福井県 福井県収用委員会
土地収用制度について(福井県収用委員会)
目次
1 土地収用制度とは?
2 収用委員会とは?
3 裁決手続の流れ
(1)裁決申請および明渡裁決の申立て
(2)裁決申請書および明渡裁決申立書の受理
(3)裁決申請書および明渡裁決申立書の公告・縦覧
(4)裁決手続開始の決定および登記
(5)収用委員会による審理
(6)損失補償の内容
(7)和解
(8)収用委員会の裁決
4 裁決に不服がある場合
(1)審査請求
(2)当事者訴訟
(3)抗告訴訟(裁決取消訴訟)
※土地収用制度に関する用語解説
1 土地収用制度とは?
土地収用法は、憲法で保障された個人の財産権と公共の利益との調整を図り、国土の適正で合理的な利用に寄与することを目的として、公共事業に必要な土地の収用または使用の要件、手続、効果、損失の補償などについて規定しています。
道路、鉄道、河川、公園などの公共事業のため土地が必要となった場合には、通常、起業者が土地所有者と話し合い、任意による売買契約により土地を取得します。
しかし、補償金の額などで折り合いがつかない場合や、土地の所有権について争いがある場合など、話し合いによる土地の取得ができない場合があります。
このような場合に、起業者が土地収用法上の手続を行うことにより、土地所有者や関係人に適正な補償をした上で、土地を取得することができます。
このような制度を、「土地収用制度」といいます。
2 収用委員会とは?
- 収用委員会は、公共の利益の増進と私有財産との調整を図るため、土地収用法の規定に基づいて各都道府県に置かれている準司法的機能(裁判所に似た仕事)を営む行政委員会で、7名の委員をもって組織されています。
- 収用委員会は、知事から独立し、起業者、土地収用者および関係人のいずれにも片寄らず、中立で公正にその権限を行使する機関です。
- 収用委員会の委員は、法律、経済、行政に関してすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから、知事が議会の同意を得て任命します。
- 収用委員会は、裁決申請に基づいて活動を開始し、審理や調査等を通じ、最終的に裁決という形で、一般的には損失補償が正当であるかどうかを中心として、独自に判断するのが主な役目です。
収用委員会には、事業の適否などに関して判断する権限はありません。
収用委員会は、あっせん、仲介、調停はいたしませんが、起業者、土地所有者および関係人のすべての方に歩み寄りの気運があれば、審理の途中で和解を進めることがあります。
3 裁決手続の流れ
土地収用制度によって起業者が公共事業に必要な土地を取得するためには、まず起業者は土地収用法の規定に基づいて、国土交通大臣または都道府県知事の事業認定を受けることが必要です。
事業認定を受けた後に、起業者は、各都道府県に設置されている収用委員会に対して収用または使用の裁決申請をすることができます。
収用委員会では、審理や調査、鑑定などの手続を経て、収用する土地の範囲、補償金の額などについて裁決します。こうした手続を経て、起業者は土地を取得し、その土地を公共のために使うことができます。
なお、都市計画事業の場合は、都市計画事業の認可または承認を受けていれば、事業認定を受けていなくても、起業者は収用委員会に収用の裁決申請をすることができます。
(1)裁決申請および明渡裁決の申立て
起業者が収用委員会に対して裁決を求める方法としては、土地の所有権などを取得するための裁決申請と、土地にある物件(建物など)を撤去して土地の明渡しを求める明渡裁決の申立ての2つがあります。
明渡裁決の申立ては、裁決申請と同時か、または裁決申請の後に行われます。
ア 起業者が行う手続
○土地調書・物件調書の作成
起業者は、裁決申請に当たっては土地調書を、明渡裁決の申立てに当たっては物件調書を作成しなければなりません。
これらの調書には、原則として起業者、土地所有者および関係人の署名押印が必要ですが、土地所有者および関係人は、その記載事項について異議があるときは、異議の内容を附記して署名押印することができます。
そして、異議を附記した事項については、収用委員会においてその真否を争うことができますが、異議を附記しなかった事項については、土地調書・物件調書の記載内容が真実でない旨を立証しない限り異議を述べることができなくなります。
起業者は、これらの書類を添付して裁決申請および明渡裁決の申立てを行います。
イ 土地所有者および関係人の権利
○裁決申請の請求
土地所有者または関係人(抵当権者などを除く。)は、事業認定の告示後は、起業者に対して自己の権利に係る土地について裁決申請を行うように請求することができます。
○補償金の支払請求
土地所有者または関係人(抵当権者などを除く。)は、事業認定の告示後は、収用委員会の裁決前であっても、起業者に対して土地に関する補償金の支払を請求することができます。
この場合において、裁決申請がなされていないときは、起業者に対して裁決申請の請求を併せてしなければなりません。
