順に高い値を示した。また、倒状はソルゴー・スーダン型が多く、鳥害については子実型が多い傾向にあった。TDN含量については、ソルゴー型のみ他のタイプに比べて低い値を示した。(表-2)
(3) ソルガムホールクロップサイレージの栄養価は、夏作長大作物の中においてはトウモロコシのホールクロップサイレージに比べると低いが、トウモロコシの茎葉サイレージに比較すると高い値であった。 (表-3)
以上のことからソルガムをホールクロップサイレージとして利用する場合は、刈取時期としては収量・穂重割合・栄養価が高まり、サイレージの品種も良好な糊熟期が適当と考えられた。また、ソルガムのタイプについては、収量・穂重割合が高く、倒状・鳥害にも抵抗性がある兼用型が適当と考えられた。
2) 技術・情報の適用効果
ソルガムの利用範囲が広まり、飼料作物の高位生産に寄与できる。
3)適用範囲
酪農、肉牛農家
4)普及指導上の留意点
ソルガムホールクロップサイレージの調製にあたっては、良質のサイレージ醗酵を得るため、また嗜好性の向上を図るため、材料の切断長を10mm前後とする必要がある。
2.具体的データ(図表)
表-1 タイプ、熟期別サイレージの品質とIV-DMD.乾物収量、穂種割合
タイプ |
品種名 |
熟期 |
水分 (%) |
pH |
有機酸組成 (%/FM) |
フリーク 評価 点数等級 |
VBN 比 (%) |
IV- DMD (%) |
乾物 収量 (kg/a) |
穂重* 割合 (%) |
|
総酸 |
乳酸 |
||||||||||
子実型 |
ミニソルゴー |
乳熟 |
78.6 |
3.85 |
0.85 |
0.78 |
100 優 |
6.1 |
64.1 |
115.6 |
34.7 |
糊熟 |
72.6 |
3.96 |
0.93 |
0.80 |
95 優 |
5.3 |
67.6 |
128.1 |
51.8 |
||
兼用型 |
スズホ |
乳熟 |
73.1 |
3.87 |
1.75 |
1.31 |
100 優 |
6.0 |
63.5 |
120.5 |
29.6 |
糊熟 |
66.5 |
4.07 |
0.66 |
0.55 |
100 優 |
2.6 |
67.8 |
136.8 |
44.0 |
||
ソルゴー型 |
FS401R |
乳熟 |
76.0 |
3.88 |
1.39 |
1.25 |
100 優 |
4.1 |
57.8 |
168.8 |
19.8 |
スーダン型 |
P988 |
乳熟 |
75.8 |
3.82 |
1.33 |
1.23 |
100 優 |
3.8 |
62.4 |
136.0 |
19.7 |
糊熟 |
69.7 |
4.01 |
1.33 |
1.29 |
100 優 |
2.2 |
63.0 |
142.4 |
37.2 |
||
トウモロコシ |
|
黄熟 |
71.0 |
3.66 |
1.96 |
1.84 |
100 優 |
4.0 |
72.1 |
144.5 |
51.4 |
注) IV-DMDはセルラーゼ法による、*印は乾物中
表-2 ソルガムのタイプ別主要特性(糊熟期)
タイプ |
乾物収量 (kg/a) |
穂重割合 (%/DM) |
倒状 |
鳥害 |
WSC* 含量 (%) |
TDN* 含量 (%) |
子実型 |
137.9 |
6.4 |
0.2 |
2.2 |
16.6 |
66.7 |
兼用型 |
142.6 |
6.0 |
1.2 |
0 |
17.8 |
66.6 |
ソルゴー型 |
142.8 |
23.6 |
2.4 |
1.0 |
17.8 |
62.9 |
スーダン型 |
171.5 |
33.5 |
2.8 |
0.3 |
15.8 |
67.6 |
注)子実型4、兼用型9、ソルゴー型12、スーダン型3(延品種数)の平均値
TDN含量はペンシルバニア方式による、*印は乾物中
表-3 夏作長大作物サイレージの消化率、栄養価(%/DM)
種類 |
|
幹物 |
有機物 |
粗蛋白質 |
粗脂肪 |
NFE |
粗繊維 |
粗灰分 |
DCP |
TDN |
ソルガム |
成分 |
36.5 |
93.3 |
8.1 |
4.1 |
58.1 |
23.0 |
6.7 |
|
|
WCS |
消化率 |
57.2 |
58.1 |
52.9 |
80.9 |
64.1 |
40.8 |
|
4.3 |
58.3 |
雌穂割合の高い |
成分 |
27.1 |
94.4 |
7.6 |
2.4 |
60.9 |
23.5 |
5.6 |
|
|
トウモロコシS |
消化率 |
64.4 |
65.0 |
49.6 |
77.1 |
72.4 |
65.2 |
|
3.7 |
67.3 |
雌穂割合の低い |
成分 |
24.9 |
90.8 |
9.5 |
1.9 |
51.4 |
28.0 |
9.2 |
|
|
トウモロコシS |
消化率 |
60.3 |
60.5 |
55.5 |
48.5 |
61.4 |
59.5 |
|
5.3 |
55.6 |
注)日本在来種去勢山羊3頭、トウモロコシSの雌穂割合(%/DM) 高い:59.4% 低い:31.9%
3.その他の特記事項
研究年次 昭和60~62年度
研究種別 県単
普及に移す技術 |
分類A |
契機 研 |
