「笹生川ダム」が土木学会選奨土木遺産に認定されました!

最終更新日 2020年10月7日ページID 045177

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笹生川ダム(福井県大野市)が、令和2年9月28日に令和2年度選奨土木遺産に認定されました!

 土木学会選奨土木遺産の認定制度は、土木遺産の顕彰(功績等を一般に知らせ表彰すること。) を通じて、歴史的土木構造物の保存に資することを目的として平成12年度に創設されました。
 今年度は全国で26件が認定され、ダムでは、他に北海道の金山ダム、富山の黒部ダムが認定されています。福井県ではこれが6例目になります。

(土木学会選奨土木遺産委員会ウェブページはこちら

 受賞理由は、設計が行われた昭和28年当時、最新の技術となる三次元的応力解析法を用いてダム本体の構造設計を行い、安全性を確保しながらもダム堤体積の最小化を実現させた日本初のダムということが評価されたものです。
 ダム本体のコンクリートを約1割カットして工費削減を行い、度重なる風水害を耐え抜いて、建設後60年以上経過した現在でも、下流の九頭竜川沿川地域を洪水から守るほか、水道用水や電気の安定供給に貢献し、地域の生活や産業を支えています。

 笹生川ダムは、洪水調節、農業用水の補給(不特定かんがい)および発電の三つの有効な利用を目的とし、置県以来最大の事業であった真名川総合開発事業の一環として昭和28年度から5年の年月を費やして、昭和32年11月に県営ダム第一号として建設されました。

 ダムの供用開始後も、県内で唯一、異常洪水時防災操作(いわゆる緊急放流)を実施したほか、余水吐きトンネルの設置(戦後初のダム再生事業) や、利水容量の振替(かんがい用水の容量の一部を、新規に水道用水の容量に振替)が行われる等、日本の土木史に残る様々な革新的取組みが行われてきました。

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ダム内部 監査廊 監査廊 階段 監査廊 清掃

昭和40年奥越豪雨

 笹生川ダムは、異常洪水時防災操作に至った福井県内唯一のダムで、昭和40年9月の奥越豪雨時には、洪水調節容量を使い切り、下流集落の住民および発電所職員の避難が完了するぎりぎりまで貯留し、ダム湖の水位は、サーチャージ水位まで数センチのところまで達しました。(9月13日~15日の総雨量1,044mm、最大時間雨量89.5mm、最大流入量1,002m3/s)

堰堤改良事業(ダム再生)

 昭和40年奥越豪雨において、ダム本体の非常用洪水吐の放流能力が不足したことから、ダムをより安全に運用できるよう、昭和47年度から昭和52年度にかけて放流能力の機能強化を行いました。ダム右岸側に余水吐用のゲートとトンネルを新設し、通信設備や観測設備等の改良・補充を併せて行いました。

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余水吐きトンネル(写真左部) 余水吐きトンネル

余水吐きトンネル用放流ゲート

利水容量の振替

 ダム下流の不特定かんがい用水補給区域において用水の合理化を進めた結果、昭和54年度に不特定かんがい容量の一部を福井市の水道用水に用いるよう利水計画を変更しました。

参考

 真名川総合開発事業では、笹生川ダムのほか、発電用の雲川ダム、中島発電所、発電用導水トンネルが建設されました。
 昭和32年の笹生川ダムの完成は、県内のダムで、現在北陸電力(株)が管理する大正9年に完成した武周湖ダム、昭和31年に完成した雲川ダムに続いて、3番目になります。

笹生川ダムが建設された経緯

昭和25年6月  国土総合開発法施行

        県で「真名川総合開発事業」の計画策定に着手

昭和26年5月 真名川総合開発事業を基本とする「九頭竜川総合開発計画」を策定し中央関係庁に提出

昭和27年4月 県に「九頭竜川総合開発本部」を、現地(大野郡西谷村中島)に「真名川総合開発調査事務所」をそれぞれ設置し本格調査を開始

昭和28年5月 真名川開発建設事務所を開設

昭和29年7月  雲川ダム本体工事を清水建設(株)と契約

           10月 建設大臣に全体計画の認可申請

昭和30年1月 補償問題が解決(水没戸数100戸 下秋生、上秋生、小沢の集落)
        交渉開始から2年という全国的に前例のない短期間で終結

            3月   笹生川ダム本体工事を(株)熊谷組と契約。導水路、発電所工区も10月前後に工事着手

昭和31年11月  建設大臣から全体計画の認可を受ける

            12月  雲川ダム竣工検査(12月7日)

昭和32年2月 雲川関係の一部発電を開始

            8月 中島発電所竣工(8月5日) 

            11月  笹生川ダム竣工(11月15日)

昭和33年4月  真名川開発建設事務所を廃止し、真名川開発建設事業残務処理事務所を設置

    11月 真名川開発建設事業残務処理事務所を閉鎖

各ダムの型式・特徴

笹生川ダム:重力式コンクリートダム(目的:洪水調節、不特定かんがい、水道用水、発電)

・県管理ダム(補助ダム)

・三次元的応力解析法を用いてダム本体の構造設計を行っており、安全性を確保しながらもダム堤体積の最小化を実現させたのは日本初。(ダム本体のコンクリートを約1割カットし工費削減)

・近傍に良質な石灰岩が採取されたことから、米国での使用事例はあったが日本で使用事例のなかった石灰岩を、慎重に試験(強度、耐久性、水密性等)し安全性を確認した上でダムコンクリートの骨材として使用したのは日本初。

・仮設備において、コンクリートの均一性を確保するため、ふるい分けしてストックされた骨材を再度ふるい分けする設備を設け、粗骨材の粗粒率の変化を一定にしたのは日本初。

雲川ダム:アーチ式コンクリートダム(目的:発電)

・県管理から、平成22年に北陸電力(株)に管理譲渡

・砂防兼発電用のダム

真名川ダム:アーチ式コンクリートダム(目的:洪水調節、不特定かんがい、発電)

・国管理ダム(直轄ダム)

真名川ダム

 昭和40年奥越豪雨で笹生川ダムが洪水調節容量を使い切るまで貯留したことから、建設省(現国土交通省)は昭和43年に九頭竜川水系工事実施基本計画を策定しました。その計画に基づき、笹生川ダム下流の大野市下若生子(しもわかご)にダムを建設し、洪水調節を図ることとしました。

 真名川ダムは、洪水調節、農業用水の補給(不特定かんがい)および発電を目的に国直轄事業として昭和42年度より計画に着手され、10年の歳月を掛けて昭和52年10月に完成、昭和54年4月に管理開始されました。

笹生川とは

 笹生川ダムは、真名川に建設されていますが、なぜ笹生川ダムと言うのでしょうか。
 これは珍しいことですが、ダム完成時の昭和32年当時、真名川は大野市旧西谷村中島までで、それより上流は笹生川と雲川に分かれていました。(昭和34年の記録誌を見ても、県内の河川で本川上流に別河川があるのは真名川だけでした。)
 現河川法が昭和39年7月に施行され、改めて法河川に指定された際に、笹生川は真名川に含まれることになりました。(昭和41年3月官報告示)

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