補償金の支払請求があると、起業者は、原則として2か月以内に起業者の見積りによる補償金を支払わなくてはなりません。
○明渡しの申立て
土地所有者または関係人は、裁決申請後において起業者から明渡裁決の申立てがなされていない場合には、収用委員会に対して明渡裁決の申立てをすることができます。
(2)裁決申請書および明渡裁決申立書の受理
起業者から裁決申請または明渡裁決の申立てがあったときは、収用委員会は、内容が法令に適合しているかどうかを審査し、適合していれば受理します。
そして、その写しを収用しようとする土地の所在する市町村の長に送付するとともに、土地所有者および関係人に裁決申請書または明渡裁決申立書を受理したことを通知します。
(3)裁決申請書および明渡裁決申立書の公告・縦覧
収用しようとする土地の所在する市町村の長は、裁決申請または明渡裁決の申立てがあったことなどを公告し、裁決申請書または明渡裁決申立書の写しを公告の日から2週間縦覧します。
※意見書の提出
土地所有者および関係人は、この縦覧期間内に収用委員会に意見書を提出することができます。
意見書には、収用委員会の審理と関係のない事項(例えば、事業の認定に対する不服など)については記載することができず、記載しても初めから記載がなかったものとみなされます。
(4)裁決手続開始の決定および登記
裁決申請書等の2週間の縦覧期間が経過しますと、収用委員会は、裁決手続の開始を決定して、その旨を県報で公告するとともに、申請の土地を管轄する登記所に裁決手続開始の登記を嘱託します。
この登記があった後は、相続人等を除き、登記後の権利の移転は起業者に対抗できなくなり、起業者および収用委員会は、この時点での権利者を当事者として扱うこととなります。
(5)収用委員会による審理
縦覧期間後、収用委員会は、起業者、土地所有者および関係人の意見を聞くために、公開を原則とする審理を開きます。審理は、次のような事項について起業者、土地所有者および関係人から意見を聞き、意見の対立する点(争点)を整理して、審理を終結(結審)します。
- ○起業者に対して
- 事業計画、交渉経過、収用しようとする土地の区域、損失の補償、権利取得の時期、明渡しの期限など
- ○土地所有者、関係人に対して
- 意見書の内容の説明、要求する補償内容、明渡しの期限などについての意見
審理の期日および場所は、土地所有者および関係人に書面によって通知します。審理に代理人が出席する場合には、委任状が必要です。
また、収用委員会は、審理や調査のために必要があると認めるときは、次のことができます。
- 起業者、土地所有者、関係人などに出頭を命じて審問し、意見書、資料の提出を命じること。
- 鑑定人に鑑定させること。
- 土地または物件について現地調査をすること。
- ※代表当事者制度について
- 土地所有者または関係人が多数(4人以上)の場合には、その中から3人以内で代表者を選定することができます。代表者を選定した場合、選定した人は、その代表者を通じてのみ審理で意見を述べる等の行為をすることができます。土地所有者または関係人が著しく多数の場合には、代表者を選定することを収用委員会から勧告することがあります。
※意見書の提出・意見の陳述
原則として審理が終結する(結審)までの間に、次のような事項について、意見書を提出し、審理において意見を述べることができます。
- 縦覧期間内に提出した意見書に書かれた内容の説明
- 損失補償に関する事項(意見書に記載のなかった新たな意見でも結構です。)
- 収用委員会から説明を求められたり、提出を命じられた事項
土地収用制度においては、損失の補償が最も利害に関わる事項であり、最大の争点となるものと考えられます。損失補償の内容について以下で説明しますので、十分御理解の上、意見書の提出や意見の陳述を行ってください。
(6)損失補償の内容
ア 申立て範囲内での補償
収用委員会は、損失の補償について、当事者主義といって、起業者、土地所有者および関係者が意見書でそれぞれ申し立てた額の範囲内で裁決をしなければならないことになっています。
- パターン1
- 収用委員会の認定額が起業者見積額を下回っても、起業者見積額が裁決額になります。
- パターン2
- 収用委員会の認定額が起業者見積額を上回るが土地所有者等の申立額を下回ったときは、収用委員会の認定額が裁決額となります。
- パターン3
- 収用委員会の認定額が起業者見積額・土地所有者等の申立額を上回ったときは、土地所有者等の申立額が裁決額になります。
イ 損失補償の主な種類
収用委員会は、土地所有者および関係人が受ける損失の補償を裁決しますが、権利取得裁決で決められる「土地に関する補償」と明渡裁決で決められる「明渡しに関する補償」の2種類があります。
損失の補償は、原則として、各人別に金銭で補償することになっています。
○土地に関する補償
補償の種類 | 補償の内容 |
---|---|
土地に対する補償(土地が収用されるとき) |
この補償は、一般的には土地の対価ですが、近傍類地の取引価格等を考慮して決定されます。 この価格算定の時点は、事業認定の告示があった時に固定され、以後権利取得裁決の時までの物価の変動に応じた修正がされます。 |