部門 豚 |
|
技術名 |
ビニールハウス豚舎による繁殖雌豚の飼養技術 |
|||
実施場所 |
畜産試験場 |
1.成果の内容
(1) 技術の内容および特徴
a.繁殖雌豚の連産性・強健性を高めること、施設費の低減を図るため、育成期から繁殖期までの全期間を通して、踏込み式のビニールハウス豚舎での飼養を試みた。
b.その結果、5産目までの廃用、淘汰頭数は、育成期のみハウス飼養および慣行飼養がそれぞれ5頭のうち2頭、1頭であったのに対して、全期間ハウス飼養では全くなく、連産性、強健性において優れる傾向を示した。
c.ハウス育成は、発育が良好であり、体格は大型化する傾向が認められた。
d.繁殖成績は、慣行飼養と比較して差はなく、良好な成績であった。
(2)技術適用効果
a.繁殖農家の規模拡大。肥育経営から繁殖肥育一貫への移行において、施設費の節減効果がある。
b.繁殖雌豚の共用年数の延長が可能となる。
(3)適用範囲
県下一円
(4)普及指導上の留意点
床面の泥粘化を防止するため、敷料として完熟堆肥を厚さ20cm程度敷く。
2.具体的データ(図表)
表-1 育成成績
区分 |
体重 (kg) |
1日平均増体重(g) |
飼料 要求 率 |
|||
開始時 3.2月 |
終了時 7.1月 |
不稔給餌 3.2-6.2月 |
制限給餌 6.2-7.1月 |
全期間 |
||
前期ハウス区 |
39.9±5.5 |
119.8±9.1 |
713±69 |
545±75 |
677±55 |
3.84 |
ハウス育成区 |
40.6±5.8 |
116.5±11.7 |
683±50 |
501±219 |
645±65 |
4.04 |
対照区 |
40.3±4.5 |
108.1±10.4 |
625±123 |
179±162 |
179±162 |
3.68 |
対象区は不断給餌3.2-6.6月、制限給餌6.6-7.1月
ハウス育成区は6.2ヶ月齢慣行豚舎飼養
表-2
区分 |
供試 頭数 (頭) |
総産 子数 (頭) |
生産 頭数 (頭) |
離乳 頭数 (頭) |
育成率
(%) |
子豚体重 |
SPI 係数 |
|||
生時 (kg) |
離乳 (kg) |
総体重 (kg) |
||||||||
初 産 |
前期ハウス区 |
5 |
8.4 |
8.0 |
7.4 |
92.5 |
1.22 |
5.82 |
42.0 |
78 |
ハウス育成区 |
5 |
9.0 |
8.8 |
8.4 |
95.5 |
1.40 |
5.38 |
42.9 |
84 |
|
対照区 |
5 |
11.4 |
10.8 |
9.4 |
87.0 |
1.38 |
4.96 |
46.6 |
95 |
|
2 産 |
前期ハウス区 |
5 |
10.4 |
10.2 |
9.0 |
88.2 |
1.52 |
5.71 |
51.1 |
96 |
ハウス育成区 |
5 |
12.8 |
11.8 |
11.2 |
94.9 |
1.50 |
5.28 |
58.0 |
114 |
|
対照区 |
5 |
10.6 |
10.0 |
9.2 |
92.0 |
1.61 |
5.88 |
53.4 |
99 |
|
3 産 |
前期ハウス区 |
5 |
12.2 |
10.8 |
10.0 |
92.6 |
1.25 |
5.59 |
55.3 |
102 |
ハウス育成区 |
5 |
10.2 |
9.8 |
9.0 |
91.8 |
1.56 |
6.38 |
56.5 |
100 |
|
対照区 |
5 |
12.6 |
12.6 |
11.0 |
87.3 |
1.47 |
5.99 |
65.9 |
120 |
|
4 産 |
前期ハウス区 |
5 |
9.6 |
9.4 |
8.4 |
89.4 |
1.33 |
5.79 |
48.0 |
89 |
ハウス育成区 |
4 |
11.5 |
11.0 |
9.5 |
86.4 |
1.43 |
5.77 |
54.6 |
102 |
|
対照区 |
5 |
9.2 |
9.0 |
8.6 |
95.6 |
1.61 |
6.37 |
51.6 |
92 |
|
5 産 |
前期ハウス区 |
5 |
11.6 |
11.0 |
7.4 |
67.3 |
1.19 |
5.21 |
37.7 |
80 |
ハウス育成区 |
3 |
13.0 |
11.3 |
9.0 |
79.6 |
1.44 |
5.37 |
49.6 |
97 |
|
対照区 |
5 |
8.2 |
7.8 |
6.8 |
87.2 |
1.53 |
5.67 |
36.6 |
70 |
|
平 均 |
前期ハウス区 |
|
10.4 |
9.9 |
8.4 |
85.4 |
1.30 |
5.62 |
46.8 |
89 |
ハウス育成区 |
|
11.3 |
10.5 |
9.4 |
90.4 |
1.47 |
5.64 |
52.3 |
99 |
|
対照区 |
|
10.4 |
10.0 |
9.0 |
89.6 |
1.52 |
5.77 |
50.8 |
95 |
3.その他特記事項
研究期間 昭和61年度~昭和63年度
予算区分 県単
アンケート
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