権利取得に対する補償(土地の収用により土地に関する所有権以外の権利が消滅するとき) |
この補償は、土地に対する補償と同じ方法で決定されます。 なお、抵当権消滅に対する補償等は、個別に見積り難いので、土地所有者の受ける補償に含められるのが普通です。 |
残地に対する補償(同一土地所有者に属する一団の土地が収用されることにより残地が生じるとき) |
|
替地による補償(金銭に代えて替地による補償を求めるとき) |
土地所有者および関係人は、土地に対する補償金(権利消滅に対する補償金)の全部または一部に代えて、替地による補償を意見書により要求することができます。 しかし、損失の補償は、原則として金銭によってするものとされておりますので、替地による補償が相当であるか否か、厳しく審査されることになります。 |
○明渡しに関する補償
補償の種類 | 補償の内容 |
---|---|
移転料の補償(収用する土地に建物等の物件があるとき) |
収用する土地にある建物等の物件は、移転しなければなりませんが、これに要するのが相当と認められる移転料は補償されます。 物件が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、物件全部の移転料を意見書により請求することができますし、移転料の補償に代えて起業者が物件を移転することを意見書により請求することができます。 また、物件を移転することが著しく困難であるとき、または物件を移転することによって従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その物件の収用を意見書により請求することができます。 なお、補償金の額は、明渡裁決の時の価格で決められます。 |
その他の補償 | 離作料、営業上の損失の補償、その他土地を収用することによって生ずるのが相当と認められる損失は、補償されます。 |
(7)和解
- 和解は、裁決申請後であっても、当事者間の話合いで円満に解決することが望ましいため設けられた制度です。
- 裁決前に、当事者間で合意が成立した場合には、任意契約をして起業者が裁決申請を取り下げるか、収用委員会で和解調書の作成手続を進めることができます。
- 和解には、裁決すべき事項について当事者全員の合意が必要です。合意があったときは、全員から収用委員会に対し、和解調書の作成を申請します。
- 収用委員会は、和解の内容を審査した上、和解調書を作成します。
- 和解調書が作成されると、収用の裁決があったのと同様の効果が生じます。
(8)収用委員会の裁決
審理が終わりますと、収用委員会は、意見書や審理で主張されたことなどをもとに、独自の調査をした上で、裁決します。
裁決は、裁決申請および明渡裁決の申立てに対する最終的な判断です。
裁決には、権利取得裁決と明渡裁決があり、裁決書(正本)が、起業者、土地所有者および関係人に送付されます。
裁決書に記載されている補償金等を起業者が支払えば、権利取得の時期において、裁決書に記載されている収用する土地の所有権は、土地所有者、関係人の意思にかかわらず起業者が取得することになり、土地所有者等は明渡期限までに起業者に土地を明け渡さなければなりません。
仮に、土地所有者等が補償金の受領を拒んでも、起業者が、収用する土地の所在する供託所(法務局)に補償金を供託すると、補償金が支払われたことになります。
4 裁決に不服がある場合
裁決の内容に不服がある場合には、土地収用法、行政不服審査法および行政事件訴訟法の定めるところに従って、審査請求あるいは訴訟をすることができます。
なお、損失の補償についての不服に関しては、当事者訴訟によってのみ争うことができ、審査請求や抗告訴訟(裁決取消訴訟)によって争うことができないので、御注意ください。
(1)審査請求
収用委員会の裁決に不服がある場合は、損失の補償についての不服を除き、裁決書の正本の送達を受けた日の翌日から起算して30日以内に、国土交通大臣に対して審査請求をすることができます。
(2)当事者訴訟
裁決のうち、損失の補償に係る不服については、裁決書の正本の送達を受けた日から6か月(土地収用法第94条による裁決の場合のみ60日)以内に、裁判所へ訴えを提起することができます。
この場合、収用委員会を被告とするのではなく、訴えを提起した者が起業者であるときは土地所有者または関係人を、土地所有者または関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければなりません。
(3) 抗告訴訟(裁決取消訴訟)
裁決のうち、損失の補償に係る事項以外の不服については、裁決があったことを知った日から3か月以内に、福井県(訴訟において福井県を代表する者は、福井県収用委員会となります。)を被告として裁判所へ訴えを提起することができます。